経営方針とDX推進への取組

当事務所は、デジタル技術を活用することで、調査の速さと正確性を両立させる体制を築いています。このページでは、経営ビジョンとDX推進の方向性、具体的な戦略、達成状況を測る指標、および代表者によるメッセージを公表します。

経営ビジョンとDX推進の方向性

当事務所が事業を通じて実現しようとすること、および、デジタル技術の進化を踏まえた事業展開の方向性を示します。

経営ビジョン

当事務所は、化学メーカーの研究開発職として基礎研究からスケールアップまでを経験した行政書士が運営しています。素晴らしい技術を持ちながら、複雑な法規制の壁に阻まれて事業が前に進まない——その状況を解消することを事業の目的としています。

化粧品・化学品、産業廃棄物・環境、危険物・化学物質規制の許認可を主たる業務とし、事業者が法令を遵守しながら事業を前に進められるよう支援します。

あわせて、行政書士法は次のとおり定めています。

行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。(行政書士法第1条の2第2項)

当事務所のDX推進は、この規定が求める取組を具体化するものです。

ビジネスモデルの方向性

行政書士を取り巻く環境は、次のように変化しています。

  • 生成AIの普及により、法令情報へのアクセスが容易になった一方、AIが事実と異なる情報を出力する事例が生じており、出力をそのまま用いることのリスクが高まっている
  • 法令データが機械可読な形式で提供されるようになり(e-Gov法令API等)、事業者が自ら法令データを保有し、検索・照合することが可能になった
  • 行政手続の電子化が進み、電子申請への対応が前提となるとともに、オンラインでの相談が一般化して地理的な制約が薄れている

この変化を踏まえ、当事務所は次の3つの方向性で事業を展開します。

(1)事業に必要なデータを自ら保有し、活用する

法令の条文、各省庁・自治体が公開する手引き・通知・告示、業務の所要時間、依頼の経路といった、事業に必要なデータを自ら保有します。外部の解説記事や業界の通念に依存せず、保有するデータに基づいて調査・判断・意思決定を行う体制を目指します。(戦略1〜3)

(2)AIの出力を一次情報で検証する運用を確立する

生成AIを業務プロセスに組み込む一方、条文番号・数値・期限は必ず一次情報で確認してから用いる運用を徹底します。デジタル技術の活用と正確性の担保を両立させます。(戦略4・5)

(3)オンライン完結と電子化により依頼者の利便を高める

相談から書類の授受、官公署への申請までをオンラインで完結する体制を整備し、所在地にかかわらず支援を提供するとともに、依頼者の手続上の負担と費用を軽減します。(戦略6)

企業経営及びDX推進の具体的な戦略

前記の方向性を実現するため、次の6つの戦略に取り組んでいます。方向性(1)には戦略1から戦略3が、方向性(2)には戦略4と戦略5が、方向性(3)には戦略6が対応します。

戦略1:法令データベースの構築と横断検索

e-Gov法令APIから法令XMLを取得し、業務分野ごとに分類してリポジトリに集約しています。あわせて、各省庁・自治体が公開する手引き・通知・告示・様式のPDFを同一のリポジトリで管理しています。

現在、参照法令ファイルは125本を超え、消防法・高圧ガス保安法・化審法・安衛法・化管法・廃棄物処理法・薬機法・毒劇法など、取扱業務に対応する法令を網羅しています。

生成AI(Claude Code)を用いてこのデータを横断検索し、依頼者からの照会に対して条文を直接参照して回答します。従来は書籍やウェブ検索に頼っていた法令調査を、保有データからの直接参照に置き換えました。

戦略2:法令改正の月次自動照合

保有する法令XMLとe-Gov法令APIを照合し、改正の有無を自動で検出するスクリプト(Python)を自ら開発し、運用しています。照合結果は「改正済み」「施行予定」「差分なし」「未照合」の4分類で出力されます。

月次で実行し、改正を検出した場合は、該当する解説記事・業務手順・依頼者への案内を更新します。

許認可は取得した後も維持が必要であり、法令改正の見落としは依頼者の不利益に直結します。改正の検出を人の記憶に頼らず、データの照合によって行う体制としています。

戦略3:データに基づく事業運営

検索データに基づく情報発信

Google Search Consoleの検索データを分析し、事業者が実際に検索している論点を特定して、自事務所のウェブサイト(WordPress)で公開する解説記事の主題を決定しています。

たとえば「一般アルコールと特定アルコールの違い」「SDSのJIS改正に伴う猶予期間」「輸入化粧品のラベル表示」といった、実務担当者が現に直面している具体的な論点です。業界の通念や推測ではなく、データが示す実需に基づいて発信の対象を決めています。

士業の受任は従来、紹介や人脈を経路とすることが一般的でした。当事務所は、データ分析により特定した専門領域の論点を解説として公開し、それを入口として直接照会を受ける体制を構築しました。開業から日の浅い事務所が、専門性を要する案件を受任できているのは、この方法によるものです。

工数データに基づく報酬設定

業務ごとの所要時間を記録し、報酬を工数の実測値に基づいて設定しています。統計値や他事務所の水準ではなく、自事務所の実測データを基準とすることで、業務の実態に見合った価格を維持しています。

