海外展開・輸出に使える補助金|グローバル枠で対象になる範囲
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
海外に販路を広げたい。そう考えて補助金を調べると、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「グローバル枠」に行き当たります。補助率が高く、海外旅費や通訳・翻訳費まで対象経費に入っているため、有力な選択肢に見えます。
ところが公募要領を読むと、対象は「海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組」に絞られています。海外に拠点を作る、海外から輸入する、といった取組は含まれません。「海外展開」という言葉から想像する範囲と、制度が見ている範囲がずれています。
海外展開・輸出に使える補助金を検討するときは、まずこのずれを確認することが出発点になります。そのうえで、輸出する製品によっては許認可の手続きが並行して発生します。
本記事では、グローバル枠で何が対象になるのか、対象外になりやすいケース、そして輸出手続きとの順序を整理します。
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グローバル枠の対象は「輸出体制の強化」に限られる
公募要領はグローバル枠の対象を2つの条件で定めています。
①事業を行う中小企業等が、自社の製品等を活用し、自発的に新たな海外販路を開拓するうえで必要となる国内製造等拠点の強化に取り組むもの、かつ、②事業により製造等する製品等の属する市場が、事業を行う中小企業等にとって、新たな海外市場であるもの
読み落とされやすいのが「国内製造等拠点の強化」という部分です。設備そのものが輸出のためのものである必要があります。会社として輸出入を行っているだけでは足りません。
輸入のための設備は対象外です。公募要領に輸入へ触れる記載はなく、海外直接投資やインバウンド向けの類型も置かれていません。輸出体制の強化という一本に絞られています。
取引先から頼まれた設備は対象外
もう一つの条件が自発性です。公募要領は「取引先主導の事業は自発的な取組とは言えず補助対象外です」と明記しています。
海外の取引先から「この設備を入れてほしい」と求められて導入する場合、要件を満たしません。自社が販路を開拓するために自ら判断した投資であることが求められます。
「新たな海外市場」の意味
対象となるのは、その企業にとって新しい市場です。
新たな海外市場とは、事業を行う中小企業等にとって、既存事業において対象となっていなかった国・地域の市場を指します。ここでの地域とは、統計上、国に準じてカウントされる領域であり、行政区画ではありません
すでに輸出している国に向けた増産設備では、この新たな海外市場の要件を満たしません。また「地域」は国に準じる単位なので、同じ国の別の州や省に広げるという説明は通らないことになります。
グローバル枠だけで対象になる経費
グローバル枠には、他の枠にない経費区分が2つ加わります。
| 経費区分 | 内容 |
|---|---|
| 海外旅費 | 海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費 |
| 通訳・翻訳費 | 事業遂行に必要な通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費 |
機械装置・システム構築費、建物費、外注費といった区分は他の枠と共通です。建物費が対象になるのは新事業進出枠とグローバル枠だけという点も、設備投資を伴う場合には効いてきます。

海外渡航は交付申請の時点で計画を出す
海外旅費には、金額以外の条件が複数あります。
- 補助事業実施期間内に渡航・宿泊すること
- 交付申請時に、海外渡航の計画をあらかじめ申請すること
- 一度の渡航で使える人数に上限があること(専門家・通訳者が同行する場合は別枠)
- 1人当たりの金額にも上限があること
交付申請の段階で渡航計画を出す必要があるため、採択後に「どこへ行くか」を考えるのでは間に合いません。訪問先や時期は事業計画の段階で固めておくことになります。
なお海外渡航を目的とする国内の乗り継ぎ費用は対象に含まれます。
契約書の翻訳は対象外
通訳・翻訳費には範囲の限定があります。
翻訳については、広告宣伝・販売促進に必要な翻訳のみ補助対象になります。事業計画に係る契約書の翻訳は補助対象になりません
契約書の翻訳の費用は自己負担になります。カタログやウェブサイトの翻訳は対象、契約書は対象外、という線引きです。
海外の展示会に出るなら持続化補助金も選択肢
グローバル枠は補助下限額が設定されており、設備投資を伴わない販路開拓だけでは規模が合わないことがあります。展示会への出展が中心であれば、小規模事業者持続化補助金の展示会等出展費が使えます。
海外展示会に出る場合、外国語の証拠書類を実績報告時に提出するときは、記載内容を日本語で要約・説明する書類の添付が求められます。この要約を作るための翻訳料は補助対象になりません。

輸出に伴う許認可のスケジュール
製品によっては、輸出そのものに手続きが必要です。補助金の採択を待つ間に進めておける部分があります。
化粧品を輸出する場合、輸出専用として製造・輸入するときは輸出届が必要になります。薬機法施行令第74条第1項・施行規則第265条に基づく手続きで、届け出た内容に従う場合に限り、法第61条の法定表示が適用除外になります。
相手国から求められる輸出証明書は、都道府県ではなく日本化粧品工業会が発給します。相手国が求める証明内容によって様式が分かれるため、どの様式で取るかを先に確定させる必要があります。


これらの手続きは補助金の発注・契約には当たらないと考えられるため、交付決定を待たずに進められます。証明書の発給や届出の受理に時間がかかることを考えると、並行して動かすほうがスケジュールに余裕が生まれます。
よくある質問
海外から原料を輸入するための設備は、グローバル枠の対象になりますか。
対象外と考えられます。グローバル枠は「海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化」を目的としており、公募要領に輸入へ触れる記載はありません。輸入に関わる設備投資であれば、新事業進出枠や革新的新製品・サービス枠、省力化投資補助金など別の制度で検討することになります。
すでに輸出している国に向けて生産能力を増やす場合はどうなりますか。
「新たな海外市場」という要件を満たしません。公募要領は、既存事業において対象となっていなかった国・地域の市場を指すとしています。増産だけでは要件に当てはまらないため、新規の国・地域を対象とする計画かどうかを先に確認してください。
海外の取引先から依頼されて設備を入れる場合は対象になりますか。
対象外です。公募要領は「取引先主導の事業は自発的な取組とは言えず補助対象外」と明記しています。自社が販路開拓のために自ら判断した投資であることを、事業計画書で説明できる必要があります。
海外展示会の出展だけを補助対象にできますか。
グローバル枠には補助下限額があるため、展示会の出展費用だけでは規模が足りない場合があります。出展が中心であれば、小規模事業者持続化補助金の展示会等出展費を検討するほうが現実的です。なお同じ出展料について、国の資金を原資とする別の支援を受けている場合は重ねて計上できません。
当事務所の強み:補助の対象範囲と輸出の手続きを並行して整理
海外展開に使う補助金の申請は、当事務所が制度の選定から申請書の作成、採択後の手続きまでお引き受けします。
海外展開の補助金では、制度の対象範囲の判断と、輸出そのものの手続きが同時に動きます。
- 計画している取組が「輸出体制の強化」に当たるか、輸入や海外進出に寄っていないかを整理します
- 輸出先が「新たな海外市場」に当たるかを、既存の取引実績と突き合わせて確認します
- 元化学メーカーの研究員として製品開発に携わった経験から、輸出する製品の規格や成分の説明を事業計画書に落とし込む部分をお手伝いします
- 化粧品であれば輸出届・輸出証明書の手続きを並行して進め、交付決定を待たずに動かせる部分を切り分けます
- 渡航計画を交付申請の時点で出せるよう、訪問先と時期の整理から対応します
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

輸出しようとしている製品と相手国が決まっていれば、使える制度と必要な手続きの見通しを立てられます。その段階でご連絡ください。
