工場の設備増設で必要な届出・許可|法令別チェックリスト
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
新しい製造ラインや設備を増設するとき、工事のスケジュールだけを優先して届出を後回しにしていませんか。
消防法・水質汚濁防止法・大気汚染防止法など、設備増設には複数の法令が同時にかかってきます。
届出を忘れたまま工事を進めると、行政指導はもちろん、計画の変更命令や罰則の対象にもなりえます。
この記事では、工場・製造業が設備を新増設する際に確認すべき法令と手続きを、法令別チェックリスト形式で整理します。
設備増設に届出・許可が必要な理由
各法令は所管省庁・行政機関が異なり、それぞれ独立した手続きが必要です。
どれか一つに対応しても、ほかの法律の届出は別に必要です。
手続きには大きく「許可」と「届出」の2種類があります。
「許可」は行政機関の許可が下りるまで着工できません。
「届出」は法定期限内に提出すれば着工できますが、期限を過ぎると違反になります。
どちらも「工事が終わってから」では遅いという点は共通しています。
法令別チェックリスト
自社の設備がどの法令に該当するかを確認するために、主要法令をまとめます。
「うちには関係ない」と判断する前に、対象施設・設備の定義を必ず確認してください。
消防法(危険物施設・少量危険物)
第4類(引火性液体)をはじめとする危険物を製造・貯蔵・取り扱う施設を設置する場合、消防法の手続きが必要です。
保管量が指定数量以上になる場合は、製造所等の設置許可(消防法第11条)が必要です。
許可は市町村長等が行い、許可が下りてから着工できます。
保管量が指定数量の1/5以上1倍未満の場合は、少量危険物の届出(消防法第9条の4)が必要です。
詳細な手続きと指定数量の計算方法は、以下の記事で解説しています。


危険物に該当しない設備でも、炉(据付面積2㎡以上)・乾燥設備・ボイラー・放電加工機・火花を生ずる設備などを設置する場合は、各市区町村の火災予防条例に基づく火を使用する設備等の設置届出が別途必要になるケースがあります。大阪市では設置の日の5日前までが期限です(大阪市火災予防条例第57条・同施行規則第6条)。

水質汚濁防止法(特定施設)
排水が発生する設備を設置する場合、水質汚濁防止法(水濁法)の対象になる可能性があります。
対象は「汚水・廃液を排出する特定施設」(水濁法第2条第2項)で、化学工業・食品工業・金属製品製造業など幅広い業種が含まれます。
特定施設を設置しようとするときは、都道府県知事への届出が必要です(水濁法第5条)。届出が受理された日から60日を経過した後でなければ設置できないため(第9条)、実務上は着工の61日以上前に届け出ます。

下水道法(特定施設)
排水を公共下水道に流す工場では、下水道法の特定施設の届出が必要です(下水道法第12条の3)。特定施設の範囲は水濁法と同じで、提出先は都道府県ではなく公共下水道を管理する市町村です。受理から60日を経過した後でなければ設置できない点も水濁法と同じです(第12条の6)。有害物質を使う施設は、下水道に流していても水濁法の届出が別に要ります(水濁法第5条第3項)。

大気汚染防止法(ばい煙発生施設・VOC排出施設)
燃焼炉・反応炉・乾燥炉などのばい煙発生施設、または塗装設備などのVOC(揮発性有機化合物)排出施設を設置する場合が対象です。
ばい煙発生施設等を設置しようとするときは、都道府県知事への届出が必要です(大気汚染防止法第6条。VOC排出施設は第17条の5)。こちらも受理から60日を経過した後でなければ設置できません(第10条・第17条の9)。

高圧ガス保安法
コンプレッサーや冷凍設備など、高圧ガスを製造・貯蔵する設備が対象です。
処理能力に応じて「許可」か「届出」かに分かれます。
一定規模以上の高圧ガス製造は都道府県知事の許可が必要(高圧ガス保安法第5条)で、許可取得後に着工できます。
規模が小さいケースは第二種製造者として、事業開始の日の20日前までに届け出ます(高圧ガス保安法第5条第2項)。一定量以上の貯蔵所も、許可または届出の対象です。

