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飲食店開業の許認可チェックリスト|業態別・手続き一覧

飲食店の開業には、保健所・消防署・税務署・警察署など複数の窓口への手続きが必要です。「飲食店営業許可だけ取ればいい」と思っていると、消防署への届出や酒類・深夜営業の手続きが漏れたまま開業日を迎えることになります。

手続きの種類は業態・規模・営業方針によって大きく変わります。小規模なカフェと深夜まで営業する居酒屋、キッチンカー、ペットカフェではそれぞれ必要な許認可が異なります。また、開業と同時に設備投資のための補助金申請や資金計画の見直しが必要になるケースも少なくありません。

この記事では、飲食店開業に必要な許認可・届出を「全業態共通」「規模別」「業態別」に分類して整理します。それぞれの手続きの申請先・概要・タイミングを把握することで、開業前の準備を漏れなく進めることができます。

飲食店の開業支援を「一括サポート」として提供するコンサルタント・内装業者・開業支援会社が存在します。しかし、保健所への飲食店営業許可申請書・消防署への防火対象物使用開始届など、官公署に提出する書類を他人の依頼を受けて作成・提出することは行政書士の独占業務です(行政書士法第1条の2)。行政書士資格を持たない者が業として代行した場合、報酬の名目を問わず(サポート料金に含める場合・無料とする場合も同様)行政書士法第19条違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります(同法第21条)。自ら申請する分には問題ありませんが、代行を依頼する場合は行政書士に依頼してください。

開業前に確認すべき手続き

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飲食店を開業するにあたり、ほぼすべての業態で必要になる手続きです。一部は規模・設備内容によって要否が変わりますが、まず全項目を確認してください。

食品衛生関係(保健所)

飲食店を開業するうえで最も基本となる手続きです。許可が下りるまで開業できないため、工事着工前から保健所に相談することを推奨します。

飲食店営業許可(食品衛生法第55条第1項)

飲食店として営業するために必要な許可です。申請先は施設の所在地を管轄する保健所で、審査には施設の立入検査が伴います。施設基準(シンク・洗浄設備の数と配置、食品保管設備、換気設備など)を満たしていないと許可が下りないため、内装工事の設計段階から保健所に事前相談して施設基準を確認してください。許可証が交付されてから営業を開始します。

食品衛生責任者の設置

食品衛生法に基づき、都道府県条例等で営業許可施設ごとに配置が義務付けられています。飲食店営業許可を受けた施設には、食品衛生責任者を1名以上置くことが必要です。調理師・栄養士・製菓衛生師などの有資格者はそのまま就任できます。資格を持たない場合は、保健所が指定する食品衛生責任者養成講習会(1日程度)を受講する必要があります。

消防・防火関係(消防署)

飲食店として建物を使用する前に、消防署への届出が必要です。許可制ではなく届出制ですが、使用開始後の届出は期限違反になるため注意が必要です。

防火対象物使用開始届

建物(または区画)を飲食店として新たに使用する前に、所管消防署への届出が必要です。大阪市では使用開始の7日前までが期限です。届出書には平面図・消防用設備の配置図・電気配線図を添付します。

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火を使用する設備の届出(規模による)

業務用ガスレンジ・フライヤー等の厨房設備の合計入力が同一厨房室内で350kW以上になる場合、またはボイラーを設置する場合は、防火対象物使用開始届とは別に「火を使用する設備等の設置届出」が必要です(大阪市火災予防条例第57条)。設置・変更の5日前までが期限です。

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防火管理者の選任・消防計画の届出(収容人員30人以上)

飲食店など不特定多数が利用する特定防火対象物では、収容人員が30人以上になると防火管理者の選任と消防計画の届出が義務付けられます(消防法第8条)。収容人員は従業員数だけでなく客席数も合算して算定するため、「従業員が少ないから不要」と判断しないよう注意が必要です。また、ビル全体の規模・用途によってはテナント単位でも防火管理者が必要になる場合があるため、具体的な判断は所轄消防署に確認してください。

