下水道法の特定施設の届出|水質汚濁防止法との違いと60日前ルール

下水道法の特定施設の届出|水質汚濁防止法との違いと60日前ルール

工場に洗浄・めっき・反応などの設備を新しく置くとき、排水の手続きは「排水をどこへ流すか」で変わります。川や水路へ流すなら水質汚濁防止法、公共下水道へ流すなら下水道法の特定施設の届出です。

下水道法の届出も、受理から60日を経過するまで設備を置けない決まりがあります。届出が遅れると、設備の搬入や試運転の日程がそのまま後ろにずれます。

この記事では、下水道に排水を流す工場が「何を・どこへ・いつまでに」届け出るかを、大阪市・吹田市の運用を中心に整理します。

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下水道法と水質汚濁防止法の違い|排水の行き先で決まる届出

工場の排水を公共下水道に流すか、川や海などに流すかで、届出の根拠になる法律が分かれます。水質汚濁防止法の規制の対象は「公共用水域」への排出で、終末処理場のある公共下水道はこの公共用水域から除かれています(水質汚濁防止法第2条第1項)。

排水の行き先主な手続き根拠大阪市内の窓口
公共下水道特定施設の設置届など下水道法第12条の3ほか建設局 下水道資源循環課〔下水放流関係〕
川・水路・海(日最大50m³未満)特定施設の設置届など水質汚濁防止法第5条第1項ほか建設局 下水道資源循環課〔河川放流関係〕
川・水路・海(日最大50m³以上)特定施設の設置許可瀬戸内海環境保全特別措置法第5条第1項建設局 下水道資源循環課〔河川放流関係〕

出典:​大阪市「水質規制に関する届出・申請」

川や水路へ流す場合の特定施設の届出と、50m³を境にした瀬戸内海法の許可との違いは、次の記事で解説しています。

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​補足:瀬戸内海環境保全特別措置法の許可との関係

大阪府は瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内海法)の「関係府県」です(同法第2条第2項)。同法の許可が要るのは、公共用水域へ排出する水の量が1日最大50m³以上の工場です(同法第5条第1項)。同法は「排出水」を公共用水域に排出される水と定めているため、排水を下水道だけに流す工場は、この許可の対象になりません。大阪府の条例の「届出施設」も、公共用水域に排水する工場が対象と案内されています(​大阪市の案内)。

排水の一部を雨水管から水路へ流している工場や、冷却水だけ別の系統で流している工場もあります。そうした場合は、系統ごとに行き先を確かめてから手続きを決めることを推奨します。

​下水道に流していても水濁法の届出が要る施設

有害物質を製造・使用・処理する特定施設(有害物質使用特定施設)を置く場合は、排水を下水道に流していても水質汚濁防止法の届出が別に必要です(同法第5条第3項)。地下水の汚染を防ぐための届出で、有害物質を貯める施設(有害物質貯蔵指定施設)も対象です。大阪市では、下水道に流す事業場のこの届出も〔下水放流関係〕の窓口で受け付けています(​大阪市「水質汚濁防止法に基づく届出」)。

相談者
相談者

排水は全部下水道に流しています。水質汚濁防止法は関係ないですよね?

行政書士
行政書士

有害物質を使う特定施設を置くなら、下水道法の届出とは別に、水質汚濁防止法の届出も必要です。

相談者
相談者

同じ設備で2つの届出ですか。

行政書士
行政書士

はい。大阪市では窓口が同じなので、まとめて準備すると効率的です。

下水道法の「特定施設」と「特定事業場」

届出が要るかどうかは、置く設備が「特定施設」に当たるかで決まります。ここでは、対象になる施設の範囲と、化学系の工場で当たりやすい例を整理します。

特定施設の範囲は水質汚濁防止法と共通

下水道法の特定施設は、水質汚濁防止法の特定施設と、ダイオキシン類対策特別措置法の水質基準対象施設を指します(下水道法第11条の2第2項)。施設の種類は、水質汚濁防止法施行令の別表第一に号番号つきで並んでいます。

特定施設を置く工場・事業場を特定事業場といいます(下水道法第12条の2第1項)。特定事業場になると、届出に加えて、下水道へ流す水の水質の基準と測定の義務がかかります。

化学系の工場・研究所で当たりやすい施設

別表第一には業種ごとに施設が挙げられています。化学系の工場や研究所で当たりやすいものは、次のとおりです。

号番号施設
第46号有機化学工業製品製造業の水洗施設・ろ過施設・廃ガス洗浄施設など
第47号医薬品製造業のろ過施設・分離施設・混合施設・廃ガス洗浄施設など
第65号酸又はアルカリによる表面処理施設
第66号電気めっき施設
第71号自動式車両洗浄施設
第71号の2環境省令で定める研究・試験・検査の事業場の洗浄施設・焼入れ施設

