化粧品・雑貨・医薬部外品の判断基準|標榜する効能で区分を決める仕組み
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
スキンケア商品やハンドクリームを販売しようとする際、よく聞かれる疑問があります。「これは化粧品ですか、雑貨ですか」——。区分を決めるのは製品の中身ではなく、どのような効能を標榜するかです。パッケージ・ECサイト・SNS投稿など、どの媒体であっても肌への効果を示す表現が入ると、化粧品として扱われるリスクが生じます。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等を規制する法律です。スキンケア・ボディケア製品においては、これらのうち医薬品・医薬部外品・化粧品の3区分に当てはまらないものが「雑貨」として流通します。どの区分に該当するかによって、必要な許可や禁止される表現が大きく変わります。
無許可で化粧品を製造・販売した場合、薬機法第84条により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される場合があります。販路や販売規模にかかわらず適用されます。
化粧品・雑貨・医薬部外品の定義と法的な違い

区分によって必要な許可・届出が異なります。まず3区分の定義を整理します。
薬機法の対象外となる「雑貨」の条件
薬機法は医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等を規制する法律です。スキンケア・ボディケア製品においては、医薬品・医薬部外品・化粧品の3区分のいずれにも当てはまらないものが「雑貨」として扱われ、薬機法の規制を受けません。
雑貨として販売するには、「肌への効果・用途」を示す表現を一切使わないことが求められます。「保湿効果がある」「肌を整える」「うるおいを与える」といった記述をパッケージ・ECサイト・SNSのいずれかに掲げた時点で、薬機法上の化粧品として扱われる可能性が出てきます。
洗濯用石けん・台所用石けんは家庭用品品質表示法の対象となり、純石けん分の含有率などの表示が義務付けられています。インテリアとして販売する石けんに法規制はありませんが、「肌に使える」「保湿できる」の表現は避けることが重要です。
化粧品の定義と効能56項目(薬機法第2条第3項)
薬機法は化粧品を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」と定義しています(薬機法第2条第3項)。
化粧品として標榜できる効能は、厚生労働省が定める56項目の効能リストの範囲内に限られます。「皮膚を保護する」「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌を整える」「肌にうるおいを与える」などはこのリストに含まれており、化粧品として標榜できます。
化粧品を市場に流通させるには、化粧品製造販売業許可を受ける必要があります。

医薬部外品の定義と製品ごとの承認(薬機法第2条第2項)
医薬部外品は薬機法第2条第2項に定められた区分です。脱毛の防止・育毛・除毛、あせも・ただれ等の防止、吐き気・口臭・体臭の防止といった目的で使用される物、ならびに厚生労働大臣が指定する物が該当します。
厚生労働大臣指定の医薬部外品には、染毛剤・パーマネント・ウェーブ用剤・浴用剤・ひび・あかぎれ・かさつき等を改善することが目的とされている物など28種類が含まれています。
医薬部外品は製品ごとに国の製造販売承認が必要で、化粧品の届出手続きより審査が厳格です。製造販売業の許可とは別に、品目ごとの承認取得が求められます。