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税務・事業者登録(税務署)

個人事業主として開業する場合の税務手続きです。法人として開業する場合は後述の「法人か個人事業主かの選択」を参照してください。

個人事業主の開業届(所得税法第229条)

事業を開始した事実が生じた日から1ヶ月以内に、納税地(原則として住所地)を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出先は税務署またはe-Taxです。

青色申告承認申請書(所得税法第144条)

青色申告の特別控除(最大65万円)を受けるために必要な申請書です。原則として、開業した年の確定申告書の提出期限(翌年3月15日)まで、または開業日から2ヶ月以内のいずれか早い日までに提出します。事業開始直後の申請を推奨します。

インボイス登録(消費税)

消費税の課税事業者として適格請求書発行事業者(インボイス)の登録をするかを判断します。飲食店がBtoC(一般消費者向け)のみの営業であれば、必ずしも登録が必要とは限りません。仕入業者への影響・仕入税額控除の観点から、税理士と相談のうえ判断することを推奨します。

従業員を雇う場合に加わる手続き

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従業員を雇用する場合に追加で必要になる手続きをまとめます。

人を雇う場合の労務手続き

従業員を1人以上雇用する場合は、雇用保険・労災保険の手続きが必要です。

雇用保険・労災保険(労働保険)

労働者を1人以上雇用した日から10日以内に労働基準監督署(労災保険)・ハローワーク(雇用保険)に届出が必要です(雇用保険法第7条)。労災保険は業種を問わずすべての事業に適用され、雇用保険は週所定労働時間20時間以上の労働者が対象です。

健康保険・厚生年金(社会保険)

法人は従業員の雇用の有無にかかわらず社会保険(健康保険・厚生年金)に加入義務があります。個人事業主は常時5人以上の従業員を使用する場合に加入義務が生じますが、飲食業は個人事業の場合、任意適用となるケースも多いです。強制適用か否かは事業内容・人数等で判断されるため、最終的には年金事務所または社会保険労務士に確認してください。

就業規則の作成・届出

常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。

業態・営業内容によって加わる手続き

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業態・営業内容・販売形態によって追加の許認可・届出が必要になります。開業前に自社の業態に当てはまる項目を確認してください。

酒類・深夜営業・風営法(税務署・警察署)

飲食店での酒類の提供(テーブルサービス)は、酒類販売業免許なしに行うことができます。ただし、以下のケースでは別途手続きが必要です。

酒類販売業免許(酒税法第9条)

持ち帰り用にお酒を販売する(小売り)場合は酒類小売業免許が必要です。飲食として提供するのみ(テーブルサービス)であれば不要です。ボトルキープを販売する形態や、物販として瓶・缶のアルコールを販売する場合は免許が必要になるため、営業方針を明確にしてから判断してください。申請先は所轄税務署で、審査に2〜3ヶ月程度かかります。

深夜酒類提供飲食店営業開始届出(風営法第33条第1項)

深夜0時から午前6時の間に酒類を提供する飲食店は、営業開始の10日前までに所轄警察署に届出が必要です。接待行為を行わないバー・居酒屋・ダイニングバーなどが該当します。届出制であり、許可は不要です。ただし、深夜0時以降に接待行為(特定の客への侍酒・会話サービスなど)を行う場合は別途風俗営業許可が必要になります。

風俗営業許可(風営法第3条)

接待行為を伴う飲食店(キャバレー・料理店・バーでの接待など、風営法第2条第1項各号に該当するもの)は、所轄警察署に風俗営業許可の申請が必要です。原則として許可が下りるまで営業できず、審査には一般的に55日程度かかる場合があります。許可を受けた風俗営業は、深夜0時以降の営業が原則禁止です。「接待あり・深夜営業なし」か「接待なし・深夜営業あり(届出のみ)」かで手続きが変わるため、業態設計の段階で確認してください。

