パートナーシップ構築宣言の書き方|記載要領と補助金の加点
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
新事業進出・ものづくり補助金をはじめ、多くの補助金で加点項目に設定されているのがパートナーシップ構築宣言です。手数料はかからず、ポータルサイトから提出します。
ただし、宣言書に項目名を並べただけでは記載要領を満たしません。「a. 企業間の連携」といった項目を選ぶだけでなく、項目ごとに自社が何に取り組むのかを具体的に書くことが求められます。審査を経ずに公開される仕組みのため、不備があってもそのまま掲載されることになります。
もう1つ見落としやすいのが、ひな形のバージョンです。補助金の公募要領は使用すべきひな形を年月で指定しており、古いひな形のまま宣言を公表していると加点の対象になりません。
この記事では、宣言書に何をどう書くのか、加点を取るために確認すべき点は何かを、記載要領と実際の宣言書をもとに整理します。
パートナーシップ構築宣言の位置づけ
まず制度の性格を押さえます。認定でも許可でもなく、事業者が自ら行う「宣言」である点に特徴があります。
発注者の立場から代表者名で行う宣言
パートナーシップ構築宣言は、2020年5月に「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」が導入した制度です。同会議には経団連会長、日商会頭、連合会長および関係大臣が参加しています。
記載要領は、この宣言を「事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、『発注者』側の立場から、『代表権のある者の名前』で宣言するもの」と説明しています。
宣言した内容は(公財)全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに掲載され、誰でも閲覧できます。
審査はなく、宣言した内容が公開される
認定制度と違い、審査を経て許可が下りる仕組みではありません。ひな形に沿って作成した宣言書を提出すれば、ポータルサイトに掲載されます。
一方で、宣言書そのものがPDFで公開されます。「取り組みます」と書いた内容は、取引先や同業者に読まれる前提で記載する必要があります。
宣言書の備考欄にも「主務大臣から『振興基準』に基づき指導又は助言が行われた場合など、本宣言が履行されていないと認められる場合には、本宣言の掲載が取りやめになることがあります」と記載されています。
補助金の加点項目としての要件
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、加点の要件を次のように定めています。
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて、令和8年1月1日に更新されたひな形を利用して宣言を公表している事業者
ひな形のバージョンが指定されている点に注意が必要です。過去に宣言していても、指定されたひな形で公表していなければ加点されません。既に宣言済みの事業者は、使用したひな形の版を確認してください。
加点は申請締切日時点で要件を満たしている必要があります。

宣言書の構成と記載事項
宣言書は3つの大項目と署名欄からなります。そのまま引用する部分と自社で書く部分が混在しているので、上から順に見ていきます。
定型部分はそのまま引用する
冒頭の宣言文と、大項目である「1.サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携」「2.『振興基準』の遵守」の本文は、ひな形の文言をそのまま使います。
記載要領は「定形部分については、原則そのまま引用し、記載してください」と指示しています。あわせて「特に、冒頭の『当社は、・・・』について、『当社グループは、・・・』など、企業グループとして宣言する形での公表は受け付けておりません。同一グループ内であっても、それぞれの企業ごとに宣言することを検討ください」とも明記されています。
個別項目は「取組内容を具体的に記載」する
宣言書でもっとも手が止まるのがここです。ひな形には6つの個別項目が用意されています。
- 企業間の連携(オープンイノベーション、M&A等の事業承継支援、取引先のテレワーク導入支援 等)
- IT実装支援(共通EDIの構築、データの相互利用、IT人材の育成支援、サイバーセキュリティ対策の助言・支援 等)
- 専門人材マッチング
- グリーン化の取組(脱・低炭素化技術の共同開発、省エネ診断に係る助言・支援、生産工程等の脱・低炭素化、グリーン調達 等)
- 健康経営に関する取組(健康経営に係るノウハウの提供、健康増進施策の共同実施 等)
