IT導入補助金のITツール登録|役務の価格説明資料と補助の上限

IT導入補助金のITツール登録|役務の価格説明資料と補助の上限

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)で、IT導入支援事業者が導入コンサルや導入研修を補助の対象にするには、事前に役務としてITツール登録をしておく必要があります。

ITツール登録のうち、役務はとくに注意が要る部分です。役務の補助対象経費は、登録のときに出した価格説明資料の業務内容と価格が上限になり、交付申請の段階では増やせないためです。

お客様への提案で見込んだ補助額が、登録した内容では出ない。補助の対象にしたつもりの作業が、役務として認められない。こうしたずれは、登録の段階で防げます。ITツール登録要領(2026年版)に沿って、役務を登録するときの注意点を整理します。

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デジタル化・AI導入補助金のITツールと役務

ITツールは5つの大分類と10のカテゴリーに分かれ、IT導入支援事業者がカテゴリーごとに登録します。まず役務の位置づけを押さえます。

役務の3つのカテゴリー

役務(大分類Ⅲ)は、次の3つのカテゴリーです(ITツール登録要領 2-2(4))。

カテゴリー内容費用が発生してよい期間
カテゴリー5導入コンサルティング・活用コンサルティング導入コンサル=交付決定後から導入開始まで/活用コンサル=納品日から6か月
カテゴリー6導入設定・マニュアル作成・導入研修指定したソフトウェアの導入開始から納品日まで
カテゴリー7保守サポート納品日から補助対象期間の満了まで

カテゴリー6と7は、登録済みのソフトウェア(カテゴリー1)を1つ指定して登録します。1つのソフトウェアに登録できるカテゴリー6・7は、それぞれ1つだけです(同 2-3(6)4.(エ)・(7)4.(オ))。

登録は「2026」の事業でだけ有効

デジタル化・AI導入補助金2026で登録したITツールは、2026の事業でだけ有効です。次の年の事業では使えません(同 2-2(3))。2026の事業の中なら、公募の締切回をまたいで同じ登録を使えます。

ここでいう「2026」は会計年度(4月〜翌3月)ではなく、事業の名前です。締切回によっては、補助事業の実施と実績報告が翌年の春以降まで続きます。

また、登録が完了したITツールだけが交付申請に使えます(同 2-2(2)2.)。お客様が交付申請する前に、役務の登録の審査が終わっている必要があります。

役務の補助対象経費は登録した価格が上限

役務の補助の額は、交付申請のときではなく、ITツール登録のときに決まる部分が大きくなります。仕組みと、上限の重なりを整理します。

価格説明資料の業務内容と価格が上限になる仕組み

役務の補助対象経費は、ITツール登録時の価格説明資料で申告した業務内容と、各業務の価格を上限として決まります(同 3-1(2)4.・5-1(1)7.)。登録の画面でも、この点に同意する宣誓を求められます。

交付申請と実績報告では、次のように扱われます(同 5-1(1)7.)。

  • 交付申請では、そのお客様に実施する業務だけを、登録した業務ごとの価格の範囲で申請する
  • 実施予定のない業務の費用を含めて申請しない
  • 実績報告でも、実施した業務ごとの価格を申告する
    • 交付申請していない業務の費用は、補助対象外になる

たとえば、導入コンサルを100万円で登録していれば、提案書で200万円の導入コンサルを見込んでも、補助の対象になるのは100万円までです。

提案書の補助額は、登録済みの役務の価格と照らし合わせてから出すのが安全です。登録の内容を見ずに作った試算は、交付申請の段階で合わなくなることがあります。

役務の200万円と、補助額150万円の境目

登録した価格とは別に、交付申請の段階にも上限があります。通常枠の場合は次のとおりです(通常枠 公募要領 2-2(2)・2-3)。

  • 役務(カテゴリー5〜7)の補助対象経費は、合計で200万円まで
  • カテゴリー5は、1回の交付申請で1つだけ
  • 補助率は原則1/2。補助額が150万円以上になると、ソフトウェアのプロセスが4種類以上必要になり、賃上げの計画も必須の要件になる
役務を200万円まで入れたときの補助額(補助率1/2の場合)
0100万円150万円(境目)200万円
  • 役務200万円の1/2100万円
  • ソフトウェア費80万円の1/240万円
  • 合計140万円

補助額は140万円で、150万円の境目の手前です(点線から右が、4プロセスと賃上げが必須の範囲)。ソフトウェア費が100万円以上になると補助額が150万円に届き、4プロセスと賃上げの計画が要件になります。

