化粧品製造販売業の更新時立入調査|確認項目と準備資料の実務
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
更新申請を提出したあと、薬務課から立入調査の日程通知が届きます。実地調査とも呼ばれるこの調査で何を聞かれるのか、手元の記録で足りるのか、不安に感じる担当者は少なくありません。
確認項目のなかには「品質標準書」「製造業者等との取決め」など、化粧品には作成義務のない書類の名称も並びます。 作成していれば体制の裏づけになりますが、なければ直ちに不備というものでもありません。
この記事は、当事務所が化粧品製造販売業の更新時立入調査に立ち会った経験をもとにしています。当日に何を尋ねられ、どの書類の提示を求められたかを踏まえて、確認される事項を整理します。そのうえで、化粧品に法令上の義務がある事項と、そうでない事項の切り分けを根拠条文とともに解説します。準備すべき資料と、当日の受け答えで気をつける点もあわせて扱います。
更新時に立入調査が行われる時期と所要時間
調査の進め方は所管の都道府県により異なります。 以下、時間・提出時期・評価の区分については大阪府の運用を前提に説明します。
化粧品製造販売業の許可は、有効期間が5年です(薬機法第12条第4項、施行令第3条)。
更新申請を提出すると、その審査の一環として立入調査が実施されます。薬機法第12条の2は、「品質管理の方法が厚生労働省令で定める基準に適合しないとき」等に許可を与えないことができると定めています。つまりGQP・GVPの遵守状況が、更新の要件になっているためです。
調査の所要時間は1〜2時間程度
日程通知では2時間程度の枠で案内されます。ただし確認項目が絞られているため、立ち会った調査では1時間ほどで終わりました。枠より短く終わることはありますが、時間は長めに見込んで担当者の予定を確保しておくほうが安心です。
事前に送付される書類のうち、確認事項をまとめた様式は、化粧品では調査当日に提出する扱いになります。事前のメール提出は求められません。
当日提出でよいとはいえ、許可番号・有効期限・三役の氏名・品目数といった情報は、その場で調べる時間がありません。記載内容は事前に固めておく必要があります。
更新許可証が期限までに届かない場合
有効期限の直前に調査が行われると、更新後の許可証が期限までに手元に届かないことがあります。
事業を継続してよいかどうかは、所管の薬務課に確認しておくことを推奨します。指摘が出た場合の改善報告の期限と、更新処分との関係もあわせて聞いておくと、その後の見通しが立ちます。
立入調査で確認される項目
確認項目は、全般に係るものと、GQP・GVPそれぞれの個別項目に分かれます。
GQP・GVP全般に係る3項目
製造販売業の組織体制と許可の取得状況、総括製造販売責任者の勤務および兼務の状況、前回の指摘事項とその改善状況の3つです。
品目数・出荷中の品目数・販売経路・製造委託先といった基本情報は、冒頭でまとめて確認されます。この5年間に変更届の対象事項に変更がなかったかも問われます。未提出の変更届があると、ここで露見します。
GQPに係る8項目
内訳は次のとおりです。品質管理業務に係る組織及び職員、品質標準書、製造業者等との取決め、市場への出荷の管理、適正な製造管理及び品質管理の確保、品質等に関する情報及び品質不良等の処理、回収処理、文書及び記録の管理の8つになります。
GVPに係る6項目
安全確保業務に係る組織及び職員、安全管理情報の収集、その検討と安全確保措置の立案、安全確保措置の実施、記録の保存、業務の委託です。
作成していない書類の名前でも質問が来る
確認項目は医薬品・医薬部外品と共通の枠組みに沿っているため、「品質標準書」「製造業者等との取決め」のように、化粧品では法的義務に当たらない書類の名前も並びます。
作成していない場合でも、代わりに何で対応しているかを説明できれば足ります。項目名に引きずられて「対応できていない」と考える必要はありません。 化粧品で求められる事項と、その根拠は次のとおりです。
化粧品に義務がある事項・ない事項
ここが立入調査の準備で最も重要な部分になります。義務のない事項に労力を割く一方、義務のある事項が抜けている、という状態を避ける必要があるためです。
GQP省令第3章は実体規定と準用の二層構造
化粧品に適用されるGQP省令第3章は、3つの条文で構成されています。
| 条 | 性質 | 内容 |
|---|---|---|
| 第17条 | 実体規定 | 品質保証責任者の設置。第2号に販売部門への非所属 |
| 第18条 | 実体規定 | 手順書の記載事項6項目、行うべき業務6項目、備付け |
| 第19条 | 準用 | 第3条・第4条第1項・第8条・第16条のみ |
準用の対象条文だけを見て判断すると誤ります。第17条と第18条は準用ではなく、化粧品の製造販売業者に直接適用される実体規定です。
義務がある事項
品質保証責任者を置き、販売に係る部門に属さない者とすることが求められます(GQP省令第17条第2号)。安全管理責任者にも同じ人の要件がかかります(GVP省令第15条により第13条第2項第2号を準用)。