化粧品・雑貨・医薬部外品を分ける表現のルール
雑貨から化粧品、化粧品から医薬部外品への境界線は、いずれも標榜する効能で決まります。なお、医薬品(疾病の治療・診断・予防を目的とする物)に当たるかどうかは、標榜する効能だけでなく、含有成分の薬理作用によっても判断されます。
雑貨と化粧品の境界線
=~「肌への作用・用途」を示した時点で、雑貨から化粧品に転じるリスクが生じます=~。成分の安全性や天然由来かどうかは判断に影響しません。中身が同じオリーブオイルでも、「家具のツヤ出し」として売れば雑貨ですが、「お肌の保湿に」と謳った時点で化粧品として扱われます。
注意すべき媒体はパッケージだけではありません。ECサイトの商品説明文、インスタグラム・Xの投稿、YouTubeの商品紹介動画なども含めて、「肌への効果・用途を示す表現」を避ける必要があります。
まつ毛エクステ用グルー(マツエクグルー)・つけまつげ用接着剤・ネイルチップ用両面テープのように、美容目的で体に使う製品であっても、主機能が接着・固定である場合は、化粧品の定義(身体に塗擦・散布して美化するもの)から外れ、雑貨として扱われるのが一般的です。「効能を標榜しない」からではなく、製品カテゴリそのものが化粧品の定義に当てはまらないことが、雑貨に分類される理由になる場合もあります。なお、同じネイル用品でもネイルカラーやネイルリムーバーは爪を美化する目的で塗布するものであり、化粧品に該当します。
化粧品と医薬部外品の境界線
化粧品として標榜できる効能は全製品共通の56項目に限られます。このリストの範囲内であれば、届出だけで販売できます。
一方、医薬部外品は薬用歯みがき類・育毛剤・薬用化粧品類など製品カテゴリごとに効能効果の承認基準が定められています。化粧品の56項目を超える効能(メラニン生成抑制・育毛・歯槽膿漏の予防等)を標榜するには、該当カテゴリの承認基準に沿って品目ごとに製造販売承認を取得する必要があります。
たとえば「日やけを防ぐ」は効能56項目(第36項)に含まれ、化粧品として標榜できます。「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」は医薬部外品(薬用美白)の領域で、対応する有効成分の配合と承認取得が必要です。
「シミを消す」「シミをなくす」は化粧品・医薬部外品のいずれでも認められない治療・除去を示す表現です。「育毛効果がある」「脱毛を防ぐ」は化粧品としては標榜できませんが、医薬部外品(第2条第2項第1号ハ)として承認を得た製品では正当な標榜となります。
区分を決めるのはあくまで「何を標榜するか」です。同じ成分を配合していても、標榜する効能によって化粧品にも医薬部外品にもなります。
化粧品は化粧品基準の制限を守る範囲で処方を自由に設計でき、有効成分を高濃度で配合することも可能です。医薬部外品は化粧品以上の効能を標榜できますが、有効成分の種類と配合量は承認された規格の範囲に固定されます。有効成分を医薬部外品の基準以上の高濃度で含む製品が、あえて化粧品として販売されているのはこのためです。
配合成分が医薬品該当リスクを生じさせる場合
薬機法第2条第3項は化粧品を「人体に対する作用が緩和なもの」と定義しています。ステロイドや抗生物質など強力な薬理作用を持つ成分を配合した場合、表現にかかわらず無承認医薬品と判断されるリスクがあります。化粧品基準(平成12年厚生省告示第331号)の配合禁止成分・配合制限成分はこの観点から定められており、成分の適法性は標榜する効能とは独立して問われます。
美容オイル・ハンドクリーム・日焼け止め・歯磨き粉の分類判断
実際によく相談を受ける製品を例に、分類の考え方を整理します。製品の素材や形状だけでなく、販売時の表現がどの区分を目指すかを左右します。
美容オイルは化粧品か雑貨か|SNS表現での注意点
「肌を整える」「肌にうるおいを与える」「皮膚を保護する」という標榜は化粧品の効能に含まれます。ホホバオイル・ローズヒップオイルなど天然由来であることは、化粧品への該当判断に直接影響しないとされています。
肌への使用を想定させる表現・ビジュアルを一切排除すれば、雑貨として販売できる場合があります。ただし、販売後のSNS運用で「美肌に」「乾燥対策に」と投稿した時点で化粧品として扱われるリスクがあります。
ハンドクリームは化粧品か医薬部外品か|標榜する効能で変わる分類
「皮膚を保護する」「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌を柔らげる」といった効能を標榜する場合は、化粧品に該当するとみなされます。これらはいずれも化粧品の効能56項目に含まれます。
「ひび・あかぎれ・かさつき等を改善する」という標榜は、厚生労働大臣指定の医薬部外品(第二十四号)に当たります。同じ保湿クリームでも、「乾燥を防ぐ」は化粧品、「ひびを改善する」は医薬部外品と判断が分かれます。
医薬部外品として「ひびを改善する」と標榜するには、その効能に対応した有効成分を規定量配合し、品目ごとの製造販売承認を取得する必要があります。有効成分が配合されていても承認なしにこの表現を使えば薬機法違反となります。
日焼け止めは化粧品か医薬部外品か|SPF表示と効能の関係
「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」は化粧品の効能56項目に含まれており、化粧品として標榜できます。一般的な日焼け止め製品は化粧品として流通しています。
「シミを消す」「紫外線ダメージを回復させる」といった表現は、化粧品・医薬部外品のいずれでも認められていません。治療・除去・回復を示す表現は薬機法上の禁止規定に抵触する可能性があります。SPF・PA表示は「日やけを防ぐ」という効能の範囲内であれば、化粧品として認められています。
SPF製品に美白有効成分を配合して「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」と標榜する場合は、日焼け止めとしての化粧品届出とは別に、医薬部外品(薬用美白UV)としての承認が必要となります。成分の配合だけでなく、標榜する効能に対応した承認を品目ごとに取得することが求められます。
歯磨き粉は化粧品か医薬部外品か|ホワイトニング表現と海外製品の輸入規制
「歯を白くする」「歯垢を除去する」「口臭を防ぐ」は化粧品の効能56項目(第50・51・53項)に含まれており、ブラッシングを行う歯みがき類に限り化粧品として標榜できます。一方、「歯槽膿漏の予防」「歯肉炎の予防」「むし歯の発生及び進行の予防」は化粧品の効能56項目に含まれず、医薬部外品としての承認が必要な標榜です。多くの市販歯磨き粉はこの区分で流通しています。
化粧品として標榜できる「歯を白くする」は、研磨剤やポリリン酸等による物理的な着色除去の効能です。過酸化水素などによる化学的なホワイトニングは別の話で、化粧品基準(平成12年厚生省告示第331号)は過酸化水素を配合禁止成分に指定しています。医薬部外品の薬用歯みがき類承認基準にも過酸化水素は有効成分として収載されておらず、日本では化粧品・医薬部外品のいずれの経路でも販売できません。
韓国など海外で「医薬外品」として承認された過酸化水素配合のホワイトニング歯磨き粉も、業として日本に輸入・販売する際は同じ規制が適用されます。韓国のMFDS(食品医薬品安全処)による承認は日本の薬機法上の承認とは別物であり、効能を標榜したまま国内販売することはできません。なお、個人が自己使用目的で一定数量以内を輸入する場合は、薬機法第56条の2第3項第2号の輸入確認不要の特例が適用されます。
よくある質問
Q. 完成品を仕入れて販売するだけでも化粧品製造販売業許可は必要ですか?
A. 仕入れ先がすでに化粧品製造販売業許可を持つ事業者であれば、小売・転売を行う側に許可は原則として不要です。ただし、自社のブランド名・自社の責任でパッケージ表示を行う場合(自社が製造販売業者となるOEM)は、製造販売業許可が必要になります。

