DX認定の申請手順|公表ページの作り方と中小企業の要件

DX認定の申請手順|公表ページの作り方と中小企業の要件

補助金の加点項目として設けられているDX認定は、申請書を書けば取れる制度ではありません。情報処理の促進に関する法律第28条に基づく認定で、認定基準の中心は「経営の方向性と戦略を決定し、公表していること」にあります。つまり本体は申請書ではなく、自社サイトに載せる公表ページの作成です。

「デジタル技術を活用しているのに、それを対外的に示す形になっていない」という状態の事業者は少なくありません。取組そのものは既にあるのに、公表という一手間がないために加点を取り逃がしています。

この記事では、DX認定の認定基準がどこにあるのか、公表ページに何を書くのか、中小企業だけに認められている要件の緩和は何かを、条文と申請ガイダンスに沿って整理します。

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DX認定制度の位置づけと根拠法

DX認定は、経済産業省が定めるデジタルガバナンス・コードに対応した事業者を国が認定する制度です。まず制度の骨格を押さえます。

情報処理促進法第28条に基づく国の認定

DX認定の根拠は情報処理の促進に関する法律(情報処理促進法)第28条です。同条は「経済産業大臣は、事業者からの申請に基づき…認定を行うことができる」と定めています。

認定の有効期間は2年です。同法第29条は「前条の認定は、二年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う」と規定しています。更新を忘れると認定が失効するため、補助金の加点として使い続けるには2年ごとの手続きが必要になります。

審査の実務は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が担います。同法第30条により、申請の受付と基準適合性の審査がIPAに委ねられているためです。

認定を受けた事業者は、認定の期間中、「DX認定制度ロゴマーク」を自社サイトや名刺などに使えます。ロゴは、認定の通知のあとにDX推進ポータルへログインするとダウンロードできるようになります(IPA「DX認定制度 制度概要」1.9)。

認定基準は施行規則第41条第1号

具体的な認定基準は、情報処理促進法施行規則第41条に置かれています。第1号のイからトまでの7項目すべてに該当することが要件です。

このうちイからハまでには、共通して「公表していること」という文言が入っています。たとえばイは「事業者が、最新の情報処理技術の変化による影響を踏まえた観点から、企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性を決定し、公表していること」と定めます。

決定するだけでは基準を満たしません。公表して初めて要件が充足されます。

補助金の加点項目としての価値

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、DX認定が加点項目の1つに設定されています。加点は申請締切日時点で要件を満たしている必要があるため、逆算した準備が求められます。

標準処理期間は60営業日です。おおよそ3か月かかるため、直近の公募に間に合わせるのは困難です。次回以降の公募を見据えて動くことになります。

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申請書の6つの設問と公表の要否

申請書(様式第16)は6つの設問で構成されます。ここで重要なのは、公表が必要な設問とそうでない設問が分かれている点です。

設問(1)から(4)は公表が必須

次の4つは、公表媒体を指定し、そこからの抜粋を記入する形式です。

  1. 企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定
  2. 企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定
  3. 戦略の達成状況に係る指標の決定
  4. 実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信

設問(2)はさらに「体制・人材」と「ITシステム環境整備」の2つの小問に分かれます。申請ガイダンスは各設問の審査観点に「公表資料は、対外的に公表しているか。(※公表済の内容であることが前提)」と繰り返し記載しています。

設問(5)と(6)は公表不要

課題の把握(設問5)とサイバーセキュリティ対策(設問6)は、公表を求められません。実施内容を申請書に記入し、必要に応じて資料を添付します。

申請書は認定後に一般公開される

見落とされやすい点です。認定を受けると、申請書の内容がIPAのサイトで公開されます。

申請ガイダンスは「「補足説明」欄の入力内容は、認定取得後も公開されず、申請書の内容のみが公開されます」と明記しています。裏を返せば、補足説明欄以外はすべて公開対象です。

公開を前提に書く必要があるため、社外に出せない情報は補足説明欄に回す判断が求められます。

公表ページに書く内容

認定基準の中心が公表である以上、作業の大半は公表ページの作成に費やされます。何を書くかを設問ごとに整理します。

経営ビジョンとビジネスモデルの方向性

設問(1)に対応する部分です。申請ガイダンスは「企業が目指す全体的な方向や目標といったレベルの記入にとどめます。具体的な方策(戦略)は次の設問(2)に記入してください」と指示しています。