広告運用データの活用

Google広告の運用データと問い合わせの経路を突き合わせ、情報発信の内容と広告の配信設定に反映しています。

戦略4:一次情報による検証を組み込んだ業務プロセス

生成AIの出力には、実在しない条文番号や、改正前の数値が含まれることがあります。当事務所では次の運用ルールを定めています。

  • 条文番号を記載する前に、必ず保有する法令データで該当条文を検索して確認する
  • 確認できなかった条文番号は記載しない
  • 指定数量・届出期限・手数料等の数値は、一次情報の出典を確認したうえで用いる

このルールは、記事、報告書、申請書類、依頼者への回答のすべてに適用しています。AIによる効率化と、行政書士としての正確性を両立させるための、業務プロセスそのものの変革です。

戦略5:申請書類の作成プロセスの自動化

行政庁が定める申請様式は、レイアウト、記入欄の配置、計算式があらかじめ定められており、申請者がこれを崩すことは認められません。従来、様式への記入は手作業で行うほかなく、時間を要するとともに、書式や計算式を意図せず壊してしまう例もありました。

当事務所では、生成AI(Claude Code)を用いて様式ファイル(Word・Excel)の内部構造を解析し、レイアウトと計算式を保持したまま記入欄にのみ値を挿入する方法を用いています。

  • 様式の構造(段落、セル、数式、書式)を解析したうえで、記入すべき箇所を特定する
  • 記入後、元のファイルと差分を検証し、レイアウト・計算式・書式に意図しない変更が生じていないことを確認する
  • 繰り返し使用する雛形は、この方法で管理し、案件ごとの記入を短時間で行う

生成AIを下書きの作成に用いるにとどまらず、行政庁が定めた様式の構造を保持したまま機械的に処理する点に、当事務所の特徴があります。書類の作成は行政書士の中核業務であり(行政書士法第1条の3)、その作成プロセス自体を自動化することで、時間の短縮と、書式の不備による補正の防止を同時に実現しています。

戦略6:ペーパーレス化と電子申請の推進

行政書士の業務は、従来、紙の書類の作成・郵送・持参を前提としてきました。当事務所では次の取組により、紙を前提としない業務体制を構築しています。

  • 電子証明書の導入:日本行政書士会連合会が推奨する行政書士電子証明書「セコムパスポート for G-ID」を取得し、Adobe Acrobat と連携して運用しています。これにより、行政書士としての資格を証明した電子署名が可能となります
  • 電子定款の作成:会社設立の依頼において、紙の定款では4万円の収入印紙が必要となりますが、電子定款であればこれを要しません。依頼者の初期費用を4万円削減できます
  • 契約書・領収書の電子発行:職印の画像をPDFに貼付しただけでは、法令が求める押印義務を満たしません。電子証明書による電子署名を付与することで、電子ファイルであっても法令上の要件を満たした書面として発行しています
  • 官公署への申請・届出:GビズIDを取得し、電子申請に対応している手続きは電子で行います。窓口への持参や郵送を要する手続きについても、書類の作成と管理は電子で完結させています
  • 依頼者との書類の授受:ヒアリングシート、見積書、報告書、契約書はPDFで授受し、クラウドストレージで共有します。郵送・持参を要する場面を最小限にしています
  • 事務所内の文書管理:業務で参照する手引き・様式・通知は、紙で保管せずPDFとしてリポジトリで管理します。全文検索により、必要な箇所を即座に参照できます
  • 原本の取扱い:戸籍謄本、登記事項証明書、許可証等、法令上原本の提出が必要な書類は紙のまま扱いますが、受領から返却までの経緯は電子的に記録し、所在を常時把握できる状態を維持します

電子化は、当事務所の効率化にとどまらず、依頼者の費用負担の軽減にも直結します。

また、ペーパーレス化は保管場所の削減にとどまりません。書類が電子化されていることにより、事務所が使用できない状況でも業務を継続できます。当事務所は中小企業等経営強化法に基づく事業継続力強化計画の認定申請を行っており、業務データをクラウドで管理する体制は、その計画の中核をなす対策でもあります。

DX推進体制

代表者がDX推進責任者を兼ね、経営方針の決定からシステムの構築・運用までを一貫して担います。外部のベンダーに依存せず、自ら仕組みを構築・改修できる体制としており、業務上の必要が生じた時点で即座に反映できます。

高度な専門性を要する領域については、他士業(弁護士・司法書士・税理士等)および外部の専門家と連携します。

デジタル人材の育成・確保

当事務所の専門性は、化学・法令・情報技術の3領域にわたります。代表者は次の取組を継続しています。

  • 法令:月次の法令改正照合を通じて、取扱分野の改正を継続的に把握する
  • 化学:化学メーカーでの研究開発の経験を基礎とし、化学物質規制の技術的背景を理解したうえで法令を解釈する
  • 情報技術:生成AI(Claude Code)、Git によるバージョン管理、Python によるスクリプト開発、クラウドサービスの各技術について、実務への適用を通じて習得する

