展示会出展に使える補助金|対象になる経費の範囲と申込・支払いの順番
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
展示会に出展すると、小間料だけで数十万円、装飾や運搬まで含めると百万円を超えることも珍しくありません。販路開拓の効果は見込めても、先に出ていく金額の大きさが決断を鈍らせます。そこで検討されるのが補助金の活用です。
ところが、展示会出展に使える補助金を調べ始めると、制度ごとに扱いがばらばらであることに気づきます。出展費用がそのまま対象経費になる制度もあれば、経費区分に存在しない制度もあります。同じ「販路開拓」を掲げていても、中身は同じではありません。
さらに見落とされやすいのが手続きの順番です。出展の申込・請求書の発行・支払いを、どの時点で行ったかによって、対象経費が丸ごと否認されることがあります。展示会は申込の締切が早く、補助金の交付決定を待っていると枠が埋まる——この板挟みをどう解くかが、実務上の要点になります。
本記事では、展示会の出展費用がどこまで補助対象になるのか、そして申込と支払いの順番をどう組み立てるべきかを整理します。
展示会の出展費用を補助対象にできる制度の全体像
まず押さえるべきは、展示会の出展費用が「補助対象経費の区分として用意されているか」という点です。区分がない制度では、どれだけ販路開拓に有効でも計上できません。
| 制度 | 展示会出展費用の扱い |
|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 「展示会等出展費」として独立した区分がある |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 「広告宣伝・販売促進費」に展示会出展が含まれる |
| 大阪府 中小企業展示商談会出展支援事業 | 出展小間料金が対象 |
| 大阪府 大規模展示商談会活用事業 | 指定された展示会の小間料金・装飾経費が対象 |
小規模事業者持続化補助金は、展示会の出展を目的とした申請と相性がよい制度です。補助対象経費が機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費の8区分に分かれており、そのうちの1つが展示会等出展費として独立しています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも展示会出展は計上できますが、位置づけが異なります。広告宣伝・販売促進費という区分の中に含まれ、この区分には売上見込み額に連動する上限が別途設定されています。設備投資を事業の中心に据え、展示会はその成果を売り込む手段として位置づける構成になりやすいといえます。


「展示会等出展費」として認められる経費の範囲
区分があっても、何でも計上できるわけではありません。持続化補助金の手引きを見ると、含まれるものと除かれるものが具体的に書き分けられています。
小間料以外に計上できるもの
出展料だけでなく、出展に付随する費用も一定の範囲で対象になります。
- 展示会の出展料
- 関連する運搬費(レンタカー代・ガソリン代・駐車場代は除く)
- 通訳料・翻訳料
- オンラインによる展示会・商談会への出展
運搬費が対象になる一方で、レンタカー代やガソリン代が除かれている点は注意が必要です。自社や社員の車両で運ぶ場合の燃料代・駐車場代は、この区分では見てもらえないことになります。
別の区分になるもの・対象外になるもの
出展にまつわる費用でも、区分が変わるものと、そもそも補助対象にならないものがあります。
| 費用 | 扱い |
|---|---|
| 出展に必要な機械装置等の購入 | 機械装置等費に計上 |
| 自社で主催するイベントの会場費 | 借料に計上 |
| 選考会・審査会(○○賞)への参加費 | 対象外 |
| 飲食費を含んだ商談会参加費 | 対象外 |
| 文房具等の事務用品 | 対象外 |
| 実績報告時に提出する証拠書類の翻訳料 | 対象外 |
| 販売のみを目的とし販路開拓につながらないもの | 対象外 |
「販売のみを目的とし、販路開拓に繋がらないもの」が対象外とされている点は、物販系の事業者にとって見落としやすい規定です。会場で商品を売ることが主眼のイベントは、名称に展示会や物産展とついていても対象にならない可能性があります。
なお、この区分は「新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費」と定義されています。
交付決定と発注・支払いの順番
