肥料販売の届出(販売業務開始届)|許可の要否・期限・複数県の店舗の出し方
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
肥料を販売する事業者は、肥料品質確保法(肥料の品質の確保等に関する法律)に基づき、都道府県知事へ「肥料販売業務開始届」を出す必要があります。肥料販売の届出は許可ではありませんが、店舗ごとに、販売を始めてから2週間以内という期限があります。
ホームセンター・園芸店だけでなく、観葉植物の液体肥料を置くインテリア雑貨店や、ネットショップも対象になりえます。店舗が複数の都道府県にあると、届出先も出し方も県ごとに分かれます。
店舗が複数の都道府県にある会社では、本店がまとめて進めたいという場面もあります。届出の決まりと、都道府県によって違う出し方を整理します。
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肥料の販売は許可制ではなく届出制
肥料の販売に許可や資格は要りません。そのかわり、販売の業務を行う事業場ごとに、届出が義務付けられています(肥料品質確保法第23条第1項)。審査を経て可否が決まる許可とは違い、決められた事項を知事に知らせる手続きです。
届出が必要な事業者
届出の義務を負うのは、肥料の生産業者・輸入業者・販売業者です(第23条第1項)。「販売業者」は、肥料の販売を業とする者のうち、生産業者・輸入業者以外の者をいいます(第2条第4項)。
- ホームセンター・園芸店・農業資材店
- 観葉植物用の液体肥料などを扱うインテリア雑貨店・生花店
- 肥料を扱うネットショップ・通販事業者
- 農産物直売所や、フリマアプリ・ネットオークションで繰り返し肥料を売る個人
栃木県は、繰り返し、または繰り返す意思をもって肥料を販売する場合は、有償・無償を問わず「業とする者」に当たるとしています(栃木県「肥料の販売には届出が必要です」)。
家庭園芸用の小袋・液体肥料も対象
家庭園芸用の小袋や、観葉植物用の液体肥料だけを売る場合でも、届出は必要になります。第23条には、袋の大きさや家庭園芸用かどうかで届出を免除する定めがありません。肥料に当たるかどうかは商品名ではなく、植物の栄養に供するなどの目的で施される物か(第2条第1項)で決まります。
売り場の商品が肥料かどうかは、袋やボトルの表示が手がかりになります。
- 「生産業者保証票」「輸入業者保証票」の表示がある(普通肥料。第17条第1項)
- 「肥料の品質の確保等に関する法律に基づく表示」がある(堆肥・動物の排せつ物などの特殊肥料。大阪府「肥料販売業者の皆さんへ」)
- 堆肥・米ぬか・草木灰など、特殊肥料として売られている(第2条第2項)
ネット販売・フリマでの販売
インターネットで売る場合も、届出の対象です。農林水産省は、ネットオークションやフリマアプリを通じた個人間の取引でも、業として売るなら販売業者に当たる可能性があるとしています。個人でも、繰り返し売る場合は「業とする者」に当たります(農林水産省の案内(ネットオークション・フリマアプリでの肥料の販売))。
大阪府の開始届に添える「肥料販売業務調書」には、インターネット販売の有無と出品サイトを書く欄があります。廃止届の様式の備考では、ネット販売など販売所で直接売らない場合は、販売所として販売者の事務所などを書くとしています(大阪府「肥料販売業者の皆さんへ」)。
販売業務開始届の届出事項と期限
肥料販売業務開始届は、期限の向きに注意が要る届出です。ここでは、届け出る事項と、開始・変更・廃止それぞれの期限を見ていきます。
届け出る3つの事項
届出事項は、法律で次の3つと決まっています(第23条第1項)。様式は施行規則の別記様式第十五号です(施行規則第21条)。
- 氏名及び住所(法人は名称・代表者の氏名・主たる事務所の所在地)
- 販売業務を行う事業場の所在地
- その都道府県の区域内にある、肥料を保管する施設の所在地
開始・変更・廃止の期限
| 届出 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 開始届(肥料販売業務開始届出書) | 販売業務を開始した後2週間以内 | 第23条第1項 |
| 変更届(届出事項の変更) | 変更を生じた日から2週間以内 | 第23条第2項 |
| 廃止届(販売業務の廃止) | 廃止した日から2週間以内 | 第23条第2項 |
- 売り場の準備販売前
- 販売を始めた日
- 2週間の期限
販売を始める前の届出を求める規定は、第23条にはありません。
