【2026年施行】産廃処理委託契約書の法改正対応|PRTR物質の記載義務とWDSの重要性
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
自社から排出される産業廃棄物の「処理委託契約書」、昔のひな形をそのまま使い回していませんか?
もし、廃液や汚泥の処理を委託する際、「とりあえず元の薬品のSDSだけを添付して丸投げしている」としたら、委託契約書に記載が必要な廃棄物の情報(性状・取り扱う際の注意事項など)が不足している可能性があります。
本記事では、2026年施行の最新法改正と、「WDS(廃棄物データシート)」の必要性について解説します。処理委託契約書にはPRTR対象物質に関する新たな記載事項が追加されているため、契約書の様式や運用が最新の法改正に対応しているか早急な確認が必要です。
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産業廃棄物の「処理委託契約書」とは?
産業廃棄物の処理を他人に委託する際に結ぶ「処理委託契約書」は、一般的な契約書とは異なり、廃棄物処理法及び施行令、施行規則によって厳格なルールが定められています。
- 口約束は絶対NG(書面契約の義務)
- 必ず事前に書面(または電子契約)で締結しなければなりません。
- 二者間直接契約の絶対原則
- 「収集運搬業者」と「処分業者」のそれぞれと、排出事業者が直接契約を結ぶ必要があります。間に仲介業者を挟んだり、一括して一方に丸投げすることは原則として禁止されています(再委託の禁止)。
- 法定記載事項の厳守
- 廃棄物の種類、数量、業者の許可証添付など、法律で決められた項目を一つでも欠かすと、その契約は違法状態となり得ます。
- 許可証の添付
- 委託契約書には、受託者が適正な許可等を持っていることを証明するため、業の許可証の写し等を添付しなければなりません。
- 5年間の保存義務
- 締結した委託契約書および添付書類は、契約の終了の日から5年間保存する義務があります。
廃棄物処理法改正:PRTR対象物質の伝達義務
令和8年(2026年)1月1日施行の廃棄物処理法施行規則の改正により、委託する産廃に第一種指定化学物質(PRTR対象物質)が含まれる場合、委託契約書にその旨と「名称」「量又は割合」を記載することが義務化されました(施行規則第8条の4の2第6号ヘ)。
この義務化は、排出事業者がPRTR制度で把握している有害物質の情報を処理業者へ確実に共有することで、廃棄物処理工程における化学物質の混入による火災・爆発・有毒ガス発生や、重大な水質汚濁事故などを未然に防ぐことを目的としています。
既存の処理委託契約書も、更新のタイミングで改訂が必須となります。
義務の対象となる事業者
化管法(PRTR法)に基づく「第一種指定化学物質等取扱事業者」が対象となります。ただし、企業全体ではなく事業所ごとに判断され、以下の2つの条件を両方満たす事業所において情報伝達義務が生じます。
- 化管法に定める第一種指定化学物質等取扱事業者であること。
- 化管法において排出量・移動量を届け出ている第一種指定化学物質が、排出する廃棄物に含有または付着していること。

伝達対象となる化学物質と濃度の基準
- 対象物質
- PRTR制度で届出の対象となっている「第一種指定化学物質」。
- 対象となる濃度
- 環境省の「有害廃棄物の情報伝達省令改正に関するFAQ」は、廃棄物に含まれる対象物質の濃度が重量で1%以上(特定第一種指定化学物質の場合は0.1%以上)のものが、本改正による情報伝達義務の対象としています。
- 濃度がこの閾値未満の場合は本改正に基づく情報伝達義務はかかりませんが、処理工程に影響を及ぼすなど適正処理に必要な情報である場合は、引き続き伝達が必要です。
伝達すべき内容と方法
産業廃棄物の処理を委託する際、「委託契約書」に以下の情報を記載することが法的に義務付けられます。
- 第一種指定化学物質が含まれ、または付着している旨
- その物質の名称
- その物質の量または割合
量または割合の算出や記載については柔軟な対応が認められており、実測によるほか、原材料や資材等に含まれる含有率や文献値から算出することも可能です。また、割合の値に幅がある場合は平均値や中央値で記載したり、幅を持たせて(例:10%~15%など)記載することも認められています。製造工程等に変更がないにも関わらず、ロットごとに毎回測定して契約書を頻繁に変更することまでは求められていません。
施行スケジュールと既存契約の取り扱い(経過措置)
施行日は令和8年(2026年)1月1日からですが、経過措置として、施行日時点で既に締結されている契約については、施行日以降の「最初の契約更新時」から新たな記載基準が適用することとなっています。毎年自動更新されるような契約の場合も、自動更新は附則の「契約の更新」に当たると考えられるため、施行日以降の最初の更新の時に、覚書などで対象物質の情報を契約に加えておくのが確実と考えられます。
- 契約の締結施行日より前
- 施行日2026年1月1日
- 最初の契約更新施行日以降
- その後
自動更新の契約も、施行日以降の最初の更新の時に覚書などで加えておくのが確実と考えられます。
WDS(廃棄物データシート)とは?なぜ必要なのか
上記の法改正に対応し、環境省が推奨する情報伝達ツールである「WDS(廃棄物データシート)」の様式もアップデートされました。なお、新しい様式の使用は必須ではなく、従来のデータシートが必要な情報項目を満たしていれば、そのまま使い続けても差し支えありません(環境省FAQ)。
廃棄物情報の提供に関するガイドライン | 環境再生・資源循環 | 環境省
第3版のガイドライン・様式と、旧版との新旧対照表は、環境省のページで公開されています。ガイドラインには、排出事業者と処理業者が双方向で情報を確かめ合う例も示されています(下図)。

