肥料の委託生産(OEM)と届出|設備の賃借との違いと登録を受ける者
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
自社で工場を持たずに肥料を事業化する場合、他社の工場に生産を委託する形(いわゆるOEM)が選択肢になります。肥料の委託生産では、肥料の登録を誰が受けるのか、どんな届出が先に必要なのかが、工場との契約の形によって変わります。
肥料品質確保法(肥料の品質の確保等に関する法律)には、他社の工場で生産する場合の扱いが条文として書かれていません。農林水産省の通知によって、生産設備を借りる形と、生産を委託する形の2つが整理されています。
元化学メーカー研究員として、研究開発からスケールアップまで製造の現場に携わってきた経験から、他社の工場で肥料を生産するときの届出を整理します。
目次閉じる開く
他社の工場で肥料を生産する3つの形
肥料の登録を受ける「生産業者」は、法第2条第4項で「肥料の生産(配合、加工及び採取を含む。)を業とする者」と定められています。他社の工場を使う場合、誰がこの生産業者にあたるかは、契約の形で決まります。
| 項目 | 自社工場 | 生産設備の賃借 | 委託生産 |
|---|---|---|---|
| 登録を受ける者 | 自社 | 設備を借りた自社 | 委託者(自社) |
| 生産する事業場の名義 | 自社 | 自社(借主) | 受託者 |
| 事業場に置く生産管理者 | 自社の者 | 自社の者が必要 | 不要 |
| 登録申請の前の届出 | ― | 賃借の届出 | 委託生産の届出 |
| 根拠 | 肥料品質確保法 | 9農産第774号 | 30消安第2703号 |
賃借と委託の違いは、農林水産省「肥料の委託生産に関するQ&A」の問1で説明されています。賃借では、その事業場に自社の生産管理者を置いて自ら生産する必要があります。委託生産では、自社の生産管理者を置く必要はありません。
生産設備を借りて肥料を生産する場合
他社が所有する工場の生産設備を借り、自社の管理のもとで生産する形です。「生産設備の賃借による肥料の生産について」(平成9年2月27日 9農産第774号)により、設備を借りた者が生産業者として扱われます。
賃借の届出で記載する事項
登録の申請(または登録事項変更の届出)に先立って、賃借の届出書を提出します。届出書には、賃貸借契約書と工場の見取り図を添付します。記載する事項は次のとおりです。
- 生産設備を賃借して生産を行う工場の名称及び所在地
- 生産設備を賃借して生産する肥料の種類
- 生産設備を賃借する期間
- 生産の管理責任者
生産の管理責任者を記載する欄があるとおり、設備を借りるだけで実際の生産を工場任せにする形は、賃借の扱いになりません
賃借の期間が自動更新される場合
賃貸借契約書に自動更新の定めがある場合は、その旨を記載すれば、契約が続いている間は賃借期間の変更の届出は不要です(届出書の様式の備考)。
肥料を委託生産する場合
平成30年8月29日の「肥料の委託生産に係る肥料の品質の確保等に関する法律上の取扱いについて」(30消安第2703号)により、一定の要件を満たせば、委託者が生産業者として登録を受けられるようになりました。それまでは、実際に生産する受託者が生産業者とされていました。
委託者が生産業者になる2つの要件
委託者が生産業者として扱われるのは、次の2つをどちらも満たす場合に限られます。
- 受託者による肥料の生産が、委託者の指図に基づくものであること
- 受託者が生産した肥料が、全て委託者に譲渡されること
「指図」とは、委託契約の範囲内で受託者が生産することを指します(Q&A問5)。受託者に一定の設計を任せる契約でも、その範囲内の生産であれば要件を満たします。
委託生産で必要になる手続き
委託者と受託者は委託生産の契約書を作り、委託者は登録申請の時までに「委託による肥料の生産に関する届出書」を提出します。契約書がない場合は、原則として実際に生産する者が生産業者として扱われます
委託生産では、書類の書き方にも決まりがあります。
- 登録申請書の「生産する事業場の名称及び所在地」には、受託者の名称と、受託者の事業場の名称・所在地を書きます
- 保証票の「生産した事業場」も、受託者の事業場を書きます
- 登録証の写しと帳簿は、受託者の工場に備え付けます(Q&A問11)
- 受託者の工場は、立入検査の対象になります
生産業者としての責任(登録・届出、保証票、帳簿、行政処分への対応)は、委託者が負います(Q&A問12・問15)。品質管理を受託者に任せる契約であっても、法律上の責任が移るわけではありません。
