消防計画の作成と届出|防火管理者が押さえる法定義務と記載事項
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
消防法第8条第1項は、一定規模以上の防火対象物の管理権原者に対して、防火管理者の選任と消防計画の作成を義務づけています。飲食店・小売店・医療施設・美容室・事務所・工場・倉庫・テナントビルなど、業種・建物の種類を問わず広く適用される規定です。
消防計画は一度作って終わりではありません。内容の変更があれば届出が必要であり、年に1回以上(特定防火対象物は年2回以上)の訓練実施と記録も求められます。形式を整えるだけでは不十分で、自社の実態に即した内容が必要です。
選任義務の有無と収容人員の閾値

消防計画の作成義務は、防火管理者の選任義務と一体です。まず自社の防火対象物が選任義務の対象かを確認します。
防火管理者が必要な規模の目安
消防法施行令第1条の2第3項が、防火管理者の選任が必要な防火対象物を規定しています。収容人員の閾値は用途によって異なります。
| 用途の区分 | 収容人員の目安 |
|---|---|
| 老人短期入所施設・特別養護老人ホーム等((六)項ロ) | 10人以上 |
| 劇場・飲食店・百貨店・病院・ホテル等(特定防火対象物の多く) | 30人以上 |
| 事務所・工場・倉庫・共同住宅等(非特定防火対象物) | 50人以上 |
収容人員は従業員数だけでなく、客数・座席数なども算定に含まれます(施行令第1条の2第4項・施行規則別表で算定方法を規定)。「従業員が少ないから対象外」と判断する前に、実際の算定方法を所管消防署に確認してください。
甲種・乙種防火管理者の区分

防火管理者には「甲種」と「乙種」の区分があります(消防法施行令第3条)。
- 甲種防火対象物(原則として全対象)→ 甲種防火管理者が必要
- 乙種防火対象物(特定防火対象物で延べ面積300㎡未満、その他の防火対象物で延べ面積500㎡未満のもの)→ 乙種防火管理者でも可
どちらも消防機関等が実施する防火管理講習(甲種または乙種)の修了が要件です。自社の建物がどちらに該当するかは、延べ面積と用途で判断します。
消防計画の記載事項

消防法施行規則第3条が、消防計画に記載すべき事項を規定しています。建物の規模・用途によって第1号(大規模・特定対象物)と第2号(その他)で記載事項が異なりますが、第1号の記載事項が網羅的です。
施行規則第3条第1項第1号の主な記載事項
消防計画には、おおむね以下の事項を記載します(施行規則第3条第1項第1号イ〜ヲ)。
- 自衛消防の組織(役割分担・指揮系統)
- 火災予防上の自主検査(建物・設備の定期確認)
- 消防用設備等の点検・整備(法定点検の実施計画)
- 避難施設の維持管理・案内(避難通路・避難口・安全区画・防煙区画)
- 防火上の構造の維持管理(防火壁・内装など)
- 収容人員の適正化(定員の遵守)
- 防火管理上必要な教育(従業員への周知・訓練)
- 消火・通報・避難の訓練(定期的な実施計画)
- 災害発生時の消火活動・通報連絡・避難誘導
- 消防機関との連絡体制
- 工事中の火気管理(増築・改修工事中の防火管理者等の立会い)
訓練の実施頻度
消防計画に基づく訓練は、年に1回以上が基本です。ただし、不特定多数の者が利用する特定防火対象物(飲食店・ホテル・病院・百貨店等が含まれる別表第1(一)〜(四)・(六)・(九)項イ等)は、年2回以上の消火訓練・避難訓練が必要です(消防法施行規則第3条第10項)。
訓練を実施した場合は、あらかじめその旨を消防署長に通報することが求められます(施行規則第3条第11項)。
規模別のテンプレート選択
消防計画にはいくつかの様式があり、建物の規模・権原の構成によって使い分けます。
| 区分 | 使用するテンプレート |
|---|---|
| 延べ面積3,000㎡未満・単一管理権原 | 中・小規模(事業所・テナント)用 |
| 延べ面積3,000㎡以上・単一管理権原 | 大規模事業所用 |
| 複数管理権原(テナントビル等)の個別テナント | 中・小規模用または大規模用(規模による) |
| 複数管理権原の建物全体 | 全体についての防火管理に係る消防計画(統括防火管理者が作成) |
テンプレートは所管消防署または消防機関のウェブサイトで入手できます。
防火管理者の選任届と消防計画の届出