出典:水質汚濁防止法施行令 別表第一。大阪市は​下水道法に基づく特定施設の一覧表を公開しています。

同じ名前の設備でも、業種や規模の条件で当たるかどうかが変わります。「洗浄機を1台入れるだけ」でも特定施設に当たることがあります。発注の前に、号番号と条件を照らし合わせることを推奨します。

届出の種類と期限|設置届・変更届・使用届

下水道法の届出は、設備の新設・変更・名義の変更などの場面ごとに分かれています。設置と変更は事前、名義の変更や廃止は事後の届出です。

届出必要な場面期限根拠(下水道法)
特定施設設置届特定施設を新しく置く・更新する設置の前(受理から60日は設置できない)第12条の3第1項・第12条の6
特定施設の構造等変更届構造・使用の方法・汚水の処理の方法・下水の量と水質・用水と排水の系統を変える変更の前(受理から60日は変更できない)第12条の4・第12条の6
特定施設使用届既存の施設が新たに特定施設になった/川に流していた工場が下水道につないだ30日以内第12条の3第2項・第3項
公共下水道使用開始届1日最大50m³以上の排水や基準を超える水質の排水を始める、特定施設を置く工場が下水道を使い始めるあらかじめ第11条の2
氏名変更等届・使用廃止届名称・住所・所在地の変更、特定施設の使用の廃止30日以内第12条の7
承継届特定施設の譲受け・借受け、合併・分割など30日以内第12条の8第3項

公共下水道使用開始届の「1日最大50m³」は、下水道法施行令第8条の2の数値です。

受理から60日の実施の制限と計画変更命令

設置届と構造等変更届には、実施の制限がかかります。届出が受理された日から60日を経過した後でなければ、特定施設を設置・変更できません(下水道法第12条の6第1項)。内容が相当と認められれば、この期間は短縮されることがあります(同条第2項)。

この60日は、届出の内容を審査する期間です。排水が基準に合わないと判断されると、受理から60日以内に計画の変更や廃止を命じられることがあります(同法第12条の5)。大阪市・吹田市の案内では、設置届は「設置(着工)する60日以上前」までに出すとされています。

最初に
設備の仕様・使う薬品・排水の量と行き先を固める
着工の60日以上前
特定施設設置届を提出(有害物質使用特定施設なら水濁法の届出も)
受理から60日以内
審査。計画変更命令が出ることもある
受理から60日の経過後
特定施設の設置工事に着手できる
使用を始める前
公共下水道使用開始届(必要な場合)

届出をしなかった場合の罰則

届出の漏れや基準違反には、罰則が定められています。法人の従業者が違反した場合は、法人にも罰金が科されます(下水道法第50条)。

違反の内容罰則根拠(下水道法)
計画変更命令・改善命令に従わない1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金第45条
排除基準に合わない下水を流す6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金第46条
設置届・構造等変更届を出さない、偽る3月以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金第47条の2
受理から60日の前に設置・変更する、使用届や使用開始届を出さない、水質の記録をしない20万円以下の罰金第49条
氏名変更等・使用廃止・承継の届出をしない10万円以下の過料第51条

大阪市・吹田市での提出先と添付書類

届出先は、工場がある市町村の公共下水道の管理者です。ここでは、大阪市と吹田市の窓口と、設置届に付ける書類を整理します。

大阪市の提出先と提出部数

大阪市内で下水道に排水を流す工場の届出先は、建設局 下水道部 下水道資源循環課〔下水放流関係〕(城東区中浜1-17-10 東部方面管理事務所6階)です。窓口への持参のほか、大阪市行政オンラインシステムでも提出できます(​大阪市「下水道法・大阪市下水道条例に基づく届出」)。

書面の提出部数は2部です。市内の流域下水道の区域では、4部必要な場合があります。窓口では受付のときに書類の不備を確かめる形式審査があり、不備があると当日に受け付けられないことがあります(大阪市「特定施設等の届出の手引き Ver4.0」)。

吹田市・府内のほかの市町村の提出先

大阪市以外では、それぞれの市町村が公共下水道の管理者です。吹田市の場合は下水道部 水再生室が担当で、特定事業場の問い合わせ先は南吹田水再生センターです(​吹田市「水質規制関係の届出要件一覧」)。吹田市も設置届・構造等変更届は「着工する60日前まで」と案内しています。