委託生産の届出先
農林水産大臣の登録にかかる委託生産の届出は、生産業者の所在地または生産する事業場の所在地を管轄する地方農政局等に提出します。FAMICを経由して提出することもできます(Q&A問10)。都道府県知事の登録の場合は、その都道府県の肥料の担当部署が届出先です。
建物だけを借りて設備は自社で持つ場合
工場の建物をスケルトン(内装・設備のない状態)で借り、生産設備はすべて自社で所有し、自社の従業員が生産する形もあります。この場合、借りているのは建物で、生産設備ではありません。
通知が扱う「生産設備の賃借」にも、他者に生産させる「委託生産」にもあたらず、自社工場として扱う形になると考えられます。
e肥料(肥料情報システム)でも、この3つは別の手続きとして分かれています。「事業場に関する申請」の種類は「自社工場の追加」「生産設備の賃借による肥料の生産に関する届出」「委託による肥料の生産に関する届出」に分かれ、手続きの案内画面でも「自社保有事業場の追加」「事業場の賃借」「委託生産」が別の項目として並んでいます。
ただし、区分の判断が微妙な契約もあります。建物と一緒に一部の設備を借りる場合などは、農林水産省の事前相談窓口や、登録申請を行うFAMICに確認してから進めることを推奨します。
建物の賃貸借契約の使用目的が、肥料の生産と合っているかも確認が必要です肥料法とは別の問題ですが、契約上の用途と違う事業を始めると、貸主との関係でトラブルになる可能性があります。
賃借から委託生産へ切り替える場合
すでに設備の賃借で生産している肥料を、委託生産に切り替えることもできます。Q&A問4は、必要な対応として次の4つを挙げています。
- 賃借の廃止届出書の提出
- 委託生産の届出書の提出
- 生産する事業場の名称を受託者の名称に変更する届出(法第13条第1項)
- 事業場の略称を使う場合は、略称の届出(施行規則第11条第3項)
法第13条第1項の変更の届出は、変更が生じた日から2週間以内に行う必要があります。切り替えの時期は、届出の準備とあわせて計画することが重要です。
よくある質問
肥料をOEMで作ってもらう場合、登録は誰が受けるのですか?
委託者の指図に基づいて生産し、生産した肥料を全て委託者に譲渡する契約であれば、委託者が生産業者として登録を受けられます(30消安第2703号)。この場合は、委託生産の契約書を作り、登録申請の時までに委託生産の届出を行います。契約書がない場合は、原則として実際に生産する工場側が生産業者として扱われます。詳しくは「肥料を委託生産する場合」の見出しで説明しています。
特殊肥料も他社に委託して生産できますか?
できます(Q&A問9)。委託生産の通知は、普通肥料の登録のほか、特殊肥料の生産業者届出や指定混合肥料の届出についても、生産する事業場の書き方を定めています。
受託者が余った分の肥料を、自社製品として売ってもよいですか?
袋の破損などを見込んで多めに生産することはできます。ただし委託者に譲渡した後の残りは、適正に廃棄するなどの対応が求められます。受託者が自社製品として出荷する場合は、受託者自身が登録などの手続きを行う必要があります(Q&A問6)。
委託生産した肥料を、受託者の工場から販売先へ直接送れますか?
委託者と販売先の間に売買契約があり、委託者の指図のもとで行うのであれば可能です。この場合は、保証票の添付が必要です(Q&A問14)。受託者から委託者へ引き渡すだけの場合は、受託者は生産業者ではないため保証票は不要です(Q&A問13)。
肥料登録の電子申請の手順や、登録日の決まり方は次の記事で解説しています。

当事務所の強み:契約の形の整理から届出・登録申請まで
肥料の委託生産・設備の賃借に伴う届出と登録は、当事務所が契約の形の整理から届出書・登録申請の作成までお引き受けします。
工場との契約の形を確認したうえで、肥料の登録と事前の届出をまとめて支援します。製造の実務を知る立場から、生産管理者の置き方や帳簿の備え付けまで、現場で運用できる形に整えます。
- 自社工場・生産設備の賃借・委託生産のいずれにあたるかの整理
- 賃借の届出・委託生産の届出の作成
- 普通肥料の登録申請(e肥料による電子申請を含む)
- 賃借から委託生産への切り替えに伴う届出
- 賃貸借契約・委託生産契約の書面と、届出内容との整合の確認
設備を借りるか、生産を任せるかで、登録を受ける者と届出が変わります。工場と契約を結ぶ前に、一度ご相談ください。