プロセスが1〜3種類のソフトウェアだけなら、交付申請する補助額を150万円未満に抑える必要があります。4種類以上の場合も、補助額を自分で150万円未満にして申請できます(同 2-3【補足2】※2)。150万円未満なら、賃上げは必須の要件ではなく加点の項目になります。ただし、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、150万円未満でも賃上げが必須です(同 2-3【補足2】※1)。

価格説明資料の要件

役務の登録では、事務局が指定する様式の価格説明資料を出します。ソフトウェアの価格資料とは求められる内容が違うので、別に用意します。

​役務の価格説明資料で確認できる必要があること(ITツール登録要領 別紙1(1)2.(イ))
  • 役務の業務ごとに、作業内容の説明が詳しく書かれている
  • 役務を提供する従業員ごとに、時間単価×時間数で価格の内訳が出されている
  • 価格は税抜で書かれている
  • 時間単価は1万円を超えない
  • 登録の画面で入力する「価格設定の内訳」と合っている

時間単価に上限があるため、業務ごとの価格は「何時間かかるか」で説明することになります。

価格が過去の事業も含めた平均的な市場価格を大きく上回る場合は、申請価格理由書を求められます。価格設定の理由と、似たITツールとの価格・機能の比較を書くものです(同 別紙1(1)3.)。

事務局から不備の修正を求められて資料を直したときは、前回から直した箇所を資料の中に明記します(同 別紙1(2))。

役務として登録できない作業

役務の登録では、対象になる業務が決まっています。ソフトウェアの導入と関係の薄い作業は、価格に含めると登録の対象外になります。

カテゴリー5(導入・活用コンサルティング)で対象外になるもの

カテゴリー5では、次のものが含まれると登録の対象外です(ITツール登録要領 2-3(5)2.)。

  • 交付決定の前の費用(お客様への提案段階のコンサルティング、ITツールの選定作業など)
  • 導入コンサル・活用コンサルの期間の外で発生する費用
  • ITツールの導入と関連のない、補助事業者の業務そのものや経営全般に対するコンサルティング
  • 補助金申請の代行・コンサルティングの費用
  • 移動の交通費・宿泊費

また、補助事業で実施しない業務を含むカテゴリー5は、登録しないよう求められています(同 2-3(5)4.(オ))。導入コンサルだけ・活用コンサルだけ・両方の、実施する形に合わせて登録します。

カテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)で対象外になるもの

カテゴリー6で対象になるのは、導入設定、既存データのアップロード、カスタマイズ、研修資料の作成と研修、運用マニュアルの作成、RPAのシナリオ制作・AI初期学習設定です。次のものは含められません(同 2-3(6)2.)。

  • 過去に購入した製品や、補助事業の対象になっていない製品に対する作業
  • ITツールの導入と関係のないデータの作成・投入
  • 補助事業者の通常業務の代行
  • ハードウェアの運搬費、移動の交通費・宿泊費

AIツールの導入支援では、ツールに業務の手順を覚えさせる初期設定と、業務そのものの代行の線引きが問われます。たとえば、手順書を作ってツールが読める形に整えるのは初期設定です。一方、ツールを使ってお客様の帳票を作る作業は、通常業務の代行になりえます。

​補足:すでに使っているソフトの買い増し・更新は対象外

すでに購入済みのソフトウェアの増台、追加購入分のライセンス、リビジョンアップの費用を含むものは、ITツール登録の対象外です(同 2-3(1)2.(ケ))。交付決定の前に購入したITツールも、補助の対象外です(同 2-3 全カテゴリー共通 9.)。お客様がすでに契約しているツールを提案するときは、この点を先に確かめます。

ソフトウェアとの組み合わせと役務の割合

役務は、単独では交付申請できません。組み合わせるソフトウェアの条件と、役務の割合を確認します。

業務プロセスを持つソフトウェアが必要

通常枠の交付申請には、業務プロセスを1種類以上持つソフトウェアが1つ以上含まれている必要があります(ITツール登録要領 5-1(1)1.)。

業務プロセスは、顧客対応・販売支援(共P-01)から業種固有プロセス(P-06)までです。文書作成やグループウェアなどの汎用プロセス(汎P-07)だけのソフトウェアは、業務プロセスのソフトウェアと一緒に導入する位置づけです。1つのソフトウェアで、業務プロセスと汎用プロセスを同時に選ぶことはできません(同 2-3(1)10.(ウ))。