ここで注意したいのが、GQPとGVPで要件の重さが違う点です。GVP側は第13条第3項も準用されるため、安全確保業務を行う部門を販売部門から独立させることまで求められます。一方GQP側には部門の独立を求める規定がありません。品質保証部門を定めた第4条第2項が、第19条の準用対象から外れているためです。
化粧品では総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者を1人が兼務できます。ただしこれは三役どうしの兼務であって、販売部門との兼務が認められるという意味ではありません。

品質管理業務手順書に6つの事項を定めることも義務です(GQP省令第18条第1項)。市場への出荷に係る記録の作成、適正な製造管理及び品質管理の確保、品質等に関する情報及び品質不良等の処理、回収処理、文書及び記録の管理、その他必要な品質管理業務の6項目になります。
同条第3項により、総括製造販売責任者の事務所に手順書を備え付け、品質管理業務を行う他の事務所にその写しを備え付けることも求められます。
手順書を改訂したときの日付の記載と改訂履歴の保存も義務です(GQP省令第16条第2号。第19条により準用)。保存期間は読替えにより一律5年間となります。
義務がない事項
品質標準書の作成義務はありません。 GQP省令第5条は第19条の準用対象に含まれていないためです。
もっともOEM委託の場合、製造所から提供される製品規格書・処方・試験成績書などに、品質標準書に記載される内容が含まれています。 自社であらためて作成しなくても、これらを品目ごとに整理して保管しておけば、成分や規格を問われたときに答えられます。調査でこの項目を尋ねられたときは、代替となる資料を示して説明する形で足ります。
製造業者等との取決め書も同様です。 第7条は準用されていません。
GVPの手順書も、化粧品では許可要件になっていません。 GVP省令第15条が、手順書の作成を定めた第5条を準用していないためです。大阪府の手引きも「化粧品製造販売業においてはGVP業務に関する手順書の作成は許可要件として要求されてはいませんが、業務の適正を維持するためにも、手順書を作成することを推奨します」としています。ただし作成している場合は、その内容どおりに業務を行っているかが確認されます。
自己点検・教育訓練についても、GQP・GVPのルートでは化粧品に準用されていません。
ただし、義務がないことと、やらないほうがよいことは別です。取決め書は、作成しておけば製造所との役割分担を明確にできます。自己点検や教育訓練も、体制を維持するうえで意味のある取組です。
避けたいのは、形だけ整えて運用が伴わない状態と、調査に合わせて記録を作る状態です。手順書に定めた様式を使っていない、記録に責任者の関与が残っていないといった不整合は、調査で露見します。作成していないのであれば、そのままの状態を事実として説明するほうが結果的に評価されます。
あわせて押さえておきたいのが、第18条第2項第2号です。「製造販売しようとする医薬部外品等が製造業者等において適正かつ円滑に製造されたものであることを確認し、その記録を作成すること」を義務づけています。取決め書という形式でなくとも、ロットごとの記録確認や年次の点検票の受領によって確認を果たしていれば足ります。
教育訓練は別のルートで求められる
見落としやすい点として、教育訓練は法令遵守体制のルートで求められます。
薬機法第18条の2に基づく施行規則第98条の9第2号イが、「製造販売業者の薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業者に対する教育訓練の実施及び評価並びに業務の遂行に係る記録の作成、管理及び保存を行う体制」の整備を求めています。
GQP・GVPで準用されていないことを理由に「化粧品に教育訓練は不要」と説明すると、この規定を見落とすことになります。立入調査でも、法令遵守のための取組として報告会や集合研修の有無が確認されます。
立入調査で準備しておく資料
当日は書類の現物を求められます。電磁的記録で保存している場合も、紙で提示できる状態にしておくことを推奨します。
手順書は現行版と旧版の両方
- □ 製造販売業務総則(現行版・旧版・改訂履歴表)
- □ 品質管理業務手順書(現行版・旧版・改訂履歴表)
- □ 安全確保業務手順書(作成している場合。現行版・旧版・改訂履歴表)
- □ 品質標準書、または代替となる製造所からの製品規格書・処方・試験成績書
立ち会った調査では、現行版だけでなく旧版の提示も求められました。 改訂版だけを備え付けて旧版を破棄していると、それ自体が指摘の対象になります。改訂履歴表とあわせて、更新前の版を残しておく必要があります。

許可・届出関係
- □ 許可証
- □ 更新申請書の控えと受付票
- □ 変更届の控えと受付票(提出実績がある場合)
- □ 製造販売届出の控え一式
組織と人に関する書類
- □ 実態を反映した最新の組織図
- □ 三役の選任を示す書類
- □ 総括製造販売責任者の資格を証する書類
