土壌汚染対策法の届出|工場解体・土地売却前に確認すべき義務と手順
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
工場の解体・土地の売却を進める際、後から「土壌汚染対策法に基づく調査・届出が必要だった」と判明するケースがあります。発覚した時点で工事が進んでいると、スケジュールや費用の再調整が必要になります。
土壌汚染対策法は、特定有害物質を使用してきた施設の廃止や、一定規模以上の土地の形質変更(掘削等)を行う際に、都道府県知事への届出や土壌汚染状況調査を義務付けています。届出を怠った場合や調査実施義務を無視して工事を進めた場合は、罰則の対象となる可能性があります。
なお、大阪府内では土壌汚染対策法に加えて「大阪府生活環境の保全等に関する条例」も適用されます。ダイオキシン類をはじめとする追加物質が調査対象となるなど、法より対象範囲が広い部分があるため、大阪府内の工場・事業場では両方を確認する必要があります。
元化学メーカー研究員として有害物質を扱う現場を経験した立場から、届出が必要な場面と手続きの流れを整理します。
届出が必要な3つの場面

土壌汚染対策法に基づく届出・調査義務が発生するのは、主に以下の3つの場面です。
特定有害物質使用特定施設の廃止時
水質汚濁防止法上の「特定施設」のうち、特定有害物質(鉛・水銀・ヒ素・ベンゼン等26物質)を取り扱うものを廃止した場合、廃止日から起算して120日以内に都道府県知事が指定した指定調査機関による土壌汚染状況調査を実施させ、その結果を都道府県知事に報告しなければなりません(土壌汚染対策法第3条第1項・施行規則第1条)。製造業では排水処理設備・めっき設備・化学品タンクが該当するケースがあります。

3,000m²以上の土地形質変更時
土地の掘削・盛り土・切り土など形質を変更する面積が3,000m²以上の場合、工事着手の30日前までに都道府県知事への届出が必要です(土壌汚染対策法第4条第1項・施行規則)。届出後、都道府県知事が汚染のおそれを判断し、必要に応じて調査命令が出されます。
ただし、有害物質使用特定施設が設置されている(または過去に設置されていた)工場・事業場の敷地では、閾値が900m²に引き下げられます(施行規則第22条ただし書き)。なお、法第3条第1項ただし書きの確認(一時免除)を受けた土地は法第4条第1項の届出対象から除外されます。ただし、その土地で900m²以上の形質変更を行う場合は別途法第3条第7項に基づく事前届出が必要となり、届出を受けた都道府県知事は調査を命ずることとなります(法第3条第8項)。届出が不要と誤解したまま工事を進めると法第3条第7項違反となる可能性があります。製造業の敷地は3,000m²に達しなくても届出が必要なケースがあるため、注意が必要です。
汚染土壌の搬出時
汚染土壌(要措置区域または形質変更時要届出区域として指定された土地の土壌)を区域外に搬出する場合、搬出前に都道府県知事への届出が必要です(法第14条第1項)。また、搬出した汚染土壌の処理は、都道府県知事の許可を受けた汚染土壌処理業者に委託しなければなりません(法第18条第1項)。
大阪府内の追加規制:府条例との併用

