PRTR届出 対象事業者の判定ガイド|業種・従業員数・取扱量の3要件

PRTR届出 対象事業者の判定ガイド|業種・従業員数・取扱量の3要件

PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)は、単なる行政上の「義務」ではありません。化管法は、排出量の把握などの措置を通じて、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進することを目的としています(法第1条)。

「自社が届出対象に該当するか」の判定基準と、届出を完了させるための具体的な手順を解説します。

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化管法の全体像

PRTR制度は、「​化学物質排出把握管理促進法(化管法)」という法律に基づいています。この法律の大きな目的は、化学物質の管理における「透明性」を高め、事業者による「自主的な管理」を促すことにあります。

事業者が自ら排出量を「数値」として把握し、使用量の削減や代替物質への転換といった自主的な改善につなげることが、制度のねらいです。

化管法の2つの柱

化管法は、以下の2つの制度を両輪として運用されています。

  • PRTR制度(排出量等の把握・届出)
    • 事業者が、化学物質を環境へどれだけ排出し、廃棄物としてどれだけ事業所の外へ運び出したかを自ら把握し、国に届け出る仕組みです。
  • SDS制度(情報の提供)
    • 化学物質を譲渡・提供する際に、その物質の性質や取り扱い方法を記した「安全データシート(SDS)」を相手先に提供し、情報を共有する仕組みです。

自社内ではPRTRで「環境への排出量」を正確に把握・報告し、他社へはSDSで「危険性の情報」を正しく伝えることが、事業者に求められる化管法対応の基本となります。

他法令(化審法・安衛法)との違い

化学物質管理には化管法のほかにも複数の法律が関わります。これらは立法目的が異なるため、規制対象となるフェーズや事業者の役割も分かれています。

法律名目的規定取扱フェーズ対象者
化審法事前審査 製造等規制製造・輸入製造・輸入事業者
安衛法労災防止 安全確保使用・保管取扱事業者
化管法排出量把握 情報提供排出・譲渡排出・譲渡元事業者(BtoB取引)
  • 化審法:製造・輸入前の「予防」
    • 国内に存在しない物質が環境や人の健康に悪影響を与えないか、事前にチェックする関所の役割です。
  • 安衛法:作業現場の「安全管理」
    • 主に職場の労働者を守り、労働災害を防止することが目的です。保管している容器へのラベル表示、保管場所へのSDSの備え付け、取り扱い作業時のリスクアセスメントなど、化学物質を使用・保管する事業者がその責務を担います。
  • 化管法:排出・譲渡後の「事後管理」
    • すでに流通している物質の環境への排出量把握や、他社への情報提供(SDS)を目的とした制度です。排出や譲渡を行う事業者が、社会や取引先に対して情報を公開することで、事業者自身の自主的な管理改善を促します。

1つの物質が複数の法律の対象になることがあります。例えば、ある溶剤を使用する場合、「職場内での換気や被曝防止」は安衛法に従いますが、その溶剤が「大気中へ蒸発した量」については化管法(PRTR)に基づいた管理と届出が必要になります。

安衛法と化管法は、どちらもSDSの提供を義務付けています。自社でSDSを作成する際は、両方の法律の対象物質と記載事項を確かめる必要があります。

PRTR届出の対象判定と手順

SDSによる情報伝達と並んで、化管法実務のもう一つの要となるのが「PRTR制度に基づく届出」です。自社の事業所が届出義務を負うかどうかを見極めるための判定基準と、実際の手続きのステップを順を追って解説します。

参考:​PRTR届出の手引き(METI/経済産業省)

届出が必要な条件

届出対象となるのは、3つの要件をすべて満たしている場合です。1つでも該当しない要件がある場合は、届出の必要はありません。

  • 対象業種:政令で定める24業種に属する事業を営んでいるか
    • 製造業、電気業、ガス業、燃料小売業、洗濯業、自動車整備業、産業廃棄物処分業、医療業、自然科学研究所などです(化管法施行令第3条)。
  • 従業員数:常時使用する従業員の数が21人以上か
    • 従業員数は事業者(会社)全体で数えます(施行令第4条第2号)。ただし、届出は事業所(工場・営業所等)ごとに行います。
  • 年間取扱量・施設:次のいずれかに当たる事業所があるか(施行令第4条第1号)
    • 第一種指定化学物質(届出の対象として施行令の別表第一が定める515物質)の年間取扱量が1トン以上
    • 特定第一種指定化学物質(発がん性など有害性が特に高い物質)の年間取扱量が0.5トン以上
    • 鉱山保安法の施設、下水道終末処理施設、一般廃棄物・産業廃棄物処理施設(廃棄物処理業の場合)、ダイオキシン類対策特別措置法の特定施設のいずれかを設置している

※年間取扱量には、製造・使用などで取り扱う量のほか、第一種指定化学物質を1%以上(特定第一種は0.1%以上)含む製品に含まれる量も入ります(施行令第4条・第5条)。 ただし、固体のまま粉状・粒状にならない製品、密封された状態で取り扱う製品、主として一般消費者向けの製品、再生資源は除かれます。

年間取扱量の要件(施行令第4条第1号)
00.5トン1トン
第一種当たらない当たる1トン以上
特定第一種当たらない当たる0.5トン以上

取扱量には、第一種を1%以上(特定第一種は0.1%以上)含む製品に含まれる量も入ります。届出が必要になるのは、業種と従業員数の要件もあわせて満たすときです。

例えば、対象の化学物質を年間1トン以上取り扱っていても、会社全体の常時使用する従業員数が20人以下の場合は、2を満たさないため届出対象外です。

従業員数が100人いて、対象化学物質を年間1トン以上取り扱っているが、営んでいる業種が政令で定める24業種に該当しない場合は、1を満たさないので届出の必要はありません。