製造・加工販売を伴う場合(保健所)

飲食店営業許可で認められる範囲を超えて製造・販売する場合は、別途製造業の許可が必要です。

菓子製造業許可(食品衛生法第55条第1項)

ケーキ・パン・焼き菓子などを店内で製造して提供・販売する場合に関係します。「店内提供のみ」であれば飲食店営業許可の範囲で足りる場合もありますが、持ち帰り販売を想定している場合は菓子製造業許可の要否を事前に保健所で確認してください。施設要件も飲食店営業と異なります。

その他の食品製造業許可

加工食品を大量製造・冷凍・販売する場合や、特定の加工を行う場合(食肉加工品、総菜製造、乳製品等)は、それぞれ別の業種許可が必要です。製造内容によって必要な許可が異なるため、保健所に確認してください。

食品衛生管理者(食品衛生法第48条)

乳製品・食肉製品・魚肉練り製品・缶詰製品など特定の食品を製造する場合、食品衛生管理者(医師・薬剤師・大学の食品工学科修了者など)の設置が義務付けられています。通常の飲食店や菓子製造業では不要です。大規模な食品製造に拡大する場合に確認してください。

移動販売・キッチンカー(保健所・警察・道路管理者)

キッチンカーや路上での販売は、保健所の許可に加えて道路・場所の使用許可が必要です。

食品営業許可(保健所)

キッチンカーも食品衛生法第55条第1項に基づく営業許可が必要です。ただし、営業する都道府県・市区町村ごとに許可が必要になる場合があるため、複数の自治体をまたぐ場合は各自治体の保健所に確認してください。

道路占用許可・道路使用許可

道路上でキッチンカーを営業する場合は、道路管理者(国道は国土交通省、都道府県道は都道府県、市道は市区町村)への道路占用許可と、所轄警察署への道路使用許可が必要です。

公有地・民有地での出店

公有地(公園・広場等)での出店は管理者の許可が必要です。民有地での出店は地権者との契約が必要です。

動物カフェ等(都道府県・市区町村)

猫カフェ・ウサギカフェ等、動物と触れ合える業態では動物関連の登録が必要です。

動物取扱業の登録(動物の愛護及び管理に関する法律第10条)

動物を展示・貸し出し・訓練等する場合は、都道府県または市区町村への動物取扱業の登録が必要です。登録には動物取扱責任者の設置が要件で、適切な施設基準・飼育環境の整備が求められます。飲食店営業許可の取得と並行して手続きを進めることが求められます。

法人か個人事業主かの選択

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飲食店の開業形態は「個人事業主」「株式会社」「合同会社」の3つが主な選択肢です。それぞれ設立コスト・課税方式・社会的信用・資金調達のしやすさが異なります。

個人事業主は設立コストがほとんどかからず手続きが簡易ですが、事業規模が大きくなると法人に比べて税負担が高くなるケースがあります。法人化すると社会的信用が高まり、金融機関からの融資や補助金申請で有利になる場面があります。

株式会社と合同会社では、決算公告義務・役員任期・出資者の権利構造等が異なります。選択の判断材料は規模・資金調達計画・事業承継の方針によって変わります。

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法人を設立する場合は、登記完了後に税務署・都道府県税事務所・年金事務所・ハローワークへの届出が別途必要です。

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開業資金の調達・補助金・資金計画

開業時の初期投資(設備・内装・保証金・運転資金)は、多くの場合自己資金だけでは不足します。利用できる制度を事前に把握しておくことで、資金調達の選択肢が広がります。

開業資金の調達手段

日本政策金融公庫の創業融資

創業期に利用しやすい融資制度として、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」があります。無担保・無保証人での融資を基本とし、自己資金要件の目安があります。創業計画書の内容が審査の重要なポイントになります。詳細は日本政策金融公庫の窓口に直接確認してください。