展示会の補助金でつまずきやすいのが、この順番の問題です。制度によって扱いが違うため、混同したまま支出すると、後から修正できません。
補助金には「交付決定」という手続きがあります。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第6条が交付の決定を定め、第7条第2号は、補助事業を行うため締結する契約に関する事項について条件を付すと規定しています。発注や契約の時期が問われる背景には、この枠組みがあります。
持続化補助金は出展申込だけ例外
持続化補助金の手引きは、原則として「交付決定日以降に実施(発注・申込・契約)し、事業完了日までに支払いを終えた経費」が補助対象になるとしています。そのうえで、展示会にただし書きを置いています。
- 出展の申込みは、交付決定日より前でも補助対象になる
- ただし請求書の発行日と支払日が交付決定日以降であることが条件
つまり、展示会の枠を押さえる行為だけは先行してよい、という扱いです。他の経費では発注・購入・契約のいずれも交付決定日以降である必要があるため、展示会は例外的な位置づけになっています。
注意すべきは、主催者への支払いを済ませてしまうケースです。早期申込割引を使って先に振り込むと、申込自体は認められても支払日が交付決定前になり、対象外になります。請求書の発行日も同様です。
新事業進出・ものづくりは発注も交付決定後
一方、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、広告宣伝・販売促進費について「交付決定後の発注・契約が前提となります」と定めています。持続化補助金のような申込の例外は置かれていません。
同じ展示会でも、どの補助金を使うかで動ける時期が変わります。制度を決めないまま出展の申込を進めると、後から使える補助金が限られる事態になります。
証拠書類の面でも準備が要ります。持続化補助金では、見積書に相当する料金記載の案内チラシ、出展申込書、主催者からの請求書、支払いを確認できる振込受領書、出展要領・規約、出展者リストや写真といった出展記録が求められます。開催後に写真を撮り忘れると、実績報告で困ることになります。
都道府県・市町村が設ける展示会出展支援
国の補助金とは別に、自治体が独自の出展支援を設けている場合があります。対象経費が小間料などに絞られている制度もあり、国の補助金に比べて申請の負担が小さい場合があります。
制度の有無や内容は自治体ごとに異なります。事業所の所在地を管轄する産業振興の担当課や、都道府県の中小企業支援機関のサイトで確認してください。市町村が独自に設けている例もあるため、都道府県と市町村の両方を見ておくと取りこぼしがありません。
大阪府を例にとると、性格の異なる2つの制度があります。
中小企業展示商談会出展支援事業費補助金は、府内に主たる事務所を有する中小企業を対象とし、出展小間料金を補助します。国内で対面開催されるBtoBの商談会が対象で、一般に出展者を募集していること、消費者向けでないこと、特定顧客限定でないこと、自社主催でないことが条件です。従業員を常時雇用していることや、賃上げ宣言書の提出も求められます。
令和8年度中小企業展示商談会出展支援事業費補助金 | 大阪府
大規模展示商談会活用事業は、府があらかじめ指定した展示商談会への出展を支援するもので、小間料金に加えて装飾経費も対象になります。ただし業種が製造業またはソフトウェア業に限定されており、対象となる展示会も指定されたものに限られます。
出展したい展示会が府の指定リストに入っているかどうかが、この2制度を分ける最初の分岐点になります。指定に入っていれば装飾経費まで見てもらえる一方、業種の制限がかかります。
補助率・上限額・募集期間は年度ごとに設定され、予算に達した時点で締め切られる運用が多く見られます。この点は他の自治体の制度でも同様です。出展を決めた段階で、その年度の要項を確認することを推奨します。
国の補助金と他の助成の併用制限
費用の負担を減らすため複数の制度を組み合わせたくなりますが、制限があります。
持続化補助金では、国(国以外の機関が国から受けた補助金等により実施する場合を含む)により出展料の一部助成を受けるものは、展示会等出展費の対象外と明記されています。助成を受けるのは出展料を払う側、つまり出展者です。同じ出展料について国の資金を原資とする別の支援を受けていれば、その分を持続化補助金で重ねて計上することはできません。
