一般事業主行動計画の策定・公表の手順|補助金の要件で必要になったとき
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
補助金の公募要領を読んでいて、「一般事業主行動計画を策定・公表していること」という要件に突き当たった経営者は多いはずです。聞き慣れない制度名に、何から手をつければよいか分からなくなります。
これは次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく計画です。従業員数によっては法律上の義務がない企業でも、補助金を申請するために策定・公表することになります。
手続きそのものは難しくありません。ただし公表の反映に1〜2週間かかるため、締切間際に着手すると間に合いません。補助金の申請に間に合わせるための手順を、締切から逆算して整理します。
補助金の要件になっている理由
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、令和8年度の制度改正でワークライフバランス要件が新設されました。
公募要領は、次世代法第12条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行うことを求めています。応募申請時までに計画を策定し、申請締切日時点で有効な計画を、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」に公表する必要があります。
この要件には従業員数の限定がなく、申請するすべての事業者が対象です。
一方、中小企業省力化投資補助金では従業員21名以上の事業者のみが対象とされています。制度によって範囲が違うため、申請する補助金の公募要領で確認してください。
法律上の義務がある企業とない企業
次世代法は、企業規模によって義務の重さを分けています。
| 常時雇用する労働者の数 | 策定・届出 | 公表 | 労働者への周知 |
|---|---|---|---|
| 100人を超える | 義務 | 義務 | 義務 |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 | 努力義務 |
法第12条第1項が「常時雇用する労働者の数が百人を超えるもの」に策定と届出を義務づけ、同条第5項が100人以下の事業主を努力義務としています。
公表は同条第4項、労働者への周知は法第12条の2が定めています。
法律上は努力義務でも、補助金の要件としては必須になります。「うちは小規模だから関係ない」と読み飛ばすと、申請の直前に慌てることになります。
行動計画に書く3つの事項
計画に定める内容は法第12条第2項が列挙しています。
- 計画期間
- 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
- 実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期
分量の指定はありません。A4用紙1枚に収まる企業も珍しくありません。
令和6年改正で追加された定量目標
令和6年の改正で、計画の作り方に条件が加わりました。法第12条第3項です。
その雇用する労働者の育児休業等の取得の状況及び労働時間の状況を把握し、労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために改善すべき事情について分析した上で、その結果を勘案して、これを定めなければならない
同項はさらに、目標について「その雇用する労働者の育児休業等の取得の状況及び労働時間の状況に係る数値を用いて定量的に定めなければならない」と続きます。
つまり「育児休業を取りやすい職場にする」といった記述では足りません。育児休業の取得率や時間外労働の時間数など、数値で測れる目標を立てることになります。
自社の育児休業の取得状況と労働時間を先に集計し、そこから目標を組み立てる順序になります。
策定から公表までの4ステップ
厚生労働省のパンフレットが示す流れに沿って進めます。目安の期間も同パンフレットによります。
ステップ1:自社の状況把握と課題分析
育児休業等の取得の状況と労働時間の状況を集計します。従業員のニーズを聞き取る企業もあります。
法第12条第3項が求める分析はここで行います。改正で義務化された部分なので、飛ばさずに記録を残してください。
ステップ2:行動計画の策定
計画期間・目標・対策の内容と実施時期を書きます。計画期間は2年から5年程度で設定する例が多く見られます。
行動計画策定指針に即して定めることとされており、指針が対策の例を示しています。
ステップ3:公表と従業員への周知
策定の日からおおむね3か月以内に、一般への公表と従業員への周知を行います。
公表の方法は施行規則第1条の4が「インターネットの利用その他の適切な方法」と定めています。厚生労働省の「両立支援のひろば」に掲載するほか、自社のホームページへの掲載も認められます。
従業員への周知は施行規則第2条の3が方法を挙げています。事業所の見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、電子メールの送信などです。
補助金の要件を満たすには「両立支援のひろば」への掲載が求められます。自社サイトへの掲載だけでは公募要領の求める形にならないため、注意が必要です。