Q. 輸入品を国内で販売する場合、分類の判断はどこで行いますか?
A. 輸入品であっても、国内市場に出荷する際は日本の薬機法に基づく区分で判断します。海外で「コスメティック」として販売されていても、日本の化粧品の定義に当てはまるかどうか、または医薬部外品に相当するかを確認する必要があります。輸入化粧品を自社ブランドとして販売する場合、自社で保管・日本語ラベルの貼付等を行うときは化粧品製造販売業許可と製造業許可の両方が必要です。保管・ラベル貼付を外部の包装・表示・保管業の許可業者に委託する場合は、製造販売業許可のみで足ります。

Q. SNSの投稿も薬機法の規制対象になりますか?
A. 対象になります。薬機法および景表法は媒体を問わず「業として行う表示・広告」に適用されます。販売目的でSNSに投稿する場合、製品の効能・効果に関する表現はすべて規制の対象です。無許可製品に「美肌になれる」「乾燥が改善する」等の表現を用いた投稿は、薬機法違反と景表法違反の双方に当たる可能性があります。

当事務所の強み|化粧品・医薬部外品の区分判断と許可申請
製品の区分判断は、成分・配合量・表現の3つを組み合わせて行います。元化学メーカー研究員として化粧品原料の研究開発に携わった経験から、成分リストや処方内容の配合リスクを確認したうえで、標榜したい効能に合わせた区分判断と必要な許可・届出を整理します。
- 成分・処方レベルでの区分判断サポート
- 化粧品製造販売業・製造業許可申請(新規・更新)
- 医薬部外品製造販売業許可申請
- 薬機法・景表法 広告表現チェック
製品の成分リストと標榜したい効能が決まった時点で、分類の判断から許可申請の見通しまでご説明できます。情報が揃っていなくても構いません。現状をお聞かせください。


