公正証書遺言の作り方|証人・費用・手順を行政書士が解説
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
「遺言書を作りたいが、自分で書いて有効かどうか不安」。そう感じたときの選択肢が公正証書遺言です。形式の不備で遺言書が無効になれば、残された家族が法定相続の手続きをやり直すことになります。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成される遺言書です(民法第969条)。方式の不備で無効になるおそれが低く、原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんの心配もありません。費用と手間はかかりますが、確実性を最優先にしたい方に最も適した方法です。
公正証書遺言の特徴
自筆証書遺言と比較した場合の主な違いです。

方式の不備で無効になりにくい:公証人が法律の要件を確認しながら作成するため、自筆証書遺言のような書き方の不備で無効になるおそれが低くなります。
検認が不要:自筆証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが必要ですが(法務局で保管したものを除く)、公正証書遺言は不要です(民法第1004条第2項)。相続人はすぐに手続きに移れます。
原本が公証役場に保管:遺言者(本人)に交付されるのは、原本の内容を写した正本・謄本です(正本は原本と同じ効力を持つ写し、謄本は内容を証明する写し)。原本は公証役場に保管されるため、相続人が故意・過失で紛失しても再取得できます。
自書不要:全文を手書きする必要はありません。病気などで署名ができない場合も、公証人がその旨を記載する方法で作成できます。
作成の流れ
公証役場での署名・押印まで、事前準備が必要なステップが複数あります。順に確認してください。
ステップ1:財産の棚卸しと内容の整理
まず、誰に何を残すかを決めます。次の事項を事前に整理しておくとスムーズです。
- 財産の全体像(不動産・預貯金・有価証券・生命保険等)
- 各財産を誰に相続させるか
- 遺言執行者の指定(誰かを決めておくと手続きがスムーズ)
- 付言事項(感謝の言葉・思いの伝達など)
遺留分(後述)にも注意が必要です。法定相続人の遺留分を侵害した遺言書は有効ですが、後から遺留分侵害額請求権を行使されるリスクがあります。
ステップ2:証人2名の手配
公正証書遺言の作成には、証人2名の立会いが必要です(民法第969条第1項第1号)。
次の方は証人になれません(民法第974条)。
- 未成年者
- 推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人となる予定の人)と受遺者(遺言で財産を受け取る人)、およびこれらの配偶者・直系血族
- 公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・使用人
つまり、配偶者や子、その配偶者・孫など、身近な家族の多くは証人になれません。友人・知人や、行政書士などの士業者に証人を頼むことができます。当事務所でも証人への就任に対応しています。
ステップ3:公証役場への事前相談
公証役場に電話で予約を入れ、事前相談を行います。遺言の内容を伝えると、公証人が法律上の問題点を確認し、文案を作成します。
複数回のやりとりが必要なこともありますが、最終的に公証人が正式な遺言書の文案を準備します。
ステップ4:必要書類の準備
公証役場から指示される書類を準備します。内容によって異なりますが、一般的な必要書類は次のとおりです。
遺言者本人に関する書類
- 印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの。日本公証人連合会の案内)などの本人確認書類
- 戸籍謄本
相続人・受遺者に関する書類
- 相続人の続柄がわかる戸籍謄本
- 受遺者(相続人以外)の場合:住民票
財産に関する書類
- 不動産:登記事項証明書・固定資産税評価証明書
- 預貯金:通帳のコピー等(金融機関・口座番号の確認)
- 株式:証券口座の残高証明等
証人に関する書類
- 証人2名の氏名・住所・生年月日を記載したメモ(当日確認)
ステップ5:公証役場での署名・押印
遺言者・証人2名が公証役場に出向き、公証人が読み聞かせる(または閲覧させる)内容を確認したうえで署名します。公正証書の電子化(令和7年)により、署名は電子サインで行う形に変わっています。この時点で公正証書遺言が完成します。
遺言者が公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅・病院等に出張することも可能です(出張費が別途かかります)。
公証人手数料の目安
手数料は遺言で相続させる財産の価額によって異なります(公証人手数料令第9条別表)。
| 財産価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円超200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 49,000円 |
50万円以下は3,000円、50万円超100万円以下は5,000円です。財産全体が1億円以下の場合は上記に遺言加算13,000円が加わります。複数の相続人に財産を分ける場合は、受取人ごとに手数料を計算して合算します。
このほか、原本が3枚を超える分の加算(1枚300円)と、遺言者に交付する正本・謄本に相当するものの手数料(書面は1枚300円、電子データは1通2,500円)がかかります。公証人が病院や自宅に出張する場合は、手数料の50%加算(病床で作成するとき)、日当(1日2万円・4時間以内は1万円)と交通費が加わることがあります(日本公証人連合会)。
遺言執行者の指定
公正証書遺言の中で遺言執行者を指定しておくことを強く推奨します。遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために手続きを行う権限を持つ人です(民法第1012条)。
遺言執行者がいると、相続人全員の合意なしに遺言書の内容に従った手続きを進めることができます。特に、相続人間に感情的な対立が予想される場合に有効です。
遺言執行者には相続人・弁護士・行政書士などを指定できます。当事務所でも遺言執行者への就任に対応しています。
遺留分への注意
特定の相続人(子・配偶者・直系尊属)には、法律上最低限保証された相続分(遺留分)があります(民法第1042条)。遺言書で遺留分を侵害した場合、遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
遺留分の計算は財産構成・相続人の構成によって異なります。FPの知識を活かし、遺留分を踏まえた遺言内容の設計についてもアドバイスが可能です。
よくある質問
遺言書を書き直したくなった場合はどうすればいいですか?
新たに遺言書を作成することで変更できます。前の遺言と後の遺言の内容が食い違う部分は、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。古い遺言書を撤回する旨を新しい遺言書に明記しておくと明確です。
認知症が進行している家族でも公正証書遺言は作れますか?
遺言能力(遺言の内容を理解し自己の意思を表明できる能力)が必要です。遺言能力は遺言をする時にあることが必要で(民法第963条)、認知症の診断があることだけで直ちに作成できなくなるわけではありません。早めの準備が大切です。
行政書士に頼むと何をしてくれますか?
内容の整理・財産目録の作成・必要書類の収集・公証役場との調整・証人の手配・当日の立会い(証人として)・遺言執行者への就任まで、一連のサポートが可能です。公証役場に何度も足を運ぶ手間を省けます。
当事務所の強み:FP知識と行政書士業務のかけ合わせ
公正証書遺言は、当事務所が遺言内容の設計から公証役場との調整、証人の手配までお引き受けします。
公正証書遺言の作成は、「誰に何をどう残すか」という財産設計と不可分です。FPの知識を活かして代償金の資金計画・遺留分への配慮を踏まえた設計を提案し、公証役場との手続きまで一貫してサポートします。個別の相続税計算が必要な場合は税理士にご相談ください。
- 財産目録の作成・遺言内容の設計支援
- 公証役場との日程調整・書類準備
- 証人としての立会い
- 遺言執行者への就任
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

「まだ元気なうちに」という感覚が、最善の準備タイミングです。ご連絡をお待ちしています。