届出スケジュール

届出は、毎年以下のステップで進めます。

​PRTR届出の流れ
  1. 把握:4月1日〜翌3月31日までの1年間の排出量・移動量を記録・集計。
  2. 算出:ガイドラインに基づき、排出量を計算(後述)。
  3. 作成:届出システム等を用いて届出書を作成。
  4. 提出:毎年度6月30日までに、前年度分を届け出ます(化管法施行規則第5条。6月30日が土日の場合は次の月曜日まで=PRTR届出の手引き)。届出は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、事業を所管する大臣(主務大臣)に提出します(法第5条第3項)。

届出の方法は、書面(様式第一)、CD-Rなどの記録媒体(条文の言葉では磁気ディスク。施行規則第13条)、​PRTR届出システム(NITE)による電子届出(施行規則第11条)の3つです。書面と記録媒体は、事業所のある都道府県等の窓口に持参か郵送で提出します(PRTR届出の手引き)。

対象と確認できた事業者向けに、物質の特定から算出・電子提出までの実務手順を別記事で解説しています。

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排出量の算出方法

排出量の算出方法は、化管法施行規則第2条が5つ定めています。事業所の実態に合わせて、的確に算出できる方法を選びます。

物質収支による方法

対象物質の「年間取扱量」や「製品として事業所外へ搬出した量」「廃棄物として処理した量」などの全体量が、帳簿や管理データから正確に把握できている場合、排出量は以下のように算出できます。

(購入量)−(製品含有量)−(廃棄物量)= 排出量

入ってきた量と出ていった量の差引きで排出量を求めるため、全体の物質の動きが明確な工程に適しています。

実測による方法

排ガス、排水、または廃棄物中に含まれる対象物質の濃度を実際に測定している(または測定データがある)場合に選択可能です。実際の測定値と、年間の排ガス量・排水量・廃棄物量を掛け合わせて算出するため、実態に即した精度の高い結果が得られます。

排出係数による方法

国や業界団体などがあらかじめ定めた「排出係数」が存在し、自社の工程や設備がその係数の前提条件に合致している場合、係数を使って排出量の算出が可能です。取扱量などに係数を掛けるだけで算出できるため、実測が難しい場合や、標準的な工程において簡便に算出したい場合に適しています。

物性値を用いた計算による方法

対象物質の蒸気圧や溶解度などの物理的・化学的性質(物性値)が分かっており、タンクからの揮発や水への溶解など、計算式(理論式)を適用できる設備や工程がある場合は、揮発性の高い物質の保管タンクからの大気排出量などを論理的に導き出すことが可能です。

その他の方法

上記4つのほか、事業所から環境に排出される量を的確に算出できると認められる方法も使えます(施行規則第2条第5号)。工程ごとに複数の方法を比べ、実態を最もよく反映する方法を選ぶことを推奨します。

対象物質の見直しに注意

第一種指定化学物質は、化管法施行令の別表第一に掲げられており、現在は515物質です。対象物質は政令の改正で見直されることがあります。以前は対象外だった物質が追加され、届出が必要になることもあるため、毎年度、最新の対象物質一覧で確かめてください。

制度の要件が理解できても、実際の算出工程、特に「混合物中の成分計算」などは専門性が高く、現場の大きな負担となります。

よくある質問

届出対象に該当するかどうか、自社で確認する方法はありますか?

3ステップで確認できます。①自社が対象業種に該当するか(施行令第3条の24業種。PRTR届出の手引きの業種コード表で確認)、②事業者全体の従業員数が21人以上か、③第一種指定化学物質の年間取扱量が1t以上(特定第一種は0.5t以上)かどうかを順に確認します。いずれか1つでも該当しない場合は届出義務がありません。

下請けで製品を製造しているだけでも届出が必要ですか?

製造業として対象業種に該当し、従業員数・取扱量の要件を満たす場合は、元請け・下請けを問わず届出義務があります。発注元から「届出不要」と言われても、法令上の義務は自社に課せられているため、独自に判定することが必要です。

算出方法は毎年同じものを使わなければなりませんか?

施行規則第2条は5つの方法を定めているだけで、毎年同じ方法を使うことまでは求めていません。工程の変更や測定データの有無に応じて、より的確に算出できる方法を選んでください。

期限の6月30日に間に合わない場合はどうなりますか?

災害その他やむを得ない事由で期限までの届出が難しいときは、主務大臣がその事由を勘案して定める期限までに届け出ることになります(施行規則第5条第1項ただし書)。

当事務所の強み:元化学メーカー研究員による専門的サポート

PRTR届出は、当事務所が対象の判定から排出量の算出、届出書の作成までお引き受けします。

PRTR届出の最大の壁は、現場プロセスに踏み込んだ「排出量の算出」です。単なる書類作成の代行にとどまらず、元化学メーカー研究員として化学物質を取り扱ってきた経験から、根拠に基づいた算出をサポートします。

  • 算出支援(テクニカル・サポート)
    • 「SDSを読んでも、複雑な混合物の中からどの成分をどう計算すべきか分からない」といった課題にも、化学物質の性状と挙動を踏まえて、現場担当者と対話しながら対応します。
  • コンプライアンス対応支援(リーガル・サポート)
    • 新様式への対応はもちろん、法改正による対象物質の追加にも迅速に対応します。

報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

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ご相談の際に、取り扱う物質と年間の量のおおよそを伺えれば、届出が要りそうかと算出の進め方の見当をお伝えできます。

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