ここで戦略の詳細まで書いてしまうと、設問(2)との区別がつかなくなります。審査観点にも「設問(1)の方向性と同程度の内容となっていないか」という項目があるため、抽象度を意識した書き分けが必要です。

あわせて、データやデジタル技術の進化による環境変化を踏まえていることを示します。

DX戦略とデータ利活用

設問(2)に対応します。審査観点で特に重いのが次の2点です。

  • データ利活用の方法および、活用したことによる自社の変革が具体的に示されているか
  • DX戦略の内容がデータ共有やツールの導入等、ITシステムの環境整備の内容のみとなっていないか

つまり「ツールを導入した」だけでは足りません。そのツールによって業務の進め方がどう変わったかまで書く必要があります。ガイダンスは「自社業務における変革(DXのX部分)の概要が確認できる内容となっているか」とも表現しています。

推進体制とデジタル人材の育成・確保

設問(2)①に対応します。審査観点は「体制・組織、デジタル人材の育成・確保の両方の内容が記入されているか」です。片方だけでは不足します。

また「体制図や組織図のみが提示されていないか」という観点もあります。図を貼るのではなく、誰がどのような役割を担うかを文章で示すことが求められます。

ITシステム環境の整備と投資計画

設問(2)②に対応します。ここでは投資への言及が審査観点に含まれています。

「戦略に対する予算配分・投資(デジタル技術導入のための予算確保等)を行っていることが示されているか」とされているため、環境の一覧だけでなく、今後どこに支出するかを書くことになります。

達成状況を測る指標

設問(3)に対応します。指標は次の3分類のいずれか、または達成の可否が判断できる定性指標であることが求められます。

  1. 企業価値創造に係る指標(財務指標)
  2. DX戦略実施により生じた効果を評価する指標
  3. DX戦略に定められた計画の進捗を評価する指標

注意したいのは「DX戦略推進に必要な人材育成・確保や環境整備の方策に対する指標のみが提示されていないか」という審査観点です。導入したツールの数だけを並べると、手段の指標しかないと判断される可能性があります。削減した時間やコストなど、効果を測る指標を含めることが重要です。

なお目標値の設定は望ましいとされているものの、認定に際して必須要件とはされていません。

経営者名義のメッセージ

設問(4)に対応します。審査観点は「経営者(CEOや社長、他の代表取締役 等)名でメッセージ(経営者の想いが反映された情報)が発信されているか」です。

「DX戦略等の資料そのものをもって発信内容としていないか(経営者自らの発信ではなく企業による発信となっていないか)」という観点もあります。戦略の説明を貼り付けるのではなく、経営者自身の言葉で書かれている必要があります。

中小企業に認められている2つの緩和

DX認定には、中小企業や小規模な事業者にとって負担が軽くなる仕組みが2つあります。

サイバーセキュリティはSECURITY ACTIONで足りる

設問(6)は本来、サイバーセキュリティ経営ガイドライン等に基づく対策とセキュリティ監査の実施を求めます。監査の実施は小規模な事業者には重い要件です。

しかし申請ガイダンスは「中小企業においては、SECURITY ACTION制度に基づき自己宣言(二つ星)を行っていることを確認する方法でも可とする」としています。

SECURITY ACTIONの二つ星は、次の要件を満たすことで宣言できます。

​SECURITY ACTION 二つ星の要件
  1. IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を実施する
  2. 情報セキュリティ基本方針を策定する
  3. 基本方針を外部に公開する
  4. IPAのサイトから自己宣言を申し込み、自己宣言IDを取得する

一つ星では設問(6)の要件を満たしません。審査観点にも「一つ星の宣言ではないか」と明記されています。

セキュリティ監査の概要を記入する欄についても、二つ星を宣言していれば自己宣言IDの入力で足ります。

個人事業主には機関承認の但書が適用されない

施行規則第41条第1号のイ(方向性の決定)とロ(戦略の決定)には、「ただし、意思決定機関(…取締役会設置会社…にあっては取締役会、取締役会設置会社でない会社及びその他の法人又は団体にあっては取締役会に準ずる機関とする。…)を設けている場合には、意思決定機関の決定に基づいたものに限る」という但書があります。

