SDSの更新頻度と有効期限|5年以内の見直し義務と改正安衛法・JIS 2025への対応
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
かつて化学メーカーの研究員として、複雑な混合物のSDS(安全データシート)作成に関わってきた立場から言うと、SDSとGHSラベルの作成・運用は、研究開発の手を止めてしまう労力のかかる業務です。
しかしラベル表示・SDS交付の義務対象物質は、国によるGHS分類で危険性・有害性があるとされた物質が段階的に追加されています(令和6年4月に234物質、令和7年4月に641物質、令和8年4月に779物質。厚生労働省)。従来「対象外」だった化学品も、改めて確認が必要です。
さらに、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法(安衛法)では、SDSの記載内容を変更したときの再通知が努力義務から義務に変わります。あわせて、SDSの通知をしない・虚偽の通知をした場合の罰則も設けられます(いずれも施行は公布から5年以内の政令で定める日)。JIS規格(JIS Z 7252/7253)も2025年版に改正されており、作成済みのSDSを見直す時期に来ています。
SDSそのものに有効期限はありません。ただし、安衛法でSDSを渡す義務がある物質は、「人体に及ぼす作用」を5年以内ごとに見直す義務があり、記載を変えたら相手方に知らせ直す必要があります。更新の頻度と、更新が必要になる場面から順に整理します。
目次閉じる開く
SDSの更新頻度と有効期限
安衛法・化管法(化学物質排出把握管理促進法)では、SDSの記載内容に変更が生じた場合、速やかに最新版を再交付(再通知)するよう努めることとされています(化管法第14条第2項・安衛法第57条の2第2項。安衛法では、5年ごとの見直しで「人体に及ぼす作用」を変えた場合は義務)。「いつ更新すべきか」「有効期限はあるか」というのは、現場でよく出る疑問です。
更新が必要なタイミング(主な例)
- 物質の成分・組成の変更(原料切替・配合比変更など)
- GHS分類の変更(新たな有害性情報・毒性試験結果の反映)
- 法規制の変更(対象物質への新規追加・規制値の改定)
- 推奨する保護具・管理措置・応急措置の変更
- 輸送区分や保管上の注意点の変更
有効期限について
SDSそのものに有効期限の定めはありません。ただし、安衛法でSDSを渡す義務がある物質(通知対象物)については、「人体に及ぼす作用」を直近の確認から5年以内ごとに1回確認し、変更が必要なら1年以内に変更する義務があります(労働安全衛生規則第34条の2の5第2項)。少なくとも5年ごとに見直す仕組みを社内に置いておく必要があります。対象物質が2026年の拡大で新たに追加されている場合は、改めて交付義務の有無を確認することが必要です。
安衛法のSDS義務の要点と改正の予定
近年、日本の化学物質管理は従来の「個別規制型管理」から、事業者が自らリスクを評価・対策する「自律的な管理」へと方針転換しました(2022年政省令改正)。2025年5月には労働安全衛生法(安衛法)自体も改正・公布され、規定ごとに段階的に施行されます。現場で対応が必要な実務要点は次の3点です。

- 義務対象物質の拡大(安衛法第57条・第57条の2)
- ラベル表示・SDS交付の対象物質は、令和6年4月から段階的に追加されています(令和6年4月に234物質、令和7年4月に641物質、令和8年4月に779物質。厚生労働省)。従来「対象外」として扱っていた物質についても、改めて確認が必要です
- SDSの見直しと変更時の再通知
- SDSの「人体に及ぼす作用」(健康への有害性の情報。JISのSDSでは主に項目11「有害性情報」に書く内容)は、直近の確認から5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づいて変更の要否を確認し、必要なら1年以内に変更しなければなりません(労働安全衛生規則第34条の2の5第2項)
- 5年ごとの見直しで「人体に及ぼす作用」を変えたときは、変更後の内容を、文書・電子メール・ホームページのアドレスの伝達などで相手方が見られるようにしなければなりません(同条第3項)
- それ以外の、記載内容を変更したときの相手方への再通知は、現在は努力義務です(法第57条の2第2項)。令和7年の改正法で、これが「通知しなければならない」に改められます。同じ日に、SDSの通知(法第57条の2第1項)をしない・虚偽の通知をした場合の罰則(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。第119条)も設けられます。施行日は、公布の日から5年を超えない範囲で政令で定める日です(改正法附則第1条第7号)
- リスクアセスメントとの連動(安衛法第57条の3)
- SDSは単なる参考資料ではなく、リスクアセスメントを行うための法的根拠データです。SDSのデータが不正確であれば、それに基づくリスクアセスメントの結果も正確でなくなります
また、事業者は、通知されたSDSの内容を、その物を扱う労働者に周知させなければなりません(安衛法第101条第4項)。周知の方法は次のいずれかです(労働安全衛生規則第98条の2第3項)。
- 物を扱う作業場の見やすい場所に、常時掲示するか備え付ける
- 書面を、物を扱う労働者に渡す
- パソコンなどにファイルを保存し、作業場に、労働者がいつでも内容を確かめられる機器を置く
事務所の棚にファイルを置いているだけで、作業場の労働者が見られない状態では、周知したことになりません。