防火管理者の選任と消防計画の届出は、別の書類で行います。手順と注意点を整理します。
選任届出の手続き
防火管理者を定めたときは、遅滞なく所轄消防長または消防署長に届け出なければなりません(消防法第8条第2項)。様式は消防法施行規則第3条の2(別記様式第1号の2)で定める届出書を使用します。
防火管理者が変わった場合も、新たな選任の届出と、変更後の実態に合わせた消防計画の見直し・再届出が必要です。
消防計画の届出
消防計画は、作成後に別記様式第1号の2の届出書により所轄消防長または消防署長に届け出ます(消防法施行規則第3条第1項)。消防計画を変更したときも同様に届出が必要です。
建物のレイアウト変更・収容人員の変化・防火管理者の交代などがあった場合は、計画内容を速やかに更新し、届け出てください。
統括防火管理者(テナントビル・高層建築物)

高さ31メートルを超える高層建築物や管理権原が分かれているテナントビルなどで、政令で定める要件に該当するものは、消防法第8条の2に基づき統括防火管理者の選任が別途必要です(消防法施行令第3条の3で対象を規定)。
統括防火管理者は建物全体の消防計画を作成し、各テナントの防火管理者に対して防火管理上の業務を調整・指示します。各テナントが個別に作成する消防計画は、統括防火管理者が作成する全体の消防計画に適合するものでなければなりません(消防法第8条の2第3項)。
テナントとして入居する場合は、ビルオーナー・管理会社との協議が必要になることがあります。

よくある質問
Q. 防火管理者を選任したことを届け出ないまま数年経っています。今から届け出られますか?
A. 届出は可能です。ただし、届出が遅延している期間は義務を履行していない状態です。立入検査等のタイミングで指摘を受ける可能性があるため、速やかに所管消防署に相談し、届出を行うことを推奨します。
Q. テナントとして入居していますが、消防計画の作成はビルオーナーがすればよいですか?
A. テナントが独自に防火管理者の選任義務を負う規模(収容人員が閾値以上)であれば、テナントとしての消防計画を別途作成して届け出る必要があります。ビル全体の統括防火管理者が作成する全体消防計画とは別に、テナント区画の個別消防計画が必要になるケースがあります。所管消防署に確認してください。
Q. 既存の消防計画を何年も更新していません。問題がありますか?
A. 防火管理上の実態(収容人員・レイアウト・設備・担当者)が変わった場合は消防計画を見直し、変更後の計画を届け出る必要があります(施行規則第3条第1項後段)。古い内容のままでは立入検査で不備を指摘されることがあります。年に1回は内容を確認することを推奨します。
当事務所の強み:業種を問わない消防手続きの一体対応
消防計画の作成は様式を埋める作業ではなく、建物の実態・業務の流れ・在籍する人数の実態を正確に反映させる作業です。飲食店・物販店・医療施設・美容室・事務所・工場など、業種によって自衛消防組織の構成や火気管理の方法は異なります。元化学メーカー研究員として防火管理体制に実務として携わった経験をもとに、建物の使用実態に沿った消防計画を整理します。
- 消防計画の新規作成・見直し支援(飲食店・医療施設・物販店・事務所・工場・テナントビルなど業種不問)
- 防火管理者選任届出書の作成代行
- 防火対象物使用開始届との並行対応(開業前の消防手続きをまとめて整理)
- 危険物施設・少量危険物届出・高圧ガス届出など他法令の手続きとのセット対応

新規開業の場合は、物件・開業時期が固まった段階でご連絡ください。防火管理者の選任から消防計画の届出まで、必要な手順をまとめて進めます。既存の消防計画をお持ちの場合は内容を拝見し、防火管理者・収容人員・設備構成の現状と照らし合わせて見直しが必要な箇所を具体的にお伝えします。