肥料の開始届の期限は「販売を始めてから2週間以内」です。農薬の販売届は「開始の日まで」に出すと決まっているので、両方を扱う店舗は、期限の決まり方が違う点に気をつけます(農薬取締法第17条第2項)。
大阪府は、期限を過ぎて届け出る場合に遅延理由書の提出を求めています(大阪府「肥料販売業の届出」)。
変更届が要る場面
届出事項の3つのどれかが変わったら、変更届の対象です。法人の代表者の交代や、本店の移転も含まれます(第23条第1項第1号)。
店舗が複数の都道府県にあるチェーンでは、代表者が替わると、届け出たすべての都道府県に変更届を出すことになります(第23条第2項)。店舗を閉めたときは、その店舗の廃止届が要ります。
複数の都道府県に店舗があるときの出し方
届出先は、店舗(販売業務を行う事業場)の所在地を管轄する都道府県知事です(第23条第1項)。本社のある県にまとめて出すのではなく、店舗のある都道府県ごとに届け出ます。
都道府県で違う出し方
法律で決まっているのは届出事項と期限までです。提出の方法・添付書類・部数は、都道府県によって違います。
| 項目 | 大阪府 | 東京都 | 京都府 |
|---|---|---|---|
| 提出の方法 | 大阪府行政オンラインシステム・郵送・窓口 | メール(1部)・郵送(2部) | 郵送・窓口(2部。郵送は副本の返送用の封筒を同封) |
| 受け取るもの | 届出受理証(オンラインは電子交付) | 案内に記載なし | 副本 |
| 主な添付書類 | 登記事項証明書(個人は住民票)・販売所の位置図 | 販売する肥料の概要がわかる資料(保証票の写しなど)・個人は住民票の写し | 事業場の所在地の地図・法人は登記事項証明書(提示か写し) |
| 期限を過ぎたとき | 遅延理由書 | 案内に記載なし | 遅延理由書 |
| 届出先 | 府の農政室。ただし11の市町は市町の窓口 | 東京都家畜保健衛生所 肥飼料検査担当 | 事業場の所在地を所管する広域振興局の農商工連携・推進課か、府の農産課 |
出典:大阪府「肥料販売業の届出」・大阪府「肥料販売業者の皆さんへ」・東京都産業労働局「肥料の販売に関する手続き」・京都府「肥料販売業務開始届出書」
大阪府では、池田市・泉佐野市・寝屋川市・箕面市・高石市・泉南市・阪南市・門真市・熊取町・田尻町・岬町に店舗がある場合、府ではなく市の窓口に届け出ます(泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町は泉佐野市)。同じ県の中でも、店舗の住所によって届出先が分かれます。
ほかの都道府県の出し方は、各県の担当課の案内で確かめる必要があります。
本店がまとめて進める場合
届出は、販売業務を行う事業場(店舗)ごとに出します(第23条第1項)。店舗が複数の都道府県にある会社では、本店が各店舗の分をまとめて準備し、会社の名義で、店舗のある都道府県ごとに届け出る形が多くなります。
まとめて進めるときに手間がかかるのは、次の点です。
- 店舗ごとに、届出先の都道府県(大阪府では市町の場合も)を振り分ける
- 都道府県ごとに、オンライン・郵送などの出し方と添付書類をそろえる
- 店舗ごとに、販売を始めてから2週間の期限を管理する
- 店舗を増やしたとき・閉めたとき・代表者が替わったときに、関係する都道府県すべてに届け出る
店舗が何県にまたがっていても、届出先の振り分けから、都道府県ごとの書類と提出までまとめて進められます。
当事務所は、届出書の作成と提出を代理として行えます。大阪府は代理申請を受け付けています(大阪府「肥料販売業務開始届出書」)。ご相談では、店舗の数と所在地、販売を始める時期を伺い、届出先の一覧と進め方をお伝えします。
届出のあとに販売店が守ること
販売届を出したあとも、販売店には肥料品質確保法の義務がかかります。都道府県の職員は、販売店の事業場や倉庫に立ち入り、帳簿などを検査できます(第30条第3項)。
- 帳簿:肥料を仕入れたとき、生産業者・輸入業者・販売業者に売ったときは、その都度、名称・数量・年月日・相手方を記載する(第27条第2項・施行規則第25条の3)。帳簿は2年間保存する(第27条第3項)
- 登録のない肥料を売らない:普通肥料は、登録または仮登録を受け、保証票が付いたものでなければ譲り渡せない(第19条第1項)
- 小分けしたら販売業者保証票:普通肥料の袋を開けた・詰め替えた・量り売りの肥料を袋に詰めたときは、販売業者保証票を付ける(第18条第1項)
- 虚偽の宣伝をしない:主成分・効果・原料・生産の方法について、虚偽の宣伝や誤解を生む名称を使わない(第26条)
