高圧ガスと消防法の届出|アセチレン・LPガス・硫酸など消防署に届け出る物質と量
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
「高圧ガスの届出は府に出したが、消防署にも何か出す必要があるのか」「溶接に使うアセチレンのボンベや、薬品庫の硫酸は消防の対象になるのか」。工場でガスや薬品の置き場所を決めるときに出てくる疑問です。
高圧ガスの製造・貯蔵・販売・消費は高圧ガス保安法の手続きで、窓口は都道府県です。一方、消防法の「危険物」は液体か固体のもので、ガスは含まれません。
ただし、圧縮アセチレンガスや液化石油ガス、硫酸などの一部の薬品は、一定量以上を貯蔵・取り扱うと、消防署への届出が必要です(消防法第9条の3)。高圧ガス保安法や毒物及び劇物取締法の手続きとは別の届出なので、見落とされやすい手続きです。
高圧ガスと消防法の関係
高圧ガスと消防法の関係は、「危険物には当たらないが、別の届出の対象になることがある」と整理できます。
消防法の危険物(第1類〜第6類)は、それぞれ固体か液体として定義されており、気体は含まれません(消防法別表第一の備考)。そのため、ガスを貯蔵しても、危険物の指定数量や少量危険物の届出の対象にはなりません。
一方、消防法第9条の3は、火災の予防や消火活動に大きな支障が出るおそれのある物質を政令で定め、それを貯蔵・取り扱う者に、あらかじめ所轄の消防長または消防署長へ届け出るよう求めています。対象には、ガスのほか、水や熱で有毒なガスを出す薬品も含まれます。

消防署への届出が必要な物質と量
届出が必要になる物質と量は、危険物の規制に関する政令第1条の10と、同政令の別表第一・別表第二に定められています。
| 物質 | 届出が必要になる量 |
|---|---|
| 圧縮アセチレンガス | 40kg以上 |
| 無水硫酸 | 200kg以上 |
| 液化石油ガス | 300kg以上 |
| 生石灰(酸化カルシウム80%以上を含むもの) | 500kg以上 |
| 毒物のうち、シアン化水素・シアン化ナトリウム・水銀・セレン・ひ素・ふつ化水素・モノフルオール酢酸 | 30kg以上 |
| 劇物のうち、アンモニア・塩化水素・クロルスルホン酸・クロルピクリン・クロルメチル・クロロホルム・けいふつ化水素酸・四塩化炭素・臭素・発煙硫酸・ブロム水素・ブロムメチル・ホルムアルデヒド・モノクロル酢酸・よう素・硫酸・りん化亜鉛 | 200kg以上 |
毒物・劇物は、毒物及び劇物取締法の毒物・劇物に当たるものが対象です。このほか、水や熱を加えると人体に重大な障害をもたらすガスを出す物質などで、総務省令で定めるものも対象になります。
劇物の欄には、硫酸・アンモニア・塩化水素・ホルムアルデヒドのように、工場で使われることの多い薬品も並んでいます。なお、毒物及び劇物指定令は、硫酸・アンモニア・塩化水素は10%以下、ホルムアルデヒドは1%以下を含む製剤を劇物から除いています。希釈した製剤をどう数えるかは、所轄の消防署に確認してください。

届出が要らない場合
次の場合は、消防署への届出は要りません(消防法第9条の3第1項ただし書・危険物の規制に関する政令第1条の10第2項)。
- 船舶・自動車・航空機・鉄道・軌道で貯蔵・取り扱う場合
- 液化石油ガスを、高圧ガス保安法・ガス事業法・液化石油ガス法などの規定により、行政から消防に通報されている施設で貯蔵・取り扱う場合
液化石油ガスの例外は、高圧ガス保安法などの規定により消防へ通報があった施設で液化石油ガスを貯蔵・取り扱う場合に限られます(危政令第1条の10第2項)。圧縮アセチレンガスや薬品には、この例外はありません。高圧ガス保安法の手続きを済ませていても、アセチレンを40kg以上置く場合は、別に消防署への届出が必要です。
消防署への届出の手続き
届出は、貯蔵・取扱いを始める前に、別記様式第一の届出書で、所轄の消防長または消防署長に行います(消防法第9条の3第1項・危険物の規制に関する規則第1条の5)。
- 置く物質と最大の量を確かめる
- 複数の場所に置く場合は、場所ごとの量も整理します
- 届出書(別記様式第一)を作る
- 様式は所轄の消防署の案内でも入手できます
- 所轄の消防署に提出する
- 貯蔵・取扱いを始める前に出します
- やめるときも届け出る
- 貯蔵・取扱いを廃止するときも、あらかじめ届け出ます(消防法第9条の3第2項)
届出を怠ると、30万円以下の罰金または拘留の対象になります(消防法第44条第8号)。また、防火対象物の定期点検の対象になる建物では、この届出がされていることが点検の基準の1つです(消防法施行規則第4条の2の6)。
- 対象の判定:薬品のSDSと在庫量から、消防署への届出・少量危険物の届出・高圧ガス保安法の手続きのどれが要るかを整理します
- 届出書の作成と提出:別記様式第一の届出書と、少量危険物・高圧ガスの届出をあわせて作成し、提出します
- 置き場所の見直し:保管場所ごとの量を整理し、届出の範囲を確かめます
よくある質問
高圧ガス保安法の届出をしていれば、消防署への届出は要りませんか?
液化石油ガスは、高圧ガス保安法などの規定により行政から消防に通報されている施設であれば、消防署への届出は要りません。圧縮アセチレンガスにはこの例外がないため、40kg以上を貯蔵・取り扱うときは、高圧ガス保安法の手続きとは別に消防署へ届け出ます。
少量危険物の届出とは別の手続きですか?
別の手続きです。少量危険物の届出は、液体・固体の危険物を指定数量の5分の1以上置くときの、市町村の火災予防条例に基づく届出です。この記事の届出は、消防法第9条の3に基づき、政令で定める物質を一定量以上置くときの届出です。同じ工場で両方が必要になることもあります。

硫酸を使うのをやめたときも、何か手続きが要りますか?
要ります。貯蔵・取扱いを廃止するときも、あらかじめ消防署へ届け出ます(消防法第9条の3第2項)。在庫を200kg未満に減らして続ける場合の扱いは、所轄の消防署に確認してください。
当事務所の強み:SDSから対象を判定し消防と高圧ガスを一度に整理
消防署への届出は、当事務所が対象の判定から届出書の作成・提出までお引き受けします。ご依頼の際に強みになる点は次のとおりです。
- SDSから対象を判定:元化学メーカー研究員として、薬品のSDSや製品の組成から、劇物や危険物に当たるか、どの届出の対象になるかを判定します
- 消防と高圧ガスを一度に整理:消防法・高圧ガス保安法・毒物及び劇物取締法を横断して扱うため、ガスと薬品の手続きをまとめて進められます
- 甲種危険物取扱者の知識:危険物の類別・品名の判断とあわせて、届出の漏れを確かめます
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

置いている薬品やガスの種類を伺えれば、消防署への届出が要りそうかの見当をお伝えできます。
