許認可申請を行政書士に依頼するメリット|製造業で手続きが重なるときの注意点
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
許認可申請を行政書士に依頼するメリットが大きいのは、1つの事業で複数の手続きが重なる場面です。製造業では、製品の許可・原料の保管・廃液の処理と、法令ごとに窓口が分かれます。消防署・都道府県・警察署・省庁と、対応先は手続きの数だけ増えていきます。
自社で進める場合は、区分の判定・更新の期限・許可後の義務を、法令ごとに自分で確かめていくことになります。「許可が必要かどうか」の判断を誤ると、無許可営業につながるおそれがあります。
また、2026年1月施行の行政書士法改正で、無資格者による書類作成の規制が「いかなる名目によるかを問わず」と明文化されました。依頼先を選ぶうえでも、知っておきたい改正です。
製造業で許認可が重なる場面
製品そのものの許可だけを見ていると、周辺の手続きを見落とします。原料・設備・廃棄物のそれぞれに、別の法令がかかるためです。
化粧品工場で重なりうる手続きの例
化粧品の製造を始める工場を例にとると、取り扱う物質と量によって、次の手続きが同時に関わってきます。
| きっかけ | 関わる法令・手続き | 窓口 |
|---|---|---|
| 化粧品を製造する | 薬機法の化粧品製造業許可(市場に出すなら製造販売業許可も) | 都道府県(薬務課等) |
| エタノール等の引火性の原料を保管する | 消防法の危険物(量によって少量危険物の届出、または製造所等の設置許可) | 所轄消防署(市町村長等) |
| アルコール分90度以上のアルコールを工業用に使う | アルコール事業法の使用許可(特定アルコールを除く) | 経済産業大臣 |
| 劇物にあたる原料を輸入・販売する | 毒劇法の輸入業・販売業の登録 | 都道府県(販売業は市・区の場合あり) |
| 廃液・廃溶剤が出る | 廃棄物処理法の産業廃棄物の処理委託(マニフェストの交付) | 委託先の許可業者 |
アルコール事業法でいう「アルコール」は、アルコール分90度以上のものに限られます(同法第2条)。工業用に使用する場合は、第26条により経済産業大臣の許可が必要です。濃度や仕入れ方によって要否が変わるため、原料の規格書を見て判断します。
許可を取ったあとにも継続的な義務が発生します。産廃収集運搬業では車両の変更届出、危険物施設では定期点検と点検記録の作成・保存、化粧品製造業では製造所の変更届が必要になります。これらを見落とすと行政指導や、場合によっては許可の取消しにつながる可能性があります。
主な許認可と申請先の一覧
各許認可の申請先は、手続きごとに異なります。以下は当事務所が対応する主な許認可と申請先の一覧です。
| 許認可・届出 | 申請先 |
|---|---|
| 化粧品製造販売業・製造業 許可 | 都道府県(薬務課等) |
| 毒物劇物営業者 登録 | 都道府県または市 |
| アルコール事業法 許可(製造・輸入・販売・使用) | 経済産業大臣 |
| 産廃収集運搬業 許可 | 都道府県知事または政令市長等 |
| 第一種フロン類充填回収業 登録 | 都道府県知事 |
| 古物商 許可 | 公安委員会(警察署窓口) |
| 金属くず商 許可 | 公安委員会(警察署窓口) |
| 危険物製造所・貯蔵所・取扱所 設置許可 | 所轄消防署(市町村長等) |
| 少量危険物・指定可燃物 貯蔵取扱届出 | 所轄消防署 |
| 高圧ガス製造・貯蔵・販売 許可・届出 | 都道府県知事(大阪府内は高槻市を除き市町村の消防本部等へ権限移譲) |
| 化審法 新規化学物質 届出・申出 | NITE(化審法連絡システム経由、3省宛) |
| 新事業進出・ものづくり補助金 申請 | 新事業進出・ものづくり補助金事務局(GビズIDによる電子申請) |
| 小規模事業者持続化補助金 申請 | 持続化補助金事務局(電子申請。商工会・商工会議所が作成する事業支援計画書〔様式4〕が必要) |
| 経営革新計画 承認 | 都道府県知事 |
| 経営力向上計画 認定 | 主務大臣(電子申請) |
| 先端設備等導入計画 認定 | 市区町村長 |
| 事業継続力強化計画(BCP認定) | 経済産業局長 |
産廃収集運搬業の許可は、収集運搬を行う地域によって申請先が異なります。一の政令市等の区域内のみで完結する場合はその政令市長等に申請します。運搬範囲がその区域を越える場合(複数の政令市をまたぐ、または政令市以外の地域が絡む場合)は都道府県知事への申請です。なお、複数の都道府県にまたがって運搬を行う場合は、それぞれの都道府県知事への申請が必要です。化審法の届出・申出は、経済産業省・厚生労働省・環境省の3省宛に提出します。実務上はNITEの化審法連絡システムを通じて届出登録を行います。
各手続きの詳細については以下をご参照ください。










行政書士に依頼するメリット
複数の許認可を取得・維持していく場面では、窓口ごとに個別に対応するより、まとめて管理するほうが漏れを防げます。依頼で集約できるのは、次の4つです。
区分判定を同じ前提でそろえる
産廃の品目が通常産廃か特別管理産廃か、危険物が指定数量以上かどうかの判定は、物質の性状・数量データをもとに行います。各許認可の区分判定を別々に依頼すると、前提となる情報を毎回そろえ直す手間がかかります。まとめて依頼すれば、SDS(安全データシート)など同じ資料から判定でき、手続き間で食い違いが生じにくくなります。
区分判定を誤ったまま申請すると、不許可になるだけでなく、無許可のまま事業を続けてしまうリスクがあります。たとえば、特別管理産廃の許可が必要な品目を通常の産廃として扱う、指定数量以上の危険物を少量危険物の届出にとどめる、といった誤りです。
共通書類と申請の順序をまとめて管理する