帳簿に記載が要るのは、仕入れと、業者への販売です(第27条第2項)。一般の消費者や農家への販売は、この帳簿の記載の対象に含まれていません。
海外の肥料をネットで仕入れて売る場合は、日本で登録を受け、保証票が付いているかの確認が重要です。
届出をしない場合の罰則
販売届を出さなかった場合や、帳簿の義務を守らなかった場合は、罰則の対象になります。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 販売届(開始・変更・廃止)をしない、虚偽の届出をした | 1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科 | 第37条第2号 |
| 登録・保証票のない普通肥料を譲り渡した | 3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科 | 第36条第2号 |
| 帳簿を備え付けない、記載しない、虚偽の記載をした | 30万円以下の罰金 | 第39条第4号 |
| 帳簿を2年間保存しなかった | 10万円以下の過料 | 第42条 |
法人の従業者が業務として違反したときは、行為者のほか法人も罰金刑の対象になります(第40条)。登録・保証票のない普通肥料を譲り渡した場合、法人の罰金は1億円以下です(第40条第1号)。
自社で作った肥料・輸入した肥料を売る場合
生産業者や輸入業者が自分で肥料を売る場合も、販売の業務を行う事業場ごとに販売届が必要です(第23条第1項)。販売届は、普通肥料の登録や特殊肥料の届出とは別の手続きです。
| 手続き | 対象 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 普通肥料の登録 | 普通肥料を業として生産・輸入する者 | 生産・輸入の前 | 第4条 |
| 特殊肥料の届出 | 特殊肥料の生産業者・輸入業者 | 事業開始の1週間前まで | 第22条第1項 |
| 販売業務の届出 | 生産業者・輸入業者・販売業者 | 販売業務を開始した後2週間以内 | 第23条第1項 |
登録・届出の種類と申請の流れは、次の記事で解説しています。

他社の工場で生産を委託する場合は、登録を受ける者と必要な届出が契約の形で変わります。



よくある質問
肥料の販売に許可や資格は必要ですか?
許可や資格は要りません。肥料の販売は届出制で、販売の業務を行う事業場ごとに、販売を始めた後2週間以内に都道府県知事へ届け出ます(肥料品質確保法第23条第1項)。
肥料販売の届出に手数料はかかりますか?
かかりません。肥料品質確保法で手数料が決まっているのは登録・仮登録の申請(第6条第2項)で、販売の届出には手数料の定めがありません。登記事項証明書の取得や郵送の費用は別にかかります。
1つの会社で同じ県に店舗が5つある場合、届出は1通で足りますか?
届出は事業場ごとが原則です(第23条第1項)。書き方は都道府県によって違い、大阪府は販売所の一覧を添付します。ほかの都道府県にある店舗は、その都道府県に届け出ます。
ネットショップの倉庫が別の県にあります。どこに届け出ますか?
届出先は、販売業務を行う事業場の所在地の都道府県知事です。届出事項には、その都道府県の区域内にある保管施設の所在地も含まれます(第23条第1項第3号)。事務所と倉庫の場所を伺えば、届出先を整理できます。
農薬も一緒に売っています。届出は1つで足りますか?
足りません。肥料は肥料品質確保法第23条、農薬は農薬取締法第17条の届出で、別々に出します。期限も、肥料は販売開始後2週間以内、農薬は開始の日までと異なります。

当事務所の強み:複数県の店舗の届出をまとめて
肥料の販売届は、当事務所が届出先の振り分けから、届出書の作成・提出まで代理でお引き受けします。
- 複数の都道府県にまたがる届出:店舗ごとに届出先(県・権限移譲の市)を振り分け、県ごとのオンライン・郵送の出し方に合わせて提出します
- 複数の店舗をまとめて:店舗が何県にあっても、本店からのご依頼で、届出先の振り分けから提出まで一括して進めます
- 変更・廃止の届出:代表者の交代・店舗の増減に伴う、届け出たすべての県への変更届・廃止届に対応します
- 肥料の登録・特殊肥料の届出から一貫して:元化学メーカー研究員として化学品の法令対応に携わった経験から、製品が普通肥料か特殊肥料かの判定、登録申請(e肥料)まで対応します
- 農薬販売届とあわせて:肥料と農薬を扱う店舗では、期限の違う2つの届出を一緒に管理します
販売店が何県にまたがっていても、窓口ごとの出し方の違いは当事務所で整理します。ご連絡をお待ちしています。