大阪府の流域下水道に接続する公共下水道の管理者に出すときは、届出書の正本に写し1通を添えます(下水道法施行規則第14条)。届出の内容は、市町村から流域下水道の管理者にも通知されます(下水道法第12条の10)。

設置届に付ける別紙と図面

設置届の様式は下水道法施行規則の様式第六で、別紙と図面で中身を説明します。大阪市の手引きでは、設置届に次の書類を付けるよう求めています。

  • 別紙1:特定施設の構造と使用の方法
  • 別紙2:汚水の処理の方法・処理施設の概要
  • 別紙3:下水の量と水質、用水と排水の系統
  • 濃厚廃液の調査票
  • 施設の配置図(事業場の平面図)
  • 特定施設の構造図
  • 特定施設を含む操業の系統図
  • 汚水の処理施設までの導水経路図
  • 汚水処理のフロー図
  • 用水と排水の系統図
  • 委託処分の契約書の写し

出典:大阪市「特定施設等の届出の手引き Ver4.0(令和6年4月改訂)」

別紙には、使う原料・薬品の種類と1日の使用量、排水の水質と量の「通常の値」と「最大の値」を書きます(下水道法施行規則第8条第3項)。新設の設備では実測値がないため、使う薬品と水量から見込みを出して記入します。

操業の系統図と用排水の系統図は、工程の流れと水の行き先を、図面の番号と別紙の数値がそろう形でまとめる必要があります。

当事務所にご依頼いただいた場合の流れ

当事務所は、届出書・別紙の作成と、配置図・系統図などの添付図面の整理、窓口への提出までお引き受けします。水質の測定と除害施設の設計は対象外で、測定機関・設備業者の資料をもとに書類を組み立てます。

STEP 1
ご相談置く設備・使う薬品・排水の行き先・着工の予定日を伺い、要る届出(下水道法・水濁法・市の条例)と締め切りを整理します
STEP 2
資料の収集設備の仕様書、工場の平面図、測定機関・設備業者の水質と処理施設の資料をお預かりします
STEP 3
書類の作成届出書・別紙と、配置図・操業の系統図・用排水の系統図などを作り、数値と図面番号をそろえます
STEP 4
提出窓口との事前相談と提出、補正の対応を行います

下水道への排除基準と除害施設

特定事業場になると、下水道に流す水の水質に基準がかかります。基準には、超えるとすぐ罰則の対象になるものと、除害施設(排水処理の設備)を置く義務につながるものの2種類があります。

直罰がかかる基準と除害施設の設置義務

カドミウムや六価クロムなどの有害物質は、全国一律の基準が下水道法施行令第9条の4で決まっています。特定事業場がこれに合わない下水を流すと、そのまま罰則の対象です(下水道法第12条の2第1項・第46条)。

BOD(生物化学的酸素要求量)や浮遊物質量などは、市町村が条例で基準を定めます。基準を超える排水を流す事業場には、条例で除害施設の設置などを義務付けられます(下水道法第12条・第12条の11)。大阪市では、排水量の多い特定事業場には一部の項目にも直罰がかかります(大阪市下水道条例第10条、大阪市「下水道法・大阪市下水道条例による排水基準」令和7年7月1日現在)。

大阪市の主な排水基準

大阪市内で下水道に流す場合の主な基準は、次のとおりです(1リットルあたり)。

項目大阪市の基準
カドミウム0.03mg以下
鉛0.1mg以下
六価クロム0.2mg以下
水素イオン濃度(pH)5を超え9未満
生物化学的酸素要求量(BOD)600mg未満
浮遊物質量(SS)600mg未満
ノルマルヘキサン抽出物質(鉱油類)5mg以下(1日平均1,000m³未満の場合)
ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂類)30mg以下(1日平均1,000m³未満の場合)
温度45度未満
よう素消費量220mg未満

出典:​大阪市「大阪市内の下水道への排水基準」。条例の根拠は大阪市下水道条例第10条の2第1項・第10条の3第1項です。六価クロム・ほう素・ふっ素・亜鉛には、一部の業種に暫定基準があります。

BODと浮遊物質量は、市長の承認を受ければ2,600mgまで流せる場合があります(汚水排除承認。大阪市下水道条例第10条の3第3項・第10条の4、上限の数値は同条例施行規則第9条)。

除害施設を置くときの届出

除害施設を置く場合は、下水道法の届出とは別に、市の条例の届出があります。大阪市では除害施設設置等計画届を、設置の前に出します(大阪市下水道条例第10条の2第2項。BODなどの基準による場合は第10条の3第5項)。特定施設の届出と同時に出す場合は、表紙だけの添付でよいとされています(大阪市「特定施設等の届出の手引き」)。