双方向コミュニケーションの例:WDSガイドライン(第3版)より抜粋
SDSの交付が義務付けられているのはあくまで製品として販売・提供するときであり、廃棄時のSDS交付義務は規定されていません。廃棄時には廃棄物処理法に基づく情報提供の手段としてWDSが推奨されます。
- SDS:「新品の化学品」を安全に取り扱うための情報
- WDS:複数の薬品が混ざり、反応し、劣化した「混合物としてのゴミ」の情報
使用期限切れなどで、単品の薬品などをそのまま廃棄するような場合には、SDS自体が処理業者への有効な情報伝達手段となり得ます。一方、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリなどの廃棄物の多くは、製造工程で複数の薬品が混ざったり、不純物が混入した「混合物」として排出されます。このような場合、使用したすべての薬品のSDSをそのまま処理業者へ渡すと、情報が膨大になりすぎて適正処理に必要な重要情報の共有が困難になるため、SDSの情報を要約・整理してWDSを作成するのが望ましいです。
義務を怠った際の罰則(委託基準違反)
廃棄物の適正な処理のために必要な情報(第一種指定化学物質の名称や量などを含みます)の伝達義務を怠り、十分な情報提供を行わずに処理を委託した場合、「委託基準違反」として以下の罰則や行政処分の対象となる可能性があります。
- 刑事罰
- 委託基準違反として、「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科」という刑事罰が科される可能性があります(廃棄物処理法第26条第1号)。今回の省令改正で罰則自体が強化されたわけではありません。
- 措置命令
- 情報伝達義務を怠るなど委託基準に違反した委託を行い、その結果として処理業者が不適正な処分を行い、生活環境の保全上支障が生じた(または生じるおそれがある)場合には、不適正処理を行った業者だけでなく、委託した排出事業者自身も措置命令の対象になりえます(法第19条の5第1項第2号)。 措置命令を受けると、自らの責任と費用で支障の除去等の措置(不法投棄された廃棄物の撤去など)を行わなければならなくなります。

よくある質問
PRTR対象物質の記載義務について、よくある質問をまとめました。
マニフェストにもPRTR対象物質の名称や量を書く必要がありますか?
今回の改正で第一種指定化学物質の名称と量または割合の記載が加わったのは、委託契約書の記載事項です(施行規則第8条の4の2第6号ヘ)。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の記載事項を定めた施行規則第8条の21には、同じ項目は加わっていません。対象物質の情報は、委託契約書やWDSで処理業者に伝えることになります。

契約期間の途中で原料や工程が変わり、廃棄物の成分が変わったらどうすればよいですか?
委託契約書には、契約の有効期間中に廃棄物の情報が変わったときに、その情報をどう伝えるかを定めておくことになっています(施行規則第8条の4の2第7号)。PRTR対象物質の名称や量・割合もこの情報に含まれるため、成分が変わったときは契約書で定めた方法に従って処理業者に伝えます。古いひな形のままで伝え方の定めがあいまいな場合は、次の更新を待たずに見直すことをおすすめします。条項の見直しは当事務所でもお手伝いできます。
従業員が20人以下の会社でも、契約書にPRTR対象物質を書く必要がありますか?
記載義務がかかるのは、化管法の届出の対象になる事業者です。対象業種を営み、事業者全体で常時使用する従業員が21人以上で、いずれかの第一種指定化学物質の年間取扱量が1トン以上(特定第一種指定化学物質は0.5トン以上)の事業所をもつ事業者などが当たります(化管法施行令第3条・第4条、PRTR届出の手引き2ページ)。これに当たらなければこの記載義務はかかりませんが、廃棄物の性状や荷姿、他の廃棄物と混ざったときの支障、取り扱う際の注意事項などは、もともと委託契約書に書く事項です(施行規則第8条の4の2第6号イ〜ト)。

当事務所の強み:SDSを読み解いてWDSと委託契約書を作成
WDSと産廃の委託契約書は、当事務所がSDSの読み解きからWDSの作成・確認、委託契約書の作成までお引き受けします。
WDSを作成するには、SDSの「組成・成分情報」や「安定性及び反応性」を正確に読み解く化学的知見が欠かせません。複数の薬品が混ざった廃棄物では、どの成分をどう記載するかの判断に迷う場面が多くあります。
当事務所は、元化学メーカー研究職というバックグラウンドを活かして、「法律」と「化学」の両面から妥当な書類を作成できることを強みとしています。
- 貴社の廃棄物や複数のSDSを読み解き、化学的根拠に基づいた正確な「WDS作成・チェック」を支援します。
- 2026年の法改正(PRTR物質の記載義務等)に対応した「適法な産廃委託契約書の作成・更新」を支援します。
- 契約だけでなく、毎年のマニフェスト報告や化管法(PRTR)届出まで、環境コンプライアンスの実務を丸ごとサポートします。
「今の産廃契約書が最新の法律に対応しているか不安だ」「WDSの書き方がわからない」とお悩みの企業様は、取り返しのつかない事故や法令違反が起きる前に、ぜひ当事務所にご相談ください。