複数の手続きを自社で管理すると、共通書類の取得漏れや、同じ書類を申請先ごとに別々に準備する手間が生じます。たとえば産廃収集運搬業と古物商の許可申請を同時に進める場合、登記事項証明書などを各申請でそろえる必要があります。
手続きには順序が重要なものもあります。新事業進出・ものづくり補助金で経営革新計画の承認を加点に使うには、公募締切より前に都道府県の承認を得ておく必要がある場合があります。法人設立と産廃収集運搬業の許可申請を同時に検討しているケースでも、法人格の取得を先行させるかで申請書類の構成が変わります。
更新期限を一覧で管理する
主な許可には有効期間があり、期限までに更新しないと失効します。有効期間は許可ごとに異なるため、複数の許可を持つ事業者ほど一覧での管理が欠かせません。
| 許可・登録 | 有効期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 化粧品製造販売業・製造業 許可 | 5年 | 薬機法施行令第3条・第10条 |
| 産廃収集運搬業 許可 | 5年(優良認定を受けた更新は7年) | 廃棄物処理法施行令第6条の9 |
| 毒物劇物製造業・輸入業 登録 | 5年 | 毒劇法第4条 |
| 毒物劇物販売業 登録 | 6年 | 毒劇法第4条 |
更新申請は、審査期間を逆算して準備を始める必要があります。補助金でも、公募の締切・交付申請・実績報告にそれぞれ期限があります。
申請書類と事業の実態を食い違わせない
書類の不備や要件の見落としは、申請後の補正・差し戻しにつながり、審査が長引く原因になります。化粧品製造販売業の申請では、GQP・GVP手順書の整備状況や責任者の資格要件が実地調査で確認されます。要件を整理せずに申請すると、準備のやり直しが発生することがあります。
2026年1月施行の行政書士法改正の要点
2026年1月1日施行の改正で、無資格者による官公署提出書類の作成への規制が強化されました。依頼先がコンサルタントや取引先企業の場合も関わる内容です。
改正前
- 第十九条(業務の制限)
- 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。
- 第二十一条
- 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
- 二 第十九条第一項の規定に違反した者
- 第二十三条の三〔両罰規定。第十九条第一項の違反は対象外〕
改正後
- 第十九条(業務の制限)
- 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。
- 第二十一条の二〔罰則は改正前と同じ。条を移した〕
- 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
- 第二十三条の三〔両罰規定〕
- 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
※但書、第二十一条の第一号は省略
行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類の作成を行うことは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となります。
「コンサル料」「サポート費用」など名目を変えた対価でも、実質が書類作成の報酬であれば規制の対象になり得ることが明確になりました。許認可の申請書類の作成を行政書士でない第三者に頼むと、その第三者が業として継続的に行っていれば法違反になり得ます。

よくある質問
許認可の申請について、よく寄せられる質問をまとめました。
製造業で複数の許認可が必要か、まとめて確認してもらえますか?
事業の内容・取り扱う物質・施設の規模をお聞きすることで、必要な許認可の種類と申請先を整理できます。SDSや原料の規格書があれば、危険物・毒劇物・アルコールなどの該当性もあわせて確認します。「何が必要かわからない」という状態からでもご相談いただけます。
許認可の申請書類をコンサルタントに作ってもらうのは問題ありますか?
行政書士でない者が、報酬を得て業として官公署に提出する書類を作成することは、行政書士法第19条第1項で禁じられています。2026年1月の改正で「いかなる名目によるかを問わず」と明記され、名目を変えた報酬でも対象になり得ます。法律に別段の定めがある場合は除かれます。
行政書士が対応できない手続きはありますか?
法人の登記申請は司法書士、税務申告・確定申告は税理士の独占業務とされています。会社設立に必要な定款の作成は行政書士が対応しますが、法務局への登記申請は司法書士への依頼が必要になります。業務として対応できる範囲については、事前のご相談でご確認いただけます。
大阪府外の施設でも対応できますか?
対応しています。書類の作成・確認はオンラインで進めます。消防署・都道府県窓口への協議が必要な場合は、状況に応じた対応方法をご提案します。
当事務所の強み:製造業の許認可を横断して対応
製造業の許認可は、当事務所が関わる手続きの洗い出しから申請書類の作成・提出までお引き受けします。
当事務所では、薬機法・毒劇法・アルコール事業法・廃棄物処理法・消防法(危険物)・化審法など、製造業に関わる許認可を横断して対応しています。元化学メーカー研究員として有機合成・廃液管理・化粧品材料研究の実務を経験しており、物質の性状から法令の該当性を判断できる点が強みです。
- 化粧品・毒物劇物・アルコール:GQP・GVP手順書の作成を含む薬機法関連許可、毒劇物の登録、アルコール事業法の許可に対応
- 産廃・フロン・古物商:廃棄物区分の判定から複数自治体への同時申請まで対応
- 危険物・高圧ガス・化審法:甲種危険物取扱者として、施設区分の判定・設置許可・届出、新規化学物質の届出まで対応
- 補助金・事業計画認定:新事業進出・ものづくり補助金・BCP認定・経営革新計画・経営力向上計画に対応
扱う原料と工場で行う工程をご相談の際に伺えれば、関わりそうな手続きの見当をお伝えできます。
