農薬販売業者の届出手続き|農薬取締法の義務・変更届・罰則を解説
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
農薬を販売するには、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づく都道府県知事への届出が必要です。ホームセンター・農業資材店・インターネット通販事業者を問わず、農薬を継続的に販売する事業者は届出の対象になります。
「農薬は普通に仕入れて売ればいいのでは」と考える事業者も少なくありません。しかし農薬取締法は農薬の製造から販売まで一貫した規制体系を持ちます。無届けで農薬を販売した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になることがあります(農薬取締法第四十八条第二号)。
元化学メーカー研究員として化学物質の法令対応を経験した立場から、農薬販売業者の届出の仕組みと手続きを整理します。
農薬販売業者の届出とは
農薬取締法は、農薬の製造業者・輸入業者の登録とは別に、農薬を販売する者(販売業者)に対して都道府県知事への届出を義務付けています(農薬取締法第十七条第一項)。届出は販売所ごとに行う必要がある点が実務上の注意点です。
届出が必要な事業者
農薬を「業として」販売する者が対象です。具体的には以下が該当します。
- ホームセンター・農業資材店(店頭での農薬販売)
- 農協・農業資材卸売業者
- インターネット通販で農薬を販売する事業者
- 農薬を含む商品の取り扱いがある小売業者
農薬を一時的に取り扱うケースではなく、継続的な販売を業として行う場合が対象です。
届出先
都道府県知事(販売所の所在地を管轄する都道府県)へ届け出ます。複数の都道府県に販売所がある場合は、各所在地の都道府県知事へそれぞれ届出が必要です。
大阪府の場合、届出先は原則として大阪府環境農林水産部農政室(咲洲庁舎22階)です。ただし、農薬取締法の権限が市に移譲されている地域では、各市・町の農政担当窓口への届出になります。
| 販売所の所在地 | 届出先 |
|---|---|
| 大阪府内(下記を除く) | 大阪府環境農林水産部農政室 |
| 池田市・寝屋川市・箕面市・高石市・門真市 | 各市の農政担当部署 |
| 泉佐野市・泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町 | 泉佐野市 生活産業部農林水産課 |
大阪府内に複数の販売所を持つ場合、管轄が異なることで届出先が分かれるケースがあります。
届出のタイミングと変更・廃止届

届出は一度行えば継続有効ですが、変更・廃止が生じた際は都度の届出が必要です。タイミングを誤ると未届け状態となるリスクがあります。
届出のタイミング
農薬の販売を開始する前に届出が必要です。開始後の届出では遅れていることになります(農薬取締法第十七条第二項)。販売所を増設した場合も、増設の日から2週間以内に届出が必要です。
変更届・廃止届の期限
届出事項(氏名・住所・販売所等)に変更が生じた場合は、変更を生じた日から2週間以内に変更届を提出します(農薬取締法第十七条第二項)。
販売所を廃止した場合も、廃止の日から2週間以内に届出が求められます。廃止届を出さずに放置すると、記録上の管理が不明確になります。
主な届出事項
農薬取締法第十七条第一項が定める届出事項は、①氏名及び住所、②当該販売所(所在地・名称)の2項目です。農林水産省令に基づく届出様式では、追加の記載事項が求められることがあります。
販売業者の遵守義務

届出を行った後も、農薬取締法が定める遵守事項を継続して守る必要があります。義務違反は行政指導にとどまらず、罰則の対象になることがあります。
登録農薬のみ販売
未登録の農薬や登録が失効した農薬を販売することは禁止されています(農薬取締法第十八条第一項)。違反した場合は3年以下の拘禁刑または100万円(法人は1億円)以下の罰金が科されることがあります(農薬取締法第四十七条)。販売できるのは農林水産大臣の登録を受けた農薬(第十六条の表示があるもの)と、特定農薬(特定防除資材:重曹・食酢・天敵等)に限られます。
仕入れた農薬の登録状況は、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認できます。
帳簿の作成・保存義務
農薬取締法第二十条は、販売業者に対して帳簿の備え付けと記録を義務付けています。農薬の種類別に譲受数量と譲渡数量を真実かつ完全に記載し、農林水産省令の定めにより3年間保存しなければなりません。なお、毒物・劇物に該当する農薬(有機リン系農薬等)を取り扱う場合は、毒物及び劇物取締法の規定に基づき、譲受書などの関係書類を販売または授与の日から5年間保存する義務が別途課されます。
帳簿を備え付けない、記載しない、または虚偽の記載をした場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になることがあります(農薬取締法第四十八条第三号)。農薬の仕入れ・販売のたびに記録を残す習慣を確立しておくことが重要です。

農薬の適正保管・陳列
農薬は食品・飼料・医薬品等と区別して保管・陳列することが求められます(農林水産省令で定める基準による)。直射日光・高温・湿気を避けた適切な保管場所の確保が重要です。
使用基準の遵守と情報提供
農薬の使用方法・希釈倍数・使用時期等の使用基準は農薬登録の内容として定められています。購入者から問い合わせを受けた際に対応できる体制を整えておくことが重要です。
よくある質問
Q. インターネット通販で農薬を販売する場合も届出が必要ですか?
A. 必要です。インターネット通販であっても、農薬を業として継続的に販売する場合は農薬取締法の販売業者届出が必要です。届出先は販売所(倉庫・事務所等)の所在地を管轄する都道府県知事になります。複数都道府県への配送(越境販売)の場合も、販売所の所在地を基準に届出先を決定します。
Q. 農薬の取り扱いをやめる場合は何か手続きが必要ですか?
A. 廃止届の提出が求められます。廃止の日から2週間以内に都道府県へ届け出てください。届出には「更新」という制度がないため「自然に終了する」と誤解されやすいですが、廃止届は別途必要です。
Q. 大阪府内で農薬販売の届出をする場合、提出書類は何が必要ですか?
A. 大阪府への届出(新規)では、①所定の届出書1部、②本人確認書類(法人は登記簿謄本または登記事項証明書、個人は住民票・いずれも発行後3ヶ月以内・コピー可)、③返信用封筒(返信先を明記・切手貼付)が必要です。届出後は農薬販売開始届受理証が交付されます。大阪府では大阪府行政オンラインシステムによる電子申請も可能で、この場合は返信用封筒の用意が不要になり受理証も電子交付されます。池田市・寝屋川市・箕面市・高石市・門真市・泉佐野市エリアに販売所がある場合は各市の担当窓口に届け出てください。
Q. 除草剤を自社の工場敷地内の管理用に購入して使うだけでも届出が必要ですか?
A. 自社使用目的で農薬を購入するだけであれば、販売業者としての届出は不要です。届出が必要なのは第三者に販売・譲渡する場合です。ただし農薬の使用にあたっては、農薬取締法の使用基準を守ることが求められます。
当事務所の強み
元化学メーカー研究員として化学物質の法令対応を経験した立場から、農薬販売業者の届出手続きを支援します。農薬と毒物劇物を扱う事業者では双方の手続きが必要になる場合があり、一括して対応することで手続き漏れを防げます。
- 農薬販売業者届出(新規・変更・廃止)
- 毒物劇物販売業許可との一括対応
- 取り扱い農薬の適法性確認サポート
取り扱う農薬の品目が決まっていなくても構いません。現状をお聞かせいただければ、届出の要否を整理します。


