化粧品の責任者は外国人でも務められるか|薬機法の根拠と在留資格の確認
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
海外のブランドを日本で展開するために製造販売業の許可を取りたい。輸入元とのやり取りができる外国人スタッフを、そのまま総括製造販売責任者に据えたい。こうしたご相談が増えています。
結論から申し上げると、化粧品の責任者を外国人が務めることはできます。薬機法の条文に国籍の定めはなく、要件を満たしていれば就任できます。
確認が必要なのは、薬機法の資格要件とは別に、その職務が候補者の在留資格の範囲に収まるかという点です。すでに日本で働いている人であれば職務内容との突き合わせ、海外から招くのであればどの在留資格で招くかという設計になります。この記事では、就任できる根拠と、あわせて確認しておく事項を整理します。
化粧品の責任者に国籍要件がない根拠
化粧品を扱う事業者が置く責任者は二つあります。製造販売業の総括製造販売責任者と、製造業の責任技術者です。
総括製造販売責任者は、薬機法第17条第1項に定めがあります。品質管理と製造販売後安全管理を行わせるために、厚生労働省令で定める基準に該当する者を置くこととされています。責任技術者は同条第10項で、製造を実地に管理させるために製造所ごとに置くこととされています。
具体的な資格要件は、総括製造販売責任者が施行規則第85条の2第2項、責任技術者が施行規則第91条第2項に置かれています。いずれの条文にも、国籍や在留資格に関する定めはありません。薬剤師であるか、薬学または化学の課程を修めているか、実務経験があるか。問われるのはこの3点です。
つまり薬機法だけを見れば、国籍を理由に責任者への就任が妨げられることはありません。
化粧品の責任者に求められる学歴と実務経験
二つの責任者の資格要件は、それぞれ4つの区分で定められています。いずれか一つに当てはまれば足ります。
| 区分 | 総括製造販売責任者(施行規則第85条の2第2項) | 責任技術者(施行規則第91条第2項) |
|---|---|---|
| 第1号 | 薬剤師 | 薬剤師 |
| 第2号 | 高校またはこれと同等以上の学校で、薬学・化学の専門課程を修了 | 高校またはこれと同等以上の学校で、薬学・化学の専門課程を修了 |
| 第3号 | 同じ学校で薬学・化学の科目を修得後、品質管理または製造販売後安全管理の業務に3年以上従事 | 同じ学校で薬学・化学の科目を修得後、製造に関する業務に3年以上従事 |
| 第4号 | 厚生労働大臣が第1号から第3号と同等以上の知識経験を有すると認めた者 | 厚生労働大臣が第1号から第3号と同等以上の知識経験を有すると認めた者 |
二つの責任者で違うのは第3号の従事すべき業務だけで、それ以外は同じ内容です。
第2号にいう「これと同等以上の学校」には大学や高等専門学校が含まれます。薬学や化学の課程を修めていれば第2号に当てはまり、実務経験は問われません。学歴の水準としては高校が下限であり、大学の卒業までは求められません。
第3号は、課程の修了までは至らず科目の修得にとどまる場合の区分です。この場合は、責任者ごとに定められた業務に3年以上従事している必要があります。
責任者の資格要件と兼任の可否については、別の記事で詳しく整理しています。

あわせて確認する在留資格
薬機法の要件を満たしていても、責任者の職務が外国人の在留資格の範囲に収まらなければ、就任させることはできません。人選の段階では、この二つを並べて確認することになります。
在留資格の側は、外国人候補者がどの在留資格をもっているか、どこから招くかで話が変わります。経路はひとつではありません。以下では、就労制限のない在留資格をもつ場合、技術・人文知識・国際業務で招く場合、企業内転勤で招く場合、代表者が兼ねる場合の4つに分けて整理します。
就労制限のない在留資格の場合
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、入管法別表第二に置かれた在留資格です。就労の内容に制限がないため、責任者への就任について在留資格の面から検討すべき点はありません。
日本人の従業員を責任者に据える場合と同じ手順で進められます。候補者がこれらの在留資格をもっているのであれば、化粧品の責任者としての要件を確認することが中心になります。
在留資格の一覧と、就労できる資格・できない資格の分け方は別の記事で整理しています。

