化粧品の特記表示|「○○配合」に配合目的が必要な理由と2025年の新通知
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
「ヒアルロン酸配合」「3種のセラミド配合」「〇〇エキス20%」。化粧品のパッケージや広告で、特定の成分を取り出して見せる表現はよく使われます。ところが、こうした化粧品の特記表示には、配合目的を書き添えるという決まりがあります。
この決まりの根拠となる厚生労働省の通知が、2025年3月に約40年ぶりに新しくなりました。2026年7月には、日本化粧品工業会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」もこの通知に合わせて改訂されています。旧ルールの感覚のままパッケージを作ると、思わぬ指摘を受ける可能性があります。
元化学メーカー研究員として化粧品原料の研究開発に携わった経験と、パッケージ・広告の表現確認の実務をもとに、新しい通知で何が変わったのかと、配合目的の書き方を解説します。
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化粧品の特記表示とは(「○○配合」が原則として認められない理由)
特記表示は、配合している成分のうち特定の成分を取り出して表示することです。まず、どこまでが特記表示に当たるのかと、なぜ原則として認められないのかを確認します。
特記表示に当たる範囲(パッケージ・ボディコピー・外国語)
「化粧品における特定成分の特記表示について」(令和7年3月10日 医薬監麻発0310第3号・厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知)は、特記表示を「商品に配合されている成分中、特定の成分を表示すること」と定めています。次のものは、いずれも特記表示に当たります(通知のQ&A)。
- 広告のボディコピー(本文)の中に特定成分を書いた場合
- 外箱・直接の容器・被包・添付文書に特定成分を書いた場合
- 特定成分を外国語で書いた場合(外国語と日本語を区別しない)
広告だけでなく、パッケージに成分名を書くことも特記表示に当たります。一方、全成分表示のように配合成分のすべてを同等に表示する場合は、特記表示に当たりません。

特記表示が誤認を招くとされる理由
通知は、化粧品で特定成分を特記表示することは「あたかもその成分が有効成分であるかのような誤認を生じるおそれがある」として、原則として行わないこととしています。そのうえで、通知の留意事項とQ&Aに沿う場合に限って認めるという構造です。
Q&Aは、特記表示によって生じうる問題として次の3つを挙げています。
- 化粧品ではない(医薬品的な)印象を与えることがある
- 通常の化粧品より成分的に効果・安全性等の面で優れているとの誤認を与えることがある
- その成分が主たる成分であるとの誤認を与えることがある
化粧品の広告規制の土台は、薬機法第66条(誇大広告等)です。同条第1項は、化粧品の効能・効果などについて「明示的であると暗示的であるとを問わず」虚偽・誇大な広告を禁じています。成分名だけを大きく見せる表現は、効能をはっきり書いていなくても、成分の働きを暗示する表現と受け取られる可能性があります。
「化粧品は効能をうたえない」と受け取られがちですが、化粧品も効能の範囲(56項目)の中であれば表示できます。配合目的を書き添えるのは、成分名だけでは読む人が薬のような働きまで想像してしまうため、その成分の役割を「保湿成分」のように範囲の中に限定して示すためです。だから配合目的そのものも、「消炎剤」「抗酸化」のように範囲を超える言葉は使えません。
2025年3月の新通知で変わった点(医薬監麻発0310第3号)
新しい通知は、昭和60年から続いてきた特記表示のルールを「より理解しやすい表現に修正する」ために出されました。実務に影響する変更点を3つに絞って説明します。
昭和60年通知の廃止とガイドライン改訂α版
新通知の発出により、「化粧品における特定成分の特記表示について」(昭和60年9月26日 薬監第53号)は廃止されました。
- 1985年(昭和60年)9月26日
- 旧通知(薬監第53号)
- 2025年(令和7年)3月10日
- 新通知(医薬監麻発0310第3号)。旧通知は廃止
- 2026年7月24日
- 化粧品等の適正広告ガイドライン 改訂α版の公開