サブスクリプションのソフトウェアは、1年分の利用料金で登録します。2年分を補助の対象にするときは、登録のときではなく、交付申請のときに利用年数を申請します(同 2-3(1)10.(オ))。

役務が「著しく高額でないこと」は申請者の要件

通常枠の申請要件には、「導入するITツールに比して役務費用が占める割合が著しく高額でないこと」があります(通常枠 公募要領 2-1-1(2)(タ))。

公募要領とITツール登録要領には、何倍までという数字の基準は書かれていません。登録の段階でも、カテゴリー6・7は「ソフトウェア1つ当たりの役務価格として妥当であること」が要件です(ITツール登録要領 2-3(6)1.(イ)・(7)1.(イ))。役務の割合が大きい提案では、役務の業務ごとの作業内容と時間数で、価格の妥当性を説明できるようにしておきます。

交付申請と実績報告で支援事業者が気をつけること

登録のあとも、お客様の交付申請と実績報告で、IT導入支援事業者の対応が必要な点があります。

交付決定の前に契約・着手しない

ITツールの契約と発注は、交付決定の後に行います(通常枠 公募要領 3-4(1))。交付決定の前に発生した費用は、役務にも含められません。

提案の段階で現地のヒアリングなどをすることはありますが、それは交付決定の前の作業で、役務の補助対象には入りません。役務として登録した業務は、交付決定の後に始めます。

請求明細書はITツール名と照合できる形に

実績報告では、お客様が導入したITツールの請求明細書を事務局へ出します。IT導入支援事業者は、ITツールと照合できる請求明細書を発行します(ITツール登録要領 5-1(2))。

  • ITツール名と請求明細書の費目が一致しているのが望ましい
  • 法人(単独)の場合、請求者の名義がIT導入支援事業者と一致している必要がある
  • 補助の対象になる期間(1年または2年)を超えた金額は、補助対象外になる
​自己負担を減らす販売方法は登録取消しの対象

ITツールの販売金額のうち、お客様の自己負担を減らしたり無償にしたりする販売方法は、形式・時期を問わず、補助金交付の目的に反する行為として扱われます(ITツール登録要領 5-2(1))。ポイントやクーポンでの値引き、購入額の一部の払い戻し、通常より引き上げた価格での登録などが例として挙げられています。交付決定の取消しに加え、IT導入支援事業者とITツールの登録取消しの対象になります。

よくある質問

ITツール登録の役務について、よくある質問をまとめました。

ITツール登録は次の年の補助金でも使えますか?

使えません。デジタル化・AI導入補助金2026で登録したITツールは、2026の事業でだけ有効です(ITツール登録要領 2-2(3))。2026の事業の中であれば、公募の締切回をまたいで同じ登録を使えます。

1つのソフトウェアに、導入設定の役務を2種類登録できますか?

できません。1つのソフトウェアに登録できるカテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)は1つだけです。カテゴリー7(保守サポート)も同じです。実施する業務と費用をすべて計上した価格で、1つにまとめて登録します(同 2-3(6)4.(イ)・(エ))。

役務だけで交付申請できますか?

できません。通常枠の交付申請には、業務プロセスを1種類以上持つソフトウェアが1つ以上必要です(同 5-1(1)1.)。カテゴリー6・7は、登録のときに指定したソフトウェアを導入する場合に限って申請できます。

提案書の補助額は、何を基準に試算すればよいですか?

役務は、登録済みの業務ごとの価格が上限です。そのうえで、役務の合計200万円、補助率1/2、補助額150万円の境目を当てはめます。登録が審査中の役務を見込む場合は、お客様の交付申請の締切までに登録が終わるかも確かめます。

当事務所の強み:要領の読み合わせから価格説明資料の整理まで

ITツール登録の役務は、登録の書き方が、そのままお客様の補助額と交付決定後の手続きに響きます。当事務所は、IT導入支援事業者の側から登録と提案の確認をお手伝いします。

  • 登録要領と公募要領の読み合わせ:役務の業務内容が対象外の作業を含んでいないか、カテゴリーの選び方や期間が要領に合っているかを、条項を示して確認します。
  • 価格説明資料の作業内容と時間数の整理:業務ごとの作業内容の説明と、時間単価×時間数の内訳を、事務局が読んで分かる形に整えます。
  • 提案書の補助額の確認:登録済みの価格・役務の200万円・150万円の境目から補助額を試算し、提案書の数字とずれていないかを確かめます。
  • お客様側の準備の案内:GビズIDプライムなど、交付申請の前にお客様が済ませておく手続きを、締切から逆算して整理します。
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