産廃委託契約書の記載事項チェックリスト|委託基準と罰則
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
産業廃棄物の処理を外部業者に委託している事業者の中には、「許可業者と契約しているから問題ない」とは限りません。廃棄物処理法が定める「委託基準」は、許可業者への委託だけでは満たせません。契約書の記載内容にも厳格な要件があります。
収集運搬委託契約書・処分委託契約書のどちらかで一項目でも記載が漏れていれば、委託基準違反と判断されるリスクがあります。罰則は最大で3年以下の拘禁刑です。排出事業者が最終処分まで処理責任を負う以上、契約書の整備はコンプライアンスの起点となります。
元化学メーカー研究員として廃液・廃油の委託処理を担当してきた経験から言うと、記載漏れが多いのは「性状・荷姿」「情報伝達方法」「未処理廃棄物の取扱い」の3項目です。法定事項を網羅したチェックリストを使って、自社の契約書を確認してください。
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廃棄物処理法の委託基準
排出事業者が産廃処理を外部に委託する際に守るべき法定ルールを「委託基準」といいます。根拠は廃棄物処理法第12条第5・6項と施行令第6条の2です。
委託基準の骨格は次の3点です。
- 許可業者にのみ委託する:運搬は産廃収集運搬業許可業者へ、処分は産廃処分業許可業者へ、それぞれ直接委託します。許可証に記載された事業の範囲に、委託しようとする廃棄物の種類が含まれているかの確認も必要です。
- 書面契約を締結する:口頭・メールのみの合意は不可です。法定事項を盛り込んだ書面(または電子契約)で締結しなければなりません。
- 契約書を5年間保存する:契約終了の日から5年間、書面と添付書類を保存する義務があります(施行規則第8条の4の3)。

収集運搬委託契約書の記載事項チェックリスト
収集運搬委託契約書に盛り込むべき法定事項は、施行令第6条の2第4号と施行規則第8条の4の2に規定されています。以下のすべての項目が揃っているかを一項目ずつ確認してください。
施行令が定める基本事項
施行令第6条の2第4号が直接定める記載事項です。
- 委託する産業廃棄物の種類および数量
- 運搬の最終目的地の所在地
施行規則が追加する記載事項
施行規則第8条の4の2が追加する事項です。収集運搬・処分の両契約書に共通する項目が大半です。
- 委託契約の有効期間
- 委託者が受託者に支払う料金
- 受託者の事業の範囲(許可の内容)
- 積替え・保管を行う場合:その場所の所在地・保管できる廃棄物の種類・積替えのための保管上限(安定型産業廃棄物なら他の廃棄物との混合の許否等も)
- 廃棄物の性状・荷姿(腐敗・揮発等の性状変化、他の廃棄物との混合時の支障、その他取り扱う際の注意事項を含む)
- 石綿含有産廃・水銀使用製品廃棄物・水銀含有ばいじん等が含まれる場合:その旨
- PRTR対象物質が含まれる場合:物質名と量または割合(※対象事業者のみ)
- 有効期間中に廃棄物の性状情報が変更された場合の情報伝達方法
- 受託業務終了時の受託者から委託者への報告に関する事項
- 契約解除時の未処理廃棄物の取扱いに関する事項
許可証の写しの添付義務
施行規則第8条の4の規定により、収集運搬委託契約書には受託者の産廃収集運搬業許可証の写しを添付しなければなりません。許可証は更新されるたびに最新版に差し替えることが必要です。
処分委託契約書の記載事項チェックリスト
処分委託契約書では、収集運搬委託契約書の共通事項に加えて、処分場所・処分方法・施設の処理能力の記載が必須です。中間処理を委託する場合は、さらにその先の最終処分に関する情報も必要です。
施行令が定める基本事項
- 委託する産業廃棄物の種類および数量
- 処分場所の所在地・処分方法・施設の処理能力
- 中間処理を委託する場合:最終処分の場所・方法・施設の処理能力
中間処理委託では「最終処分の場所・方法・施設の処理能力」まで記載しなければならない点が見落とされやすいです。最終処分業者の情報を委託先(中間処理業者)から事前に入手しておく必要があります。
施行規則が追加する記載事項
積替え・保管に関する項目を除き、収集運搬委託契約書と同じ事項(有効期間・料金・受託者の事業の範囲・性状荷姿・石綿・水銀・PRTR・情報伝達方法・報告・未処理廃棄物の取扱い)がすべて必要です。
許可証の写しの添付義務
処分委託契約書には受託者の産廃処分業許可証の写しを添付します。中間処理業者と最終処分業者をそれぞれ別々に委託する場合は、各業者の許可証写しが必要です。
二者間直接契約の原則と再委託禁止
産廃の処理委託では、排出事業者が収集運搬業者・処分業者のそれぞれと直接かつ別々に契約を締結することが原則です(二者間直接契約の原則)。
収集運搬業者に「処分まで一括でお願い」とする「丸投げ」は、処分業の許可を持たない者に処分を委託することになり、排出事業者自身の委託基準違反(法第12条第5項・第6項)になります。受託した収集運搬業者が処分業者に回せば、法第14条第16項が禁止する再委託にも当たります。「収集運搬業者が処分業者に再委託する」という流れになっていないか、契約の構造を確認することが重要です。
基準に違反する委託によって不適正な処理が行われ生活環境に支障が生じた場合、委託した排出事業者も支障の除去等の措置命令(法第19条の5第1項第2号)の対象になります。「業者が全部やってくれると言ったから」は免責にはなりません。