技術・人文知識・国際業務の場合
海外から人材を招く場合や、就労系の在留資格で在留している外国人を化粧品の責任者に充てる場合は、技術・人文知識・国際業務が候補になります。
要件は入管法第7条第1項第2号に基づく上陸基準省令(在留資格ごとの上陸許可基準を定める法務省令)に置かれています。技術または知識を要する業務に従事する場合、次のいずれかを満たす必要があります。
- 当該技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと
- 当該技術・知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程等を修了したこと
- 10年以上の実務経験を有すること
3つめには注記があり、大学・高等専門学校・高等学校・中等教育学校の後期課程・専修学校の専門課程等で関連科目を専攻した期間を算入できるとされています。加えて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが求められます。
薬機法が求めるのは薬学または化学の課程です。技術・人文知識・国際業務も専攻と業務の関連性を見ますので、化学を修めた人が化粧品の責任者に就くのは、関連性を説明しやすい組み合わせになります。
実際に候補となるのは大学等で薬学・化学を修めた人が中心で、その場合は薬機法の要件にも技術・人文知識・国際業務の学歴要件にも当てはまります。学歴によらず実務経験だけで薬機法の要件を満たす候補者の場合は、技術・人文知識・国際業務が実務10年を求める点に留意が要ります。
企業内転勤の場合
海外の親会社やグループ会社から責任者候補を招く場合は、企業内転勤も選択肢になります。
活動内容は入管法別表第一の二の表により「技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動」とされており、技術・人文知識・国際業務と同じです。異なるのは上陸基準のほうで、次の2つを満たすこととされています。
- 転勤の直前に外国の事業所で技術・人文知識・国際業務に当たる業務に継続して1年以上従事していること
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
学歴の要件も、実務10年の要件もありません。海外本社で1年以上勤務した人であれば、この経路を検討できます。海外ブランドが日本法人を立ち上げる場面では、現実的な選択肢になります。
なお令和9年4月1日に、企業内転勤の下欄が2つの号に分かれます。責任者を招く場面に当たるのは第1号で、内容は現行の条文と同じです。あわせて新設される第2号は技能等を修得するための類型で、受入機関の常勤職員20人以上といった別の基準が置かれますが、こちらは対象が異なります。
代表者が責任者を兼ねる場合
小規模な輸入販売会社では、代表者が総括製造販売責任者を兼ねる形もあります。この場合の在留資格は経営・管理になります。
令和7年10月16日施行の改正で、事業の用に供する財産の総額が3,000万円以上であること、経営管理者以外に本邦に居住する常勤職員を置くこと、経営者または従事者のいずれかが日本語を高度に理解し使用できる水準にあることなどが求められるようになりました。資本金の設計に直結しますので、責任者の人選より前に確認しておく論点です。
外国の学校を卒業した場合の扱い
海外で教育を受けた外国人を候補にする場合、薬機法の要件を満たすかどうかが、その場では判断しきれないことがあります。
薬機法側の条文は「旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校」と定めていますが、外国の学校が含まれるかどうかは明示されていません。この点は都道府県の薬務主管課への確認を推奨します。
施行規則第85条の2第2項第4号には「厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者」という定めもあります(責任技術者は第91条第2項第4号)。ただし、どのような場合に該当するかは条文からは読み取れず、都道府県の公表資料にも具体的な基準は示されていません。前述の確認とあわせて相談することになります。
同じ「化学を学んだ」という事実でも、薬機法と在留資格では確認される観点が違います。薬機法は薬学・化学の課程を修めたかどうか、在留資格は専攻科目と担当予定の職務内容が結びつくかどうかを見ます。
責任役員と責任者の違い
海外ブランドの日本法人では、本社の役員をどう位置づけるかという論点も出てきます。ここは責任者の話と混同しやすい部分です。
製造販売業者には、薬機法第18条の2に基づく法令遵守体制の整備が求められ、その中心に責任役員が置かれます。厚生労働省の法令遵守ガイドラインに関する質疑応答集(Q3-10)は、海外在住の者であっても、会社を代表する役員または薬事に関する法令に関する業務を担当する役員は責任役員に該当するとしています。
つまり本社の役員が日本に住んでいなくても、責任役員としての位置づけは可能です。
これに対し総括製造販売責任者は別の概念です。施行規則第87条第2項は、法令および実務に精通して公正かつ適正に業務を行うこと、品質保証責任者および安全管理責任者と相互に密接な連携を図ることを遵守事項として定めています。この業務を担う以上、日本国内で継続的に職務を遂行できる体制にあることが前提になると考えられます。
本社役員を責任役員に据えることと、日本で総括製造販売責任者を確保することは、別々に手当てする必要があります
よくある質問
Q:海外本社から責任者を招くとき、大学を出ていないと無理ですか
技術・人文知識・国際業務であれば、学歴か10年の実務経験が必要になります。一方、企業内転勤であればどちらも問われません。海外の事業所で技術・人文知識・国際業務に当たる業務に1年以上従事していることが要件です。
Q:海外の大学で化学を専攻した人は責任者の要件を満たしますか
薬機法側は「これと同等以上の学校」に外国の学校が含まれるかが条文上明示されていないため、都道府県の薬務主管課への確認を推奨します。在留資格側は、大学の卒業と専攻科目を証明できれば要件に近づきます。
Q:すでに技術・人文知識・国際業務を持つ社員を責任者にする場合、手続きは必要ですか
在留資格そのものが変わらないのであれば、変更許可申請は要しないことになります。ただし職務内容が変わる場合は、いまの在留資格の範囲内かを確認しておくと安全です。入管法第19条の2第1項の就労資格証明書交付申請であれば、次回の更新を待たずに確認しておく方法があります。手続きの種類ごとの選び方は別の記事で整理しています。

当事務所の強み
化粧品の許認可と在留資格の両方を、同じ窓口で扱います。
- 薬機法と在留資格の両方を同時に確認します。 候補者が決まった段階で二つを突き合わせ、どちらかで止まる要素がないかを先に洗い出します
- 専攻科目が「薬学又は化学」に当たるかを読み解きます。 元化学メーカー研究員として研究開発の現場を経験しています。海外の成績証明書に並ぶ科目名を見て、化学に関する課程・科目として説明できるかを整理できます
- 化粧品製造販売業・製造業の許可申請からGQP・GVP手順書の作成まで対応しています
- ご相談はオンラインで承ります。相談料は無料です
候補者の学歴・職歴と在留カードの確認から、許可申請と在留資格の手続きまでまとめてサポートします。ご連絡をお待ちしています。