業界の自主基準である化粧品等の適正広告ガイドラインも、2026年7月24日公開の「改訂α版」で新通知に合わせて書き直されています。改訂されたのは、特記表示の項目(基本編F5.5・表現編E24)と資料編です。体験談や満足度などの数値に関する項目は、2020年版から変わっていません。
植物エキスも配合目的の併記が前提に
2020年版のガイドラインには、「植物成分、植物抽出液、天然植物エキス、海藻エキス等」は配合目的を省略できるという例外がありました。改訂α版の表現編E24には、この例外が書かれていません。同じ趣旨を書いていた平成22年の業界文書も、改訂α版の資料編で「廃止」とされています。
新通知の留意事項は「特定成分を特記表示する場合、配合目的を必ず併記すること」としています。植物エキスを特記する場合も、配合目的を書き添える前提で表示を作ることを推奨します。由来を示したい場合は、「カミツレエキス(天然植物保湿成分)配合」のように由来と配合目的を並べて書く方法が、通知のQ&Aで認められています。
写真・デザインで見せる成分にも成分名と配合目的
新通知は、特定成分を写真やデザイン(英文等の表示を含む)で表現している場合も、「○○(成分名)△△(配合目的)」などと成分名と配合目的を記載するよう求めています。
果実や植物の写真、英字のロゴのように成分を印象づけるデザインも、文字で書いた特記表示と同じ扱いになります。デザインの段階で成分を大きく見せる演出を決めてしまうと、配合目的を書くスペースが残らないことがあります。当事務所では、デザインを固める前のラフの段階から、特記表示に当たる箇所と配合目的の入れ方を確認しています。
配合目的の書き方|認められる例・認められない例
配合目的は、何でも書けばよいわけではありません。新通知とガイドライン改訂α版をもとに、書ける表現と書けない表現を整理します。
配合目的として認められる表現
新通知は、配合目的を「化粧品の効能効果及び製剤技術に基づく表現」とし、客観的に実証されているものに限っています。通知のQ&Aに挙がっている例は次のとおりです。
| 区分 | 認められる例 |
|---|---|
| 化粧品の効能効果に基づく表現 | 保湿、皮膚保護、紫外線防止成分、お肌の引き締め成分、補油成分 |
| 製剤技術に基づく表現 | コーティング成分、増粘剤、製品の酸化防止剤 |
| 文章で書く例 | 「アロエエキスが肌にうるおいを与えます。」「うるおい成分コラーゲンを配合」 |
| 使用感・性状を示す例 | 「スクワラン配合により、のびのよい軽い感触が楽しめます。」「シルクパウダー配合(さらさら成分)」 |
効能効果に基づく表現は、化粧品の効能の範囲(56項目)に収まっている必要があります。「客観的に実証されている」とは、効能効果や製剤技術に基づく表現として客観的に説明できることを指します。説明資料は社内データでもよいとされていますが、客観性のあるものであることが求められます。
配合目的として認められない表現
Q&Aは、「アロエエキスを配合した化粧水です。」は配合目的が書かれていないため不可としています。成分名を出すなら、配合目的まで一緒に書くことが前提です。
ガイドライン改訂α版の表現編E24は、配合目的として認められない例を次のように挙げています。
| 認められない配合目的 | 理由 |
|---|---|
| 抗酸化・肌ストレス保護 | 化粧品の効能効果の範囲を逸脱する |
| 美肌成分・美容成分 | 効能が不明瞭で、ニキビ改善やシワ改善などを期待させ、有効性があるとの誤認を与えるおそれがある |
| エイジングケア成分 | エイジングケアは年齢に応じた「お手入れ」を示すもので、配合目的として不適切 |
「美容成分」は使いやすい言葉ですが、配合目的としては認められていません。

配合目的を書く位置と注釈の扱い
配合目的は、特記表示した成分名の前または後ろに書くのが基本です。「シアバター(保湿成分)配合」のように、成分名のすぐ横に添える形です。
注釈(※印)を使って離れた場所に書く場合は、文字の大きさ・フォント・配置・コントラスト・色に注意し、容易に読めるようにする必要があります。動画広告では、表示時間にも気を配り、配合目的が画面やナレーションで容易に理解されるように説明します。※印を付けて離れた場所に小さく書くだけでは、容易に読めるとはいえない可能性がある点に注意が必要です。
見落としやすい特記表示のNGパターン
配合目的を書いていても、成分の選び方や書き方によっては認められない場合があります。実務で見落としやすい3つのパターンを紹介します。
「薬」の字や医薬品を思わせる成分名