委託基準違反の罰則
委託基準違反の罰則は違反の種類によって異なります。法人には両罰規定(第32条)が適用され、行為者とは別に法人も同額の罰金の対象となります。
| 違反の内容 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 無許可業者への委託(法第12条第5項違反) | 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金 | 法第25条第1項第6号 |
| 契約書の記載漏れ・添付書類の不備(法第12条第6項違反) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 法第26条第1号 |
「記載漏れに気づかなかった」「許可証の確認を怠った」という場合でも、委託基準に合わない委託であることに変わりはありません。契約締結前にチェックリストで確認する運用が求められます。
2026年1月改正 PRTR記載義務の追加
廃棄物処理法施行規則第8条の4の2の改正が2026年1月1日に施行され、PRTR対象物質(第一種指定化学物質等)が含まれる廃棄物を委託する場合の記載義務が追加されました。
対象となるのは、化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に基づく第一種指定化学物質等取扱事業者に該当する排出事業者です。排出量・移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質が廃棄物に含まれ、または付着している場合、委託契約書に次の事項を記載しなければなりません。
- PRTR対象物質の物質名
- 量または割合(廃棄物全体に占める含有量)
施行の際にすでに締結されていた契約は、更新までの間は従前の例によります(改正省令附則第2条)。次回の更新時にこの改正への対応が必要です。自社がPRTR対象事業者に該当するかどうかは、化管法の業種・従業員数・取扱量の3要件で判定できます。

特別管理産廃の委託基準と事前通知義務
特別管理産業廃棄物を委託する場合は、通常の委託基準(施行令第6条の2)に加えて、施行令第6条の6が定める追加要件があります。
最大の違いは事前通知義務です。委託前に廃棄物の種類・数量・性状等を文書で受託者に通知しなければなりません(施行令第6条の6第1号)。そのほかは通常の委託基準(施行令第6条の2各号)の例によります(同条第2号)。
また、受託者は特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可を持つ業者でなければなりません。通常の産廃許可では対応できないため、許可証の種別確認が欠かせません。
引火点・pH・感染性など特管産廃の基準値に関する詳細は、以下の記事で解説しています。