騒音規制法・振動規制法
都市計画区域等の指定地域内に、コンプレッサー・粉砕機・プレス機など「特定施設」を設置する場合が対象です。
市区町村長へ工事着工の30日前までに届出が必要です(騒音規制法第6条・振動規制法第6条)。
対象の施設は、騒音規制法・振動規制法の施行令で機械の種類と規模ごとに定められています。

労働安全衛生法(特定機械等)
厚生労働省令で定める機械等(一定の化学設備・局所排気装置・ボイラーなど)を設置・移転・主要構造部分の変更をする場合、所轄の労働基準監督署長へ工事開始の30日前までに計画を届け出る必要があります(労働安全衛生法第88条第1項)。
計画届に加え、設置後の検査(落成検査等)が必要なケースもあります。
新しい化学物質を製造・取り扱う設備を増設する場合は、化審法・安衛法の届出も別途必要になります。
化審法・安衛法(新規化学物質を扱う場合)
既存の化学物質を扱う設備の増設のみなら対象外ですが、新たな化学物質を製造・輸入する場合は、製造・輸入開始前に届出が必要です。
化審法(化学物質審査規制法)では新規化学物質の事前届出(第3条)、安衛法(労働安全衛生法)では有害性調査・届出(第57条の4)が求められます。
詳しくは以下の記事を参照してください。