ステップ4:都道府県労働局への届出
策定の日からおおむね3か月以内に、**一般事業主行動計画策定・変更届(様式第一号)**を提出します。
施行規則第1条により、提出先は事業主の住所を管轄する都道府県労働局長です。郵送・持参・電子申請のいずれでも受け付けられます。行動計画そのものを添付する必要はありません。
女性活躍推進法に基づく届出もあわせて行う場合は、1枚の届出書にまとめられます。施行規則第1条第2項は、同法第8条第1項または第7項の届出と同時に行うときは厚生労働省雇用環境・均等局長の定める様式によることができると規定しており、これに基づく次世代法・女性活躍推進法の一体型(様式第2号)が令和8年4月1日以降の様式として用意されています。
なお新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、労働局への届出を「可能な限り」と表現しています。補助金の要件として必須なのは公表のほうです。
公表に要する期間の見込み
補助金に間に合わせるうえで、ここが最も重要です。
公募要領は「両立支援のひろば」への掲載に1〜2週間程度を要すると明記しています。さらに次のような注意も書かれています。
「両立支援のひろば」では、一般事業主行動計画のサイト公表申請の審査状況に関する問合せは受け付けておらず、問合せをいただいてもサイトへの公表手続きを早めることはできません。公表申請の審査過程で不備が発覚する場合もありますので、2週間以上の余裕をもって公表申請を行ってください。
公表申請の審査で不備が出ることがあり、催促もできません。締切の3週間前には公表申請を終えておく想定で逆算してください。
補助金の申請にはGビズIDプライムの取得も必要です。マイナンバーカードとスマートフォンによるオンライン審査なら最短即日ですが、書類を郵送する方法では原則2週間以内とされています。
一般事業主行動計画の公表とGビズIDの取得は、いずれも締切から逆算して先に着手すべき手続きになります。

くるみん認定という加点への発展
行動計画を策定し届け出た事業主は、一定の基準を満たすと厚生労働大臣の認定を受けられます。法第13条が定める認定制度で、トライくるみん・くるみん・プラチナくるみんの区分があります。
新事業進出・ものづくり補助金では、この認定が加点項目になっています。女性活躍推進法に基づくえるぼし認定も同様です。
ただし認定には行動計画の実施と目標の達成が必要で、取得までに相応の期間がかかります。直近の締切に間に合わせる加点としては現実的でないため、次回以降の申請を見据えた選択肢になります。
よくある質問
Q. 従業員が10人程度の会社でも一般事業主行動計画は必要ですか?
A. 次世代法上は努力義務ですが、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を申請するなら策定と公表が必要です。同補助金のワークライフバランス要件には従業員数の限定がありません。中小企業省力化投資補助金では従業員21名以上が対象なので、申請する制度の公募要領で確認してください。
Q. 行動計画は自社で作成できますか?
A. できます。記載する事項は計画期間・目標・対策の内容と実施時期の3つで、様式も厚生労働省が公開しています。なお次世代育成支援対策推進法は社会保険労務士法別表第1に列挙されているため、策定届の作成と提出の代行は社会保険労務士の業務であり、行政書士である当事務所ではお引き受けできません。作成をご依頼になる場合は社会保険労務士にご相談ください。
Q. 「両立支援のひろば」に公表すれば労働局への届出は不要ですか?
A. 別の手続きです。公表は法第12条第4項、届出は同条第1項に基づくもので、それぞれ根拠が異なります。常時雇用する労働者が100人を超える企業は届出が義務です。100人以下でも、くるみん認定を目指すなら届出が前提になります。
Q. 補助金の申請後に行動計画の期間が終了してしまう場合はどうなりますか?
A. 公募要領は「申請締切日時点で有効な一般事業主行動計画」を求めています。締切日に計画期間内であることが必要なため、期間の終期が近い場合は計画を更新してから申請することになります。
当事務所の強み:補助金の要件を逆算して組み立てる支援
補助金の申請では、事業計画書の中身よりも先に、要件を満たすための準備で時間を取られることが少なくありません。一般事業主行動計画の公表とGビズIDの取得は、その典型です。
要件は補助金ごとに異なり、同じ制度でも公募回ごとに変わります。どの要件にいつ着手すべきかを整理し、申請までの工程を逆算して設計します。
- 補助金の枠の選定と要件の該当性判断
- 加点項目の棚卸しと、間に合うもの・間に合わないものの切り分け
- 経営革新計画・事業継続力強化計画(BCP)の認定申請
- 交付申請から実績報告までの一貫対応
一般事業主行動計画そのものの策定届については、作成と提出の代行を承ることができません。社会保険労務士の業務にあたるためです。当事務所でお手伝いできるのは、申請する補助金でこの要件が必要かどうかの判断と、公表までに要する期間を踏まえた工程の組み立てになります。
公募要領を開いたものの、どの要件が自社に当てはまるか判別がつかない段階で構いません。締切までに間に合う準備の順序をご提案します。