吹田市では、除害施設の新設・変更は工事着手の1か月前までに届け出ます(吹田市下水道条例第16条第2項・同条例施行規則第7条第1項)。除害施設を置いたら、設置から14日以内に除害施設管理責任者を選び、選んでから7日以内に届け出ます(同条例第18条)。

届出後の義務|水質の測定・記録と事故時の届出

届出が受理されて稼働を始めたあとも、特定事業場には継続した義務があります。

  • 水質の測定と記録:下水道に流す水の水質を測定し、記録します(下水道法第12条の12)。記録は5年間の保存が必要です(下水道法施行規則第15条第5号)。
    • 測定の回数は、温度とpHは排水の期間中1日1回以上、BODは14日ごと、ダイオキシン類は1年ごと、そのほかの項目は7日ごとに1回以上が原則です(同条第2号)。
    • 回数は、ダイオキシン類以外の項目について下水道の管理者が別に定めることがあります(同号ただし書)。大阪市では、1日30m³未満の汚水を流す場合、温度とpH以外の項目は30日ごとに1回以上とされています(大阪市下水道条例施行規則第12条の3)。
  • 事故時の応急措置と届出:有害物質や油を含む下水が下水道に流れ込む事故が起きたら、直ちに応急措置をとり、速やかに届け出ます(下水道法第12条の9)。
  • 変更・廃止・承継の届出:名称・所在地の変更や特定施設の廃止、承継があったら、30日以内に届け出ます(下水道法第12条の7・第12条の8)。
  • 立入検査と報告への対応:管理者は事業場に立ち入って検査し、水質などの報告を求めることがあります(下水道法第13条・第39条の2)。

水質汚濁防止法の測定記録の保存期間は3年で(水質汚濁防止法施行規則第9条)、下水道法の5年とは異なります。両方の法律がかかる工場では、長いほうに合わせて保存すると管理がしやすくなります。

有害物質使用特定施設を廃止したときは、土壌汚染対策法の調査が必要になる場合があります(​大阪市の案内)。

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工場で設備を増設するときは、下水道法のほかに消防法・大気汚染防止法などの届出も重なります。法令ごとの期限は、次の記事にまとめています。

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よくある質問

下水道法の特定施設の届出は、設備メーカーや工事業者が出してくれますか?

届出の義務を負うのは、工場から下水を流して公共下水道を使う事業者です(下水道法第12条の3第1項)。届出書は事業者の名義で作ります。設備業者からは仕様書や処理施設の資料を受け取り、届出書の数値と図面にそろえます。なお大阪市は、行政書士でない者が業として報酬を得て届出書類を作ることは、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士法違反になると案内しています(​大阪市の案内)。

下水道法の特定施設設置届は、着工の何日前までに出せばよいですか?

法律上は、届出が受理された日から60日を経過した後でなければ設置できません(下水道法第12条の6第1項)。大阪市・吹田市は「設置(着工)の60日以上前」と案内しています。窓口での補正の時間も見込み、余裕をもって出すことを推奨します。

下水道に流す排水の水質の測定記録は、何年保存すればよいですか?

下水道法では5年間です(下水道法施行規則第15条第5号)。測定の回数は項目ごとに決まっていて、下水道の管理者が別に定めることもあります。自社の回数は、届出先の窓口で確かめてください。

当事務所の強み:下水道法と水濁法の届出をまとめて整理

下水道法の特定施設の届出は、当事務所が届出の要否の確認から、書類の作成・提出までお引き受けします。

  • 化学の現場を知る書類づくり:元化学メーカー研究員として、研究開発からスケールアップまでの工程を経験しています。原料・薬品の使い方から排水の性状を読み、別紙と系統図に落とし込みます。
  • 下水道法と水濁法をまとめて整理:有害物質使用特定施設の届出、市の条例の除害施設の届出など、同じ設備にかかる届出を一度に洗い出します。
  • 設備増設の全体の段取り:消防法・大気汚染防止法・騒音規制法など、ほかの届出の期限も合わせて、着工日から逆に並べた日程を組みます。
  • 相談料無料・オンライン対応:設備の計画が固まる前の段階から、届出が要るかどうかの整理をご相談いただけます。

排水が下水道と川のどちらへ出ているか分からない段階でも構いません。着工の予定日が見えた時点でご連絡いただければ、届出の締め切りを先にお示しします。

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