委託契約書の作成・更新フロー
委託契約書を適正に整備するための実務フローを4ステップで整理します。
ステップ1:委託先の許可内容の確認
委託しようとする廃棄物の種類・収集運搬区域・処分方法が、受託者の許可証の「事業の範囲」に含まれているかを確認します。許可証の写しを入手し、記載内容と実際の処理内容が一致しているかをチェックします。
ステップ2:廃棄物の情報整理
廃棄物の種類・荷姿・性状(引火点・腐食性・感染性など)、石綿・PRTR物質の含有状況を整理します。SDS(安全データシート)がある場合は、SDS情報を元に廃棄物の性状情報を記載します。
ステップ3:契約書の作成と締結
法定の必須記載事項がすべて含まれているかをチェックリストで確認しながら契約書を作成します。許可証の写しを添付し、両者が署名・押印の上で締結します。
ステップ4:更新管理
契約終了の日から5年間、契約書と添付書類を保存します。許可証が更新された際は新しい写しを速やかに入手します。廃棄物の性状情報が変化した場合は、情報伝達方法の規定に従って受託者に通知します。
よくある質問
複数の廃棄物の種類を一つの契約書にまとめることはできますか?
一つの契約書にまとめること自体は可能です。ただし、種類・数量・性状情報は廃棄物ごとに区別して記載する必要があります。それぞれの廃棄物について法定事項が漏れなく盛り込まれているかを確認してください。
2026年1月改正のPRTR記載義務は、既存の契約書にも適用されますか?
2026年1月1日時点で締結済みの契約は、更新までの間は従前の例によります。対象事業者に該当する場合は、次回の更新時に改訂します。2026年1月以降に新たに締結する契約書には、記載義務が適用されます。受託者の許可証が更新されている場合は、あわせて最新の写しへの差し替えも行います。
収集運搬業者に「処分まで全部お任せ」で一社と契約することはできますか?
できません。処分業の許可を持たない収集運搬業者に処分まで委託すると、排出事業者の委託基準違反(法第12条第5項)になります。また法第14条第16項は、収集運搬業者が受託した処理を他人に再委託することを原則として禁止しています。収集運搬業者との契約と処分業者との契約を、排出事業者がそれぞれ別々に締結します。
特別管理産廃を委託する場合、通常の産廃委託契約書と何が違いますか?
最大の違いは事前通知義務です。委託前に廃棄物の種類・数量・性状・荷姿等を文書で受託者に通知しなければなりません。また、受託者は特別管理産廃専用の許可(特別管理産廃収集運搬業・処分業)を持つ業者でなければならない点も異なります。
許可証の更新確認はいつ行えばよいですか?
産廃収集運搬業・処分業の許可有効期間は5年です(優良産廃処理業者は7年)。委託先の許可証の有効期限を台帳で管理し、更新後は速やかに新しい写しを入手することをお勧めします。委託先の許可が実際に切れていれば、許可のない者への委託になります(法第12条第5項)。

当事務所の強み:委託基準対応の実務サポート
産廃の委託契約書は、当事務所が記載事項の確認から契約書の作成までお引き受けします。
産廃処理委託契約書の整備は、記載事項の網羅性・許可証との整合性・廃棄物の性状情報の正確な記載という3点が重なる、実務的に難易度の高い作業です。
元化学メーカー研究員として廃液・廃油の委託処理を担当していた経験から、引火点・腐食性・揮発性の判定や、PRTR対象物質の含有状況の確認を、現場目線で法的要件へ落とし込む作業を得意としています。
- 委託基準の充足状況の確認(既存契約書のチェック)
- 廃棄物の種類判定・性状情報の整理支援
- 法定記載事項を網羅した契約書の作成支援
- 許可証の確認・更新管理の助言
- マニフェスト制度・年次報告との一体的サポート
ご依頼いただければ、今の委託契約書の記載漏れと2026年1月改正への対応状況を一覧でお返しします。書類が揃っていない状態でも対応できますので、まずご連絡ください。