大阪府内の工場・事業場には、土壌汚染対策法に加えて「大阪府生活環境の保全等に関する条例」が適用されます。条例では特定有害物質にダイオキシン類をはじめとする追加物質を加えた「管理有害物質」が調査対象となり、法よりも規制範囲が広くなります。
- 廃止時の調査義務(条例第81条の4):有害物質使用届出施設等を廃止した場合、土地所有者等は管理有害物質による土壌汚染の状況を指定調査機関に調査させ、その結果を知事に報告する義務があります。ダイオキシン類を扱っていた施設は法の対象外でも条例の対象となるケースがあります
- 形質変更時の調査義務(条例第81条の5・第81条の6):一定規模以上の形質変更全般(第81条の5)および有害物質使用届出施設等の敷地での形質変更(第81条の6)に、管理有害物質の調査・報告義務が課されます。適用条項は施設の種類や状況によって異なります
- 所管窓口:条例第111条により市町村と府で事務分担されています。大阪市・堺市など政令市に立地する場合は各市の窓口への確認が必要です
土壌汚染対策法と条例の両方を確認せずに手続きを進めると、条例に基づく届出が漏れるリスクがあります。
調査と届出の手順
土壌汚染対策法に基づく調査は、都道府県知事が指定した「指定調査機関」(環境コンサルタント等)が実施します。行政書士は調査そのものを行いませんが、届出書類の作成・提出と行政との調整を担当します。
届出書類の作成・提出
- 届出書類の作成(廃止届・形質変更届)
- 都道府県知事へ届出(形質変更は着手の30日前まで)
- 都道府県知事による汚染のおそれの有無の判断
- 調査命令または自主調査の判断
指定調査機関による土壌汚染状況調査
調査の実施・費用・スケジュールは指定調査機関(環境コンサルタント等)が担当します。調査は段階的に進み、フェーズIの書面調査とフェーズIIの現地調査で汚染の有無と範囲を特定します。
- フェーズI:土地利用歴の調査・有害物質の使用履歴の確認
- フェーズII:現地でのボーリング調査・土壌・地下水の分析
- 調査結果の都道府県知事への報告
なお、廃止届・形質変更届など官公署に提出する書類の作成を、行政書士資格を持たない者が報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反となる可能性があります。指定調査機関(環境コンサルタント)に届出書類の作成・提出まで一括して依頼する場合は、その機関が行政書士と連携しているかなど、あらかじめ確認することをおすすめします。
汚染が確認された場合の対応
土壌汚染が確認されると、都道府県知事により「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定されます。
- 要措置区域:健康被害が生ずるおそれがある汚染が確認された区域。土地の形質変更は原則禁止され、汚染土壌の浄化措置が求められます
- 形質変更時要届出区域:健康被害のおそれは低い汚染が確認された区域。形質変更の際は届出が必要になります
指定区域の解除は、汚染の除去・封じ込め措置の実施と確認が完了した後に申請できます。

よくある質問
Q. 土地を売却するだけの場合も調査は必要ですか?
A. 土地の売買そのものは、土壌汚染対策法の届出義務を直接発生させません。ただし、売買対象地に特定有害物質使用特定施設が存在する(または過去に存在した)場合、廃止時に調査が義務付けられているケースがあります。また、買主が調査を条件とするケースも多く、売却前に自主調査を行うことがあります。
Q. 3,000m²未満の掘削工事でも問題になることがありますか?
A. 一般的には3,000m²未満であれば形質変更の届出義務は生じません。ただし、有害物質使用特定施設が設置されている(または過去に設置されていた)工場・事業場の敷地では閾値が900m²に引き下げられるため、3,000m²未満でも届出が必要になるケースがあります。また、工事中に汚染土壌が発見された場合は、搬出規制の対象となります。
Q. 施設廃止時に「調査が免除される」と聞きましたが、どういう意味ですか?
A. 土壌汚染対策法第3条第1項のただし書きにより、一定の条件を満たす場合は廃止時の土壌汚染状況調査が一時的に免除される「ただし書きの確認」制度があります。ただし免除はあくまで一時的なものです。確認を受けた土地でも、土地の利用状況に変更があった場合や行政から求められた場合には報告・調査が必要になるケースがあります。土地の売却・解体・掘削など状況が変わる際は改めて義務が発生する可能性がある点に注意が必要です。
当事務所の強み
元化学メーカー研究員として有害物質を扱う現場を経験した経緯から、どの物質が調査義務の対象になるかを技術的な観点で判断します。水質汚濁防止法の廃止届と土壌汚染対策法の届出はセットで必要になるケースが多く、両方まとめて対応することで手続きの漏れを防ぎやすくなります。
- 土壌汚染対策法に基づく廃止届・形質変更届の作成・提出代行
- 水質汚濁防止法の廃止届との一括対応
- 指定調査機関・行政との調整支援
届出が必要かどうかの判断から指定調査機関の手配調整・届出書類の作成まで、解体・売却のスケジュールを逆算して段取りを整理します。