この但書は「意思決定機関を設けている場合には」と条件を付けています。取締役会に相当する機関を持たない個人事業主には適用されません。取締役会決議の議事録などを用意する必要がないぶん、手続きが軽くなります。

IPAの制度概要も、申請対象事業者を「全ての事業者(法人と個人事業者。法人は会社だけではなく、公益法人等も含みます)」としています。

申請の流れと準備期間

公表から申請までの順序を確認します。公表ページの掲載が先である点が、この制度の特徴です。

STEP 1
公表ページの掲載自社サイトに経営ビジョン・戦略・指標・経営者メッセージを載せる
STEP 2
SECURITY ACTION 二つ星の宣言情報セキュリティ基本方針の策定・公開が前提
STEP 3
DX推進指標による自己診断35項目をレベル0〜5で診断する
STEP 4
申請DX推進ポータルにGビズIDでログインして申請する

公表日は申請書に記入する項目です。掲載していない状態では申請書を作れません。

DX推進指標は35項目をレベル0から5の6段階で自己診断するもので、DX推進ポータルから提出して受付番号を得る方法と、申請時に診断結果を添付する方法があります。申請ガイダンスは「自己診断結果入力サイトにおいて提出していない場合は、申請時に診断結果をアップロードしてください」としています。

なお、レベルの高低は認定の可否に影響しません。ガイダンスは「『DX推進指標』を用いた課題把握を適切に実施し、結果を提出した場合には、設問(5)の要件を満たしているものと判断する」としています。実態に即して低いレベルを付けても差し支えありません。

標準処理期間は60営業日です。公表ページの作成に要する期間を加えると、着手から認定まで4か月前後を見込むことになります。

よくある質問

個人事業主でもDX認定を取得できますか?

取得できます。IPAの制度概要は、申請対象事業者を「全ての事業者(法人と個人事業者。…)」としています。むしろ取締役会がないぶん、施行規則第41条第1号の但書(意思決定機関の決定に基づくことを求める部分)が適用されず、手続きは軽くなります。

申請書は公開されるのですか?

認定を受けると、申請書の内容がIPAのサイトで公開されます。申請ガイダンスは「補足説明」欄のみが非公開である旨を明記しており、それ以外は公開対象です。取引先や競合に見られることを前提に記載内容を検討してください。

デジタル化にまだ着手していない状態でも申請できますか?

DX認定は、既に行っている取組を文書化して公表する制度です。取組の実態がない状態では、公表ページに書く内容そのものがありません。まず自社のデータ活用や業務プロセスの現状を棚卸しすることから始めることになります。

コンサルティング会社にDX認定の申請を任せても問題ありませんか?

申請書の作成は、官公署に提出する書類の作成にあたります(行政書士法第1条の3)。同法第19条第1項は「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と定めています。「いかなる名目によるかを問わず」は、令和8年1月施行の改正で加えられた文言です。コンサルティング料や支援費といった名目であっても、行政書士以外の者が報酬を得て申請書を作成することは同条に抵触するおそれがあります。

当事務所の強み:自ら認定を申請した経験を踏まえた支援

当事務所では、DX認定の申請支援を行っています。

  • 当事務所自身が2026年9月にDX認定を申請し、2026年11月1日に認定を受けました。公表ページの構成から申請フォームの入力、審査中の書類の追加提出まで自ら経験しているため、どの設問でつまずきやすいかを踏まえて支援できます。
  • 法令の条文と各省庁の手引きを自事務所のデータとして保有し、AIによる出力を一次情報で確認する運用を構築しています。この取組自体を公表ページに記載しており、DX戦略をどう文章化するかを実例で示せます。
  • SECURITY ACTION 二つ星の宣言、DX推進指標の自己診断まで含めて対応します。認定後は2年ごとの更新が必要になるため、更新時期の管理もあわせてご案内します。

報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

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デジタル技術の活用は既に始めているのに、それを対外的に示す形になっていない事業者は多くいます。現状の取組を棚卸しするところからご一緒します。

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