新通知は、名称に「薬」の字が含まれる成分と、医薬品のような印象を与える成分の特記表示を認めていません。例として「生薬エキス」「薬草抽出物」「薬用植物のエキス」「漢方成分抽出物」が挙がっています。ガイドライン改訂α版も「薬用炭」を認められない例に加え、「芍薬」は「シャクヤク」と書くよう示しています。
生薬名であっても、配合目的を書き添え、「生薬」などの文字を入れなければ特記表示できます(例「天然植物薏苡仁エキス(保湿成分)」)。
エキスに含まれる成分(付随物質)の効能
特記表示が認められるのは、製品に配合した成分そのものです。配合した成分に含まれている物質(付随物質)を取り出して働きをうたうことは認められていません。ガイドライン改訂α版は、次のような表現を認められない例として挙げています。
- 〇〇エキス(保湿)に含まれるイソフラボンが、肌にうるおいを与えます。
- うるおいに大事なビタミンを含む○○エキス(保湿)配合。
- ○○エキス(保湿)にはミネラルなど肌を整える成分が含まれています。
化学の視点で見ると、植物エキスには多くの成分が含まれており、その中の一成分の働きを製品全体の効果のように語りたくなる場面があります。しかし、エキスの一成分に知られた作用があっても、製品として同じ効果が出るとは限りません。原料メーカーの資料にある成分の作用をそのまま広告に転記するのは避けてください。
医薬部外品の有効成分になりうる成分(ビタミン・グリチルリチン酸ジカリウム)
ビタミンA・Eやグリチルリチン酸ジカリウムのように、医薬部外品の有効成分として使われることのある成分は、特に注意が必要です。新通知のQ&Aは、これらを化粧品の成分として特記表示する場合、次の3点をすべて満たす配合目的を書く必要があるとしています。
- 明示的・暗示的を問わず、有効成分であるかのような誤認を生じさせ、薬理作用などを暗示させないこと
- 化粧品の効能効果の範囲であること
- 客観的に実証されたことに基づくこと
あわせて、配合目的だけでなく広告全体としての表現にも十分注意するよう求めています。「グリチルリチン酸ジカリウム(消炎剤)配合クリームです。」は、2の要件を満たさないため不可です(Q&A)。「肌あれを防ぐ成分ビタミンA、E配合」も、広告全体から有効成分であるかのような誤認を生じさせると判断される場合は不可です。

よくある質問
全成分表示に載っている成分をパッケージの表面で目立たせるのも、特記表示に当たりますか?
当たります。全成分表示のように配合成分のすべてを同等に表示する場合は特記表示に当たりませんが、特定の成分だけを取り出して表示すれば特記表示になります。外箱・直接の容器・添付文書への記載も、すべて特記表示に当たるとされています。
海外向けのデザインを流用し、英語で「Hyaluronic Acid」とだけ書いた場合も、配合目的が必要ですか?
新通知のQ&Aは、外国語と日本語を区別して扱わないとしており、外国語の表示も特記表示に当たります。写真・デザイン(英文等を含む)で表現している場合も、成分名と配合目的の記載が求められています。英語表記のデザインを使う場合も、日本で流通させる製品であれば配合目的の併記を検討してください。
配合目的の根拠は、原料メーカーの資料や社内試験のデータでもよいですか?
新通知のQ&Aは、説明資料は社内データでもよいとしつつ、客観性のあるものであることが必要としています。原料メーカーの資料を使う場合も、その配合量で製品として同じ働きが説明できるかを確認しておくことを推奨します。
当事務所の強み:成分の働きと表示ルールを両方から確認
特記表示の確認では、ルールの知識だけでなく、成分が製品の中で何をしているのかを読み解く視点が求められます。
- 化粧品原料の研究開発経験:元化学メーカー研究員として、原料の成分組成や物性に向き合ってきました。エキスと付随物質の区別や、配合目的として客観的に説明できるかを、化学の視点から確認します
- パッケージ・広告の表示確認:特記表示に当たる箇所を洗い出し、配合目的の有無・書き方・注釈の位置まで確認します。全成分表示や化粧品の効能の範囲(56項目)とあわせて、表示全体を見直します
- 新しい通知への対応:2025年3月の新通知とガイドライン改訂α版を前提に、旧ルールのまま作られた表示の見直しにも対応します
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

ご相談では、どの成分を前に出したいか、パッケージと広告のどこに載せる予定かを伺います。そのうえで、特記表示に当たる範囲と、配合目的を書く位置の考え方をご案内します。