- BCP/事業継続(取引先の災害時等の事業継続計画策定の助言 等)
記載要領はこの部分を必須記載としたうえで、「下記から積極的に取り組む項目を特定し、項目毎に取組内容を具体的に記載してください」と求めています。
つまり項目を選ぶだけでは足りません。記載例として挙げられているのも、次のような文の形です。
- オープンイノベーションを活用した新規事業創出に取り組む。
- サプライチェーン全体の情報共有・可視化による業務効率化を行う。
- 取引先のBCP(事業継続計画)策定の助言等の支援に取り組む。
実際に取り組んでいる内容を書いてください。宣言の履行が確認できない場合、掲載が取りやめになる旨が宣言書に記載されています。
「振興基準」の遵守は法令に基づく
2つ目の大項目は、受託中小企業振興法に基づく「振興基準」の遵守です。
同法第3条は「経済産業大臣は、受託中小企業の振興を図るため中小受託事業者及び委託事業者のよるべき一般的な基準(以下『振興基準』という。)を定めなければならない」と規定しています。振興基準に定める事項として、発注方法の改善、対価の決定の方法、取引条件の改善などが挙げられています。
同法第4条は、主務大臣が振興基準に定める事項について指導または助言を行うとともに、適切な具体的措置をとるべきことを勧奨すると定めています。宣言書の備考欄にある「指導又は助言が行われた場合」は、この条文を指します。
なお、この法律は従来「下請中小企業振興法」という名称でした。同様に「下請代金支払遅延等防止法」も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改称されています。法令番号は変わっておらず、同じ法律の改称です。宣言書のひな形も新名称で記載されています。
その他(任意記載)は自社の取組を書く
3つ目の大項目は任意記載です。ひな形には価格転嫁、宣言の普及、取引先満足度調査、約束手形の廃止といった例が挙げられています。
記載要領は「個社で取り組む独自の取組を記載してください」としています。例をそのまま写すのではなく、実際に行っていることを書く欄です。「ホワイト物流」について記載する場合は、「ホワイト物流」に関する「自主行動宣言」を表明し、推進運動のホームページに掲載されている必要があります。
自署は手書きを避ける
記載要領は「日付、企業名、役職、代表者氏名を記載・入力ください」としたうえで、「自署欄は手書きを避けてください」「押印は不要です」と明記しています。
紙に印刷して署名・押印したものをスキャンする必要はありません。ファイル上で入力してください。
よくある質問
Q. 発注がほとんどない小規模な事業者でも宣言できますか?
A. 宣言に事業規模や取引形態の要件はありません。記載要領は「発注者側の立場から」と説明していますが、個別項目のa〜fはいずれも取引先への支援を内容とするものです。取引先を広く捉えれば、受注が中心の事業者でも記載できます。
Q. 一度宣言すれば、その後の更新は不要ですか?
A. 宣言そのものに有効期限は設けられていません。ただし補助金の加点では、公募要領が指定するひな形での公表が要件になります。ひな形が改定された場合、旧版のままでは加点されない可能性があります。公募要領で指定された版を確認してください。
Q. 宣言した内容を実行していないとどうなりますか?
A. 宣言書の備考欄に「主務大臣から『振興基準』に基づき指導又は助言が行われた場合など、本宣言が履行されていないと認められる場合には、本宣言の掲載が取りやめになることがあります」と記載されています。掲載が取りやめになれば、補助金の加点要件も満たさなくなります。実行できる内容を書いてください。
Q. 宣言書の作成を専門家に頼めますか?
A. 依頼できます。宣言書の提出先は(公財)全国中小企業振興機関協会で、自社の取組方針を対外的に表明する文書です。ただし手続き自体は短時間で完了するため、当事務所では補助金申請の支援に付随して対応しており、単体での受任は行っていません。
当事務所の強み
当事務所では、補助金の申請支援に付随してパートナーシップ構築宣言の作成を支援しています。
- 当事務所自身も宣言を行っています。宣言書の作成から掲載まで自ら経験しているため、記載要領のどこでつまずきやすいかを踏まえて助言できます。
- 補助金の加点項目は宣言だけではありません。事業継続力強化計画(BCP認定)やDX認定など、準備期間の異なる加点項目を締切から逆算して組み立てます。
- 宣言書に書く内容は、実際に取り組んでいる業務と結びついている必要があります。取扱業務の棚卸しから一緒に整理します。
補助金の締切まで日数が少ない場合でも、宣言と登録は短期間で終わります。残り期間に応じて取れる加点を整理しますので、ご連絡ください。


