遺産分割協議書の作成方法|相続人全員の合意を法的に有効な書面に残す手順
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
「相続人の間で話し合いはまとまったが、遺産分割協議書はどう書けばいいのかわからない」という相談があります。金融機関での預金の解約や法務局での相続登記では、遺産分割協議書の提出を求められます。こうした手続きに使うには、正確な記載と、相続人全員の署名・実印の押印が求められます。
遺産分割協議書は、民法第907条に基づき、相続人全員が遺産の分割方法について合意した内容を文書化したものです。この記事では、作成の手順・必要書類・注意点を解説します。
遺産分割協議書が必要になる場面
次のいずれかに当てはまる場合、遺産分割協議書の作成が必要です。
- 被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していない
- 遺言書はあるが、その内容と異なる分割方法を相続人全員が合意している
- 遺言書に記載のない財産がある
遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。遺言と異なる分け方をする場合は、相続人全員の合意が前提です。遺言で遺産の分割が禁じられている場合(民法第908条)や、相続人以外の受遺者・遺言執行者がいる場合は、その扱いも確認が必要です。
遺産分割協議の進め方
遺産分割協議書を作成する前に、次のステップを踏みます。
相続人の確定
誰が相続人かを正確に把握します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、法定相続人の範囲を確認します。離婚歴・認知した子・養子縁組など、意外な相続人が存在するケースがあります。
相続人の確認には、法定相続情報証明制度(法務局)を活用すると、その後の手続きで使い回せる一覧図が取得できます。

相続財産の調査
遺産の全体像を把握します。不動産は固定資産税納税通知書・登記事項証明書で確認します。預貯金は各金融機関へ残高証明書を請求します。株式・投資信託は証券会社への問い合わせが必要です。債務(借入・保証債務)も相続の対象になります。
財産の全体像を把握せずに協議を進めると、後から新たな財産・負債が発覚して協議のやり直しになる場合があります。
相続人全員での協議
相続人全員が参加する協議が必要です。相続人が1人でも欠けた状態での遺産分割協議は無効と解されています。遠方の相続人がいる場合は郵送・オンラインでの意思確認も可能ですが、相続登記や金融機関の手続きに使うには、全員の署名と実印の押印が求められます。
遺産分割協議書の記載事項
法定の書式はありませんが、次の事項を正確に記載します。
被相続人に関する事項
- 氏名・生年月日・死亡日・本籍地・最後の住所
相続人に関する事項
- 全相続人の氏名・住所(住民票記載の正確な住所)
分割する財産の詳細
- 不動産:登記事項証明書に記載の通りの表示(所在・地番・地目・地積または家屋番号)
- 預貯金:金融機関名・支店名・口座種別・口座番号
- 有価証券:証券会社名・銘柄・数量
- 動産(自動車等):車名・車台番号・登録番号
財産は「誰が取得するか」を明確に記載します。「長男○○が全て取得する」「次のとおり分割する」など、曖昧さが残らない表現にすることが重要です。
代償分割の場合
特定の財産を1人が取得し、他の相続人に現金を支払う場合(代償分割)は、支払額・支払期限・支払方法も明記します。
署名・押印のルール
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印するのが一般的です。押印の方法は法律で決まっているわけではありません。ただし相続登記や金融機関の手続きでは、実印での押印と印鑑証明書の添付を求められます。
印鑑証明書の期限の扱いは提出先によって異なります。金融機関によっては「発行から6か月以内」などの期限を設けているため、提出先ごとに確認してから取得します。
協議書が複数ページにわたる場合は、ページの境目に契印を押します。相続人が多い場合は、署名押印欄を別紙にまとめる方法もあります。
完成後の手続き
遺産分割協議書が完成したら、財産の種類ごとに以下の手続きを進めます。
| 財産の種類 | 手続き先 | 担当専門家 |
|---|---|---|
| 不動産 | 法務局(相続登記) | 司法書士 |
| 預貯金 | 各金融機関 | 行政書士・本人 |
| 株式・投資信託 | 各証券会社 | 行政書士・本人 |
| 自動車 | 運輸支局 | 行政書士 |
| 相続税申告(課税対象の場合) | 税務署 | 税理士 |
不動産の相続登記は、2024年4月1日から義務化されました(不動産登記法第76条の2)。相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法第164条)。法定相続分で登記した後に遺産分割で多く取得した場合は、分割の日から3年以内に改めて登記を申請します。
よくある質問
相続人の一人が協議に応じてくれない場合はどうしますか?
遺産分割協議は全員の合意が必要なため、一人でも応じない場合は成立しません。家庭裁判所への遺産分割調停(申立て)を検討することになります。行政書士は調停・審判には関与できませんが、協議段階までの書類整備を支援できます。
相続人が多い場合(兄弟が7人など)、協議書の取り交わし方は?
全員分を1通の原本に順次署名・押印する方法のほか、相続人ごとに同内容の協議書を作成して各自が署名・押印する方法もあります。後者は同時進行で進められるため、遠方の相続人がいる場合に便利です。提出先で受け付けられるかは、事前に確認しておくと安全です。
一部の財産だけ先に分割することはできますか?
できます(一部分割・民法第907条)。ただし、後から残りの財産を分割する場合は、改めて遺産分割協議書を作成します。残りの財産の分け方は改めて相続人全員で話し合うことになるため、一部分割にするかは財産全体を見て決めるのがよいと考えられます。
当事務所の強み:戸籍収集から協議書作成まで一貫支援
遺産分割協議書は、当事務所が相続人・相続財産の調査から協議書の作成までお引き受けします。
遺産分割協議書の作成は、相続人の確定・財産調査・協議書への正確な記載が一体となった手続きです。FPの知見を活かして代償金の資金計画や財産バランスを踏まえたアドバイスも可能です。個別の相続税計算が必要な場合は税理士にご相談ください。

- 戸籍・除籍謄本の収集代行
- 法定相続情報一覧図の作成・法務局申出
- 遺産分割協議書の起案・作成
- 金融機関・運輸支局等での名義変更手続き
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

相続人・財産の確認が済んでいない段階でも対応できます。まずは現状をお聞かせください。