括弧書きは、助成する側が国そのものでなくても、その機関が国の補助金等で事業を実施しているなら同じ扱いになるという意味です。出展料の一部が助成されている場合は、主催者や取りまとめ機関に原資を確認してください。そのうえで対象外に当たるか判断がつかなければ、確認した内容を添えて補助金事務局に照会することになります。
自治体の制度にも同様の制限が置かれています。大阪府の中小企業展示商談会出展支援事業費補助金は、同一の展示商談会において、出展小間料金を補助対象経費とする他の補助金を受ける場合は本補助金の対象外と要項に明記しています。府の大規模展示商談会活用事業を受ける場合も、同じく対象外です。
この書き方からわかるのは、制限がかかっているのが制度どうしの組み合わせではなく、同じ経費を二重に見てもらうことだという点です。持続化補助金の展示会等出展費に小間料を計上すれば、府の制度は使えません。一方で府の制度は小間料以外を原則対象外としているため、小間料を府の制度に回し、運搬費や通訳料を持続化補助金で計上するという切り分けであれば、対象経費の範囲は重なりません。実際にその形が認められるかは、申請前に両方の要項と窓口で確認してください。
同要項はあわせて、国又は地方公共団体等の補助金が主催者に交付された展示商談会については、交付元の規定により対象外となる場合があるとしています。国の制度と同じく、出展料の原資をたどって判断する構造です。
令和8年度中小企業展示商談会出展支援事業費補助金 募集要項(PDF) | 大阪府
ここまで挙げた制度は、いずれも後払いです。採択されても、支払いを済ませて実績報告を終えるまで入金されません。出展料・装飾費・旅費を先に自己資金で立て替える前提で、資金繰りを組んでおくことが重要です。

よくある質問
Q. 展示会の申込締切が補助金の公募締切より早い場合、どうすればよいですか。
A. 持続化補助金であれば、出展の申込みだけは交付決定前でも補助対象になります。ただし請求書の発行日と支払日は交付決定後である必要があるため、主催者に支払時期を相談することになります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では発注・契約も交付決定後が前提となるため、この方法は使えません。制度の選択と展示会のスケジュールは、セットで検討することを推奨します。
Q. 海外の展示会に出展する費用も補助対象になりますか。
A. 持続化補助金では海外展示会の出展費用も計上できます。外国語の証拠書類を実績報告時に提出する場合、記載内容を日本語で要約・説明する書類の添付が求められます。この要約書類を作るための翻訳料は補助対象になりません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠では、広告宣伝・販売促進費に加えて海外旅費や通訳・翻訳費が対象経費に含まれます。
Q. 展示会の会期が補助事業期間の後になってしまう場合は対象になりますか。
A. 対象外になります。持続化補助金の手引きは、補助事業期間外に開催される展示会に係る経費を対象外として明示しています。申込や支払いを期間内に済ませていても、開催日が期間外であれば計上できません。出展を決める際は、会期が補助事業期間に収まるかを先に確認してください。
Q. 自社が主催する展示会やショールームの費用は使えますか。
A. 展示会等出展費には計上できません。自社で主催するイベントの会場を借りる費用は借料の区分になります。また大阪府の出展支援では、自社主催でないことが対象展示会の要件として定められています。自社で開催するイベントは、出展支援の枠組みでは想定されていないと考えられます。
当事務所の強み
展示会の出展費用に補助金を使う場面では、制度選択・経費区分の切り分け・手続きの順番という3つの判断が同時に必要になります。
- 展示会の性格(BtoB か消費者向けか、主催者は誰か、開催地はどこか)から、使える制度の候補を絞り込みます
- 出展料・装飾費・運搬費・旅費・通訳料を、どの経費区分に振り分けるかを整理します
- 元化学メーカーの研究員として、技術説明員のかたちで展示会のブースに立った経験があります。会期後の引き合い対応も担当していたため、出展が商談につながる流れを出展者の側から見てきました
- 出展するイベントが「販路開拓につながるもの」として説明できるか、要件に照らして一緒に確認します
- 交付決定・発注・請求書の発行・支払いの順番を時系列に落とし込み、展示会の申込締切と両立するスケジュールを設計します
- 実績報告で求められる証拠書類を事前にお伝えし、会期中に撮り忘れが起きないよう準備します
出展を決めた展示会の名称と開催日がわかれば、間に合う制度があるかを判定できます。まずお知らせください。