代表者は行政書士として開業する以前に、ウェブメディア事業会社を設立し、現在も代表を務めています。事務所のウェブサイトの構築・運用・分析は外部に委託せず、自ら行っています。これにより、施策の効果を自ら検証し、改善までを一貫して実施できます。

ITシステム環境の整備

  • 法令・手引きのリポジトリ:法令XML・手引きPDF・様式をGitで一元管理し、バージョン管理により改正の履歴を保持する
  • クラウドストレージ:Google Workspace(Google Drive)で業務データを管理し、事務所外からも参照できる状態を維持する
  • 生成AIの業務組込み:Claude Code を法令の横断検索、書類の下書き作成、記事作成に用いる。リポジトリ内の法令データを直接参照させることで、一般的な生成AIの利用とは異なり、出力の根拠を保有データに限定する
  • 自動照合スクリプト:Pythonで開発した照合スクリプトにより、e-Gov法令APIと保有データを突き合わせて改正を検出する
  • 情報発信基盤:WordPressで運営するウェブサイトにより、法令改正や実務上の論点を解説記事として公開する
  • 行政手続の電子化:GビズIDを取得し、対応する申請・届出は電子申請により行う

投資計画

デジタル技術への支出として、今後1年間で次を実施します。

  • 業務用機器の更新:生成AIの利用、オンライン会議、書類の作成に支障のない性能の端末および周辺機器を維持します
  • ソフトウェア及びクラウドサービスの導入・維持・拡張:生成AIの有料プラン、電子署名に用いるソフトウェア、クラウドストレージのほか、案件管理、会計、文書管理、オンライン会議など業務の各領域で利用するサービスについて、新規の導入、継続利用および上位プランへの変更を行います。業務上の必要が生じた時点で速やかに判断し、導入します
  • 受任案件の管理の仕組みの整備:依頼者、手続きの種類、提出先、提出期限、進捗を一元的に管理し、事務所外からも参照できる仕組みを構築します。法令上の期限が定められている手続きを識別できるようにし、期限の管理を確実にします
  • 情報セキュリティ対策の強化:IPAのSECURITY ACTION制度に基づく自己宣言(二つ星)を行い、情報セキュリティ基本方針に沿った対策を実施します

なお、参照法令データの拡充および自動照合スクリプトの改良には、外部への支出ではなく代表者の作業時間を配分します。当事務所のDX推進は外部への委託ではなく自らの構築によって進めています。

戦略の達成状況を測る指標

戦略の効果を客観的に評価するため、次の指標を設定しています。

指標目標値測定方法
法令調査の保有データ完結率90%以上(外部資料を新たに取得せず、保有データのみで調査が完結した割合)。あわせて参照法令ファイルを150本以上に拡充(現状125本超)案件ごとに保有データのみで調査が完結したかを記録し、リポジトリ内のファイル数とともに四半期ごとに集計
法令改正の検出から対応完了までの日数検出から30日以内月次の照合結果と、記事・手順の更新日を照合
条文番号の一次情報確認率100%記事・報告書の作成時に確認の実施を記録
オンライン完結率相談から業務完了まで80%以上案件ごとの対応方法を記録し四半期ごとに集計
法令調査及び書類作成に要する時間案件の類型ごとの平均所要時間が、四半期ごとに前四半期の実績を下回ること案件ごとの所要時間を類型別に記録し、四半期ごとに集計して前四半期と比較
電子化による削減効果①電子定款の利用により依頼者が負担を免れた収入印紙代(1件あたり4万円) ②書類の郵送・持参の回数(1案件あたり平均1回以下)案件ごとに電子定款の利用件数、郵送・持参の回数を記録し四半期ごとに集計

これらの指標を四半期ごとに集計・分析し、結果に応じてデータの拡充範囲、AIの活用方法、業務プロセスの見直しを行います。

代表者によるメッセージ

行政書士の仕事は、法令を正しく読み、依頼者の状況に当てはめることに尽きます。生成AIの登場によって、この作業は劇的に速くなりました。一方で、AIが事実と異なる情報を出力する場面にも、私は何度も遭遇しています。

速さと正確性のどちらかを選ぶのではなく、両方を成立させる仕組みを作ることが、私の考えるDXです。

そのために、法令の条文と各省庁の手引きを自事務所のデータとして保有し、AIの出力を必ず一次情報で確認する運用を定めました。さらに、法令改正をデータの照合によって検出する仕組みを構築し、改正の見落としを人の記憶に頼らない体制としています。

許認可は、取得して終わりではありません。事業を続ける限り、法令の改正に追い続ける必要があります。改正を見落とさない仕組みを持つことは、依頼者の事業を守ることそのものです。

化学メーカーの研究開発の現場で、私は技術が法規制の壁に阻まれる場面を見てきました。その壁を越える手伝いをするために行政書士になりました。デジタル技術は、その仕事をより速く、より確かなものにするための手段です。

今後も、法令データの拡充と業務プロセスの改善を続け、事業者の挑戦を支える事務所であり続けます。

制定日:2026年9月1日

行政書士高橋光事務所
代表 行政書士 高橋 光

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