工場立地法(大規模増設)
敷地面積9,000㎡以上または建築面積の合計3,000㎡以上の特定工場が対象です(工場立地法施行令第2条)。
生産施設の面積などを変更(増設)する場合は市町村長への届出が必要で、届出の受理から90日を経過した後でなければ変更できません(工場立地法第8条・第11条。市町村長は期間を短縮できます)。
緑地・環境施設の整備率要件も伴うため、設計段階から確認が必要です。
届出期限の早見表
工事日程から逆算して、いつまでに何を届け出るかを一覧で確認できます。
| 法令 | 手続き種別 | 提出先 | 着工前の期限 |
|---|---|---|---|
| 消防法(危険物製造所等) | 設置許可申請 | 市町村長等 | 許可取得後に着工 |
| 消防法(少量危険物) | 貯蔵・取扱届出 | 消防署長(大阪市の場合) | 貯蔵・取扱開始前(大阪市は7日前まで) |
| 水質汚濁防止法 | 特定施設設置届出 | 都道府県知事 | 受理から60日経過後に着工 |
| 下水道法 | 特定施設設置届出 | 市町村(公共下水道の管理者) | 受理から60日経過後に着工 |
| 大気汚染防止法 | ばい煙発生施設届出 | 都道府県知事 | 受理から60日経過後に着工 |
| 高圧ガス保安法(許可) | 製造許可申請 | 都道府県知事 | 許可取得後に着工 |
| 高圧ガス保安法(届出) | 第二種製造者の届出 | 都道府県知事 | 事業開始の20日前まで |
| 騒音規制法 | 特定施設設置届出 | 市区町村長 | 着工30日前まで |
| 振動規制法 | 特定施設設置届出 | 市区町村長 | 着工30日前まで |
| 労働安全衛生法 | 機械等の設置計画届(第88条) | 労働基準監督署長 | 工事開始30日前まで |
| 工場立地法 | 新設・変更の届出 | 市町村長 | 受理から90日経過後に着工 |
※ 届出期限は法令・施行規則に定められています。自社の設備と照合の上、必ず一次情報でご確認ください。
期限のある届出を早い順に並べると、次のとおりです。
- 着工の90日前まで(受理から90日は着工できない)
- 工場立地法の新設・変更の届出
- 着工の61日以上前
- 水質汚濁防止法・大気汚染防止法・下水道法の届出
- 受理から60日を経過するまで設置できないため
- 着工の30日前まで
- 騒音規制法・振動規制法の特定施設設置届出、労働安全衛生法第88条の計画届
- 事業開始の20日前まで
- 高圧ガス保安法の第二種製造者の届出
- 貯蔵・取扱開始の7日前まで
- 少量危険物の届出(大阪市)
- 設置予定日の5日前まで
- 火を使用する設備等の設置届出(大阪市)
危険物製造所等の設置許可と高圧ガスの製造許可は、日数の期限ではなく、許可を受けてから着工します。
見落としやすいポイント
新設だけでなく「変更」でも届出・許可が必要になる場面があります。
変更届が必要なケース
既存の特定施設の構造・規模・使用方法を変更する場合も、設置届出と同様に事前届出が必要です。
水質汚濁防止法第7条・大気汚染防止法第8条が変更の届出を定めており、設置のときと同じく、受理から60日を経過するまでは変更できません(水質汚濁防止法第9条・大気汚染防止法第10条)。
「既存の施設を少し改造するだけ」と判断して届出を省略すると違反になります。
複数の法令が重なる典型例
有機溶剤を使う塗装ラインを増設する場合、以下の法令が同時にかかってきます。
- 大気汚染防止法(VOC排出施設)
- 水質汚濁防止法(廃液処理施設)
- 消防法(第4類危険物・引火性液体)
- 労働安全衛生法(有機溶剤取扱設備)
一つの設備であっても、申請先・期限・書類がそれぞれ異なります。
こうした複合案件は社内の各担当が抜け漏れなく対応できているか確認するのに手間がかかります。
行政書士に一括して相談することで、漏れのない手続き設計が可能です。
よくある質問
設備を1台追加するだけでも届出は必要ですか?
追加する設備の種類・規模次第です。法令ごとに「特定施設に該当するか」「指定数量・しきい値を超えるか」という判定基準があります。1台でも対象になる場合は届出が必要です。「小さい追加だから大丈夫」という判断は危険です。
建築確認申請と環境法令の届出は別に進める必要がありますか?
別々の手続きです。建築確認は建築士が担当し、消防法・水濁法・大気法などは行政書士が担当します。スケジュールがバラバラになると工事日程が後ろ倒しになるため、設計段階から双方が連携して同時並行で進めることが重要です。
大阪府内の工場ですが、届出先はどこになりますか?
法令によって異なります。水濁法・大気法は大阪府(吹田市・豊中市などの中核市等に所在する場合は市が窓口になることがあります)、消防法は所在地の消防署、高圧ガス保安法は高槻市を除き各市町村の消防本部等(大阪市内は大阪市消防局。大阪府「大阪府内の市町村における保安3法の申請・届出窓口」)、労働安全衛生法は管轄の労働基準監督署です。所在地によって窓口が異なることがあるため、事前確認が必要です。
当事務所の強み:製造現場を知る行政書士による支援
設備の増設に伴う届出・許可は、当事務所が関わる法令の洗い出しから申請書類の作成・提出までお引き受けします。
- 化学メーカー研究職の経験: どの設備がどの法令に該当するかを、現場感をもって判断します。書類の文面だけでなく、設備の実態から法的リスクを読み解きます。
- 複数法令のワンストップ対応: 消防法・水濁法・大気法・高圧ガス・化審法など、設備増設に関わる届出をまとめて対応します。申請先ごとに別の専門家を探す手間がかかりません。労働安全衛生法の計画の届出・新規化学物質の届出は、届出書の作成が社会保険労務士の業務のため、要否と期限のご案内までとなります。
- 相談料無料・オンライン対応: 設備計画の初期段階から「何が必要か」の整理だけでもご相談いただけます。
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

設備増設は、許認可の準備から着工までに予期せぬ時間がかかるケースが想定されます。スムーズな稼働を実現するためにも、ぜひ計画の初期段階からお気軽にご相談ください。