総括製造販売責任者の資格要件は施行規則第85条の2第2項に4つの区分が置かれており、どの号で満たしているかを説明できるようにしておきます。
記録は5年分
- □ 市場への出荷の記録
- □ 製造業者の確認記録(ロットごとの確認・年次の調査結果)
- □ 品質情報・苦情の記録
- □ 安全管理情報の収集記録
- □ 安全管理情報の検討記録
- □ 総括製造販売責任者への報告文書
- □ 委託契約書と委託先からの報告記録(委託している場合)
安全管理情報の収集記録については、安全管理責任者の関与が記録上わかる形になっているかを確認されました。収集した情報を並べるだけでは足りず、誰が確認したかが残っている必要があります。様式に確認欄を設けて押印している運用であれば問題ありません。
当日の受け答えで気をつけること
以下は、実際に同席して調査官とのやりとりを見たうえでの所感です。
指摘の評価は4段階で行われ、そのうち「適合」には現場で直ちに改善される場合を含むとされています。組織図の差し替えや不足していた様式の整備は、当日までに済ませて持参すれば、その場で適合として処理される余地があります。
化粧品に義務のない事項も、確認項目に挙がっている以上は名称で質問が来ます。 「化粧品には準用されていません」だけで終えず、自社ではGQP省令第18条のどの号で対応しているかをあわせて説明できるよう、整理しておきます。
実績がないことは不備ではありません。回収を行った実績がない、安全確保措置を立案した実績がない、といった状態は珍しくありません。「実績はございません」で止めず、発生した場合の手順を様式番号とともに説明できれば足ります。
記録がない場合は正直に述べます。 記録の不足だけで許可が下りないことは通常ありませんが、辻褄合わせが露見した場合の心証は大きく損なわれます。実施していない業務の記録を遡って作成することは避けてください。
先回りして不備を認める必要もありません。 聞かれたことに事実で答えるまでにとどめます。まだ指摘されていない事項を自分から差し出すと、指摘事項が増えることになります。
よくある質問
Q. 品質標準書を作成していませんが、指摘されますか
化粧品に品質標準書の作成義務はありません(GQP省令第5条は準用対象外)。ただし都道府県が公開している手順書モデルには様式が含まれている場合があり、行政指導として作成を求められることがあります。「義務がないので作成していません」で終えず、製品ごとの販売名・成分・規格・製造所をどの文書で管理しているかを説明できるようにしておくことを推奨します。
Q. 製造をすべて委託している場合、何を確認されますか
GQP省令第18条第2項第2号に基づく確認の方法が問われます。確認の方法・様式・頻度に法定の要件はありません。 ロットごとに製造記録と試験検査記録の提出を受けて品質保証責任者が確認する、年に1回製造所の状況を調査する、といった実際の運用を説明できれば足ります。実地訪問でも書面の受領でも構いません。
Q. 三役を1人で兼務していますが、立入調査で指摘されますか
兼務それ自体は指摘の対象になりません。 化粧品製造販売業では、総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者を1人が兼務できます。三役の兼務を禁じる規定は法令になく、大阪府・京都府の手引きもいずれも兼務が可能である旨を案内しています。
確認されるのは、その人が販売部門に属していないかです。GQP省令第17条第2号は、品質保証責任者を「医薬品等又は医療機器の販売に係る部門に属する者でないこと」と定めています。営業を兼ねている場合は、組織図上どの部門に置いているかを説明できるようにしておきます。
Q. 記録の保存期間は5年と聞きましたが、いつから数えますか
GQPとGVPで起算点が異なります。品質管理業務の記録は作成の日から5年間、品質管理業務手順書は使用しなくなった日から5年間です(GQP省令第16条第3号。第19条の読替えにより期間は一律5年)。安全確保業務の記録は利用しなくなった日から5年間です(GVP省令第16条)。
当事務所の強み:更新申請から立入調査の対応まで
化粧品の許認可と品質管理体制の整備を扱っており、更新申請と立入調査対応のいずれか一方だけでもお引き受けしています。
- 更新申請込みでのご依頼:申請書類の作成から、調査当日までの準備、想定問答の作成までを一貫して担当します
- 立入調査の対応のみのご依頼:すでに更新申請を提出済みの段階からでも対応します。手順書と記録の点検、確認項目ごとの根拠条文の整理、三役向けの模擬ヒアリングを行い、調査当日の同席も承ります
- 化粧品に準用される条文とされない条文を切り分けて整理します。義務のない事項に労力を割かず、義務のある事項に絞って準備を進められます
- 元化学メーカー研究員として研究開発の現場を経験しています。品質情報の原因究明や処方変更の妥当性など、技術的な内容を含む説明にも対応できます
- ご相談はオンラインで承ります。相談料は無料です

手順書と記録の現状を確認するだけでも構いません。何が足りていて何が足りていないかを、確認項目ごとに整理してお返しします。