信用保証協会の保証付き融資

都道府県の信用保証協会が保証することで、地方銀行・信用金庫からの融資を受けやすくする制度です。創業時特別保証制度を設けている保証協会もあります。

活用できる補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者(従業員5名以下の飲食店等)の販売促進・設備投資に活用できる補助金です。店舗改装・POSレジ導入・チラシ作成・Webサイト制作など幅広い経費が対象になります。採択率は比較的高く、開業初期の費用圧縮に活用できます。

BCP認定(事業継続力強化計画)

経済産業大臣の認定を受けることで、各種補助金の加点要件を満たすことができます。飲食店でも活用可能で、認定取得後にものづくり補助金・持続化補助金の加点を受けやすくなります。

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地域・自治体の創業支援補助金

各都道府県・市区町村が独自に設けている創業補助金があります。大阪府や大阪市の創業支援制度は毎年公募条件が変わるため、開業予定地の自治体窓口(商工担当部署)に確認してください。

資金計画の整理

開業資金の調達方法・月次キャッシュフロー・損益分岐点の把握など、財務面の準備も開業の成否に大きく影響します。「いくら借りるべきか」「補助金と融資をどう組み合わせるか」「黒字化までの期間の資金繰りをどう確保するか」といった判断が必要です。当事務所ではFPの知見を活かした資金繰り・資産形成相談にも対応しています。

よくある質問

Q. 保健所の営業許可が下りる前に内装工事を始めてよいですか?

A. 工事自体は問題ありませんが、施設の設計・設備の配置が保健所の施設基準を満たしていないと許可が下りません。工事着工前に保健所に事前相談し、施設基準を確認してから設計・工事を進めることを強く推奨します。工事完了後に立入検査があり、基準を満たせなければ改修が必要になります。

Q. 飲食店でお酒を出すために酒類販売業免許は必要ですか?

A. 飲食として客席で提供する(テーブルサービス)だけであれば、酒類販売業免許は不要です。お土産・持ち帰り用のボトルや缶のお酒を販売する場合は、酒類小売業免許(税務署への申請)が必要です。営業スタイルを確認のうえ判断してください。

Q. 個人事業主で開業しましたが、途中で法人化する場合は許認可を取り直す必要がありますか?

A. 法人化は新たな主体の設立にあたるため、個人として取得した飲食店営業許可・酒類販売業免許等は法人に引き継がれません。多くの自治体で「個人→法人化」は新規許可が必要と扱われますが、具体的な取扱いは管轄保健所・税務署に確認してください。法人化を検討している場合は、切り替えのタイミングと許認可の空白期間が生じないよう事前に整理してください。

当事務所の強み:開業前の手続きを一括で整理

飲食店開業の許認可は、保健所・消防署・警察署・税務署と窓口が分かれています。それぞれの申請書の書き方・図面の要件・期限がバラバラで、初めて開業する方にとっては全体像を把握するだけでも時間がかかります。

当事務所では、業態・規模・開業時期をヒアリングしたうえで、必要な手続きの種類と順序を整理し、書類作成から届出まで一括して対応します。消防手続きに強みがあるほか、FPの視点から補助金申請・資金計画の整理も同時に対応できる点が特徴です。

  • 飲食店営業許可申請書・添付図面の作成支援(保健所への事前相談対応を含む)
  • 防火対象物使用開始届・火を使用する設備届出・消防計画の一括対応
  • 深夜酒類提供飲食店営業届出・酒類販売業免許申請
  • 風俗営業許可申請(接待あり業態)
  • 小規模事業者持続化補助金・BCP認定申請の支援
  • FPによる開業資金・キャッシュフロー計画の相談

物件の目途がついたら、業態と営業方針をお聞かせください。必要な許認可の種類と手続き順序を整理するところから伴走いたします。

高橋 光のイメージ
行政書士
高橋 光
技術がわかる理系の行政書士。化粧品・産廃・危険物などの許認可から、化審法・安衛法など化学物質規制対応、設備投資の補助金までワンストップ支援。
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