JIS Z 7252/7253:2025改訂の変更点
JIS Z 7252(化学品の分類方法)とJIS Z 7253(危険有害性情報の伝達方法)は、SDSおよびGHSラベルの作成根拠となる産業規格です。2025年12月25日に改訂された最新版(2025年版)は、国連が2021年に改訂した「GHS改訂9版」をベースとしており、旧版(2019年版)から以下の変更が行われています。
JIS Z 7252(分類方法)の主な変更
- 「加圧下化学品」の新規クラス追加
- 「可燃性ガス」「爆発物」の区分・判定基準の再編(区分1Aの細分化など)
JIS Z 7253(情報伝達方法)の主な変更
- H コード(危険有害性情報)の追加・削除・割当変更
- 追加例:加圧下化学品対応のH282〜H284、爆発物対応のH209〜H211など
- 削除例:旧爆発物コード(H200〜H203、H205)
- P コード(注意書き)の追加・削除
- 追加例:P203・P236・P265・P316・P317など
- 削除例:P201・P202・P310〜P315の単独コード等
2030年(令和12年)12月24日までは旧版(2019年版)に従った対応も認められる猶予期間が設けられています。ただし、新規SDS作成時は新規格への準拠を推奨します。既存SDSについても、物質の変更や法改正に伴う更新のタイミングで新規格へ合わせていくことが現実的な対応です。
SDS・WDS・GHSラベルの違い
「SDS」「WDS」「GHSラベル」は、いずれも化学品・廃棄物の安全管理に関わる書類ですが、目的と用途が異なります。混同が起きやすいため整理します。
| 書類 | 正式名称 | 役割 | 法的根拠 |
|---|---|---|---|
| SDS | 安全データシート | 化学品の危険有害性・取扱い情報を取引先・労働者に伝達 | 安衛法・化管法・毒劇法等 |
| WDS | 廃棄物データシート | 産業廃棄物の性状・成分情報を処理業者に提供 | 様式の義務はないが、委託契約には廃棄物の性状などの情報を含める(廃棄物処理法施行規則第8条の4の2第6号) |
| GHSラベル | 危険有害性情報ラベル | 化学品の容器・包装にGHSに基づく絵表示や注意書きを表示 | 安衛法・化管法等 |
SDSは化学品の供給時に、WDSは産業廃棄物の委託処理時に使用します。産廃の処理委託で「元のSDSを添付するだけ」で済ませている場合、WDSに記載すべき廃棄物固有の情報(廃棄物としての性状・PRTR対象物質の有無など)が不足するリスクがあります。

未対応が招く法的・経営リスク
SDSの対応が遅れると、次のような法的・経営上のリスクにつながりえます。
- 改正法による罰則の予定:令和7年の改正法で、SDSの通知をしない・虚偽の通知をした場合に罰則(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。第119条)が設けられ、変更時の再通知も義務になります(施行は公布から5年以内の政令で定める日)。安衛法の罰則には両罰規定(第122条)があり、違反した担当者だけでなく法人にも罰金刑が科される仕組みです
- 民事賠償と社会的リスク:虚偽記載や古いSDSが原因で労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反を問われる可能性があります
よくある質問
2026年4月の物質拡大で、自社の製品が新たにSDS交付義務の対象になりましたか?
物質ごとに確認が必要です。拡大後の対象物質リストは厚生労働省・経済産業省・環境省が公表しています。元化学メーカー研究員の知見を活かし、自社取扱物質の該非判定から対応をサポートします。
SDSの有効期限はいつまでですか?
SDSそのものに有効期限はありません。ただし、安衛法でSDSを渡す義務がある物質は、「人体に及ぼす作用」を5年以内ごとに確認し、必要なら1年以内に変更する義務があります(労働安全衛生規則第34条の2の5第2項)。5年ごとの見直しで「人体に及ぼす作用」を変えたときは、変更後の内容を相手方が見られるようにする義務があります(同条第3項)。それ以外の変更の再通知は現在は努力義務ですが、改正法の施行後は義務になります。
SDSは現場に掲示しなければなりませんか?
掲示に限られません。通知されたSDSの内容は、その物を扱う労働者に周知させる義務があり(安衛法第101条第4項)、方法は、作業場への常時掲示または備え付け、書面の交付、作業場でいつでも見られる機器を置く電子的な方法のいずれかです(労働安全衛生規則第98条の2第3項)。
SDSがあればWDSは不要ですか?
用途が異なるため、代替にはなりません。SDSは化学品の供給時に使用するもので、産廃を委託処理に出す際はWDS(廃棄物データシート)として廃棄物固有の性状情報を別途提供する必要があります。委託契約には、廃棄物の性状や他の廃棄物との混合で生じる支障などの情報を含める必要があります(廃棄物処理法施行規則第8条の4の2第6号)。
当事務所の強み:元化学研究員による専門的支援
SDSの作成と見直しは、当事務所が成分情報の確認からSDSの作成までお引き受けします。
元化学研究員として、自ら開発した複雑な組成物のSDS作成に多数携わってきました。その経験から、次の3点を強みとして提供しています。
- 物質の素性を見抜く知見:化学物質の物理化学的性質を単なる文献データの転記ではなく、物質の挙動として理解し、潜在的リスクを的確に抽出します
- 現場の苦労を知る実効的なSDS作成:サプライヤーから届くSDSの成分が「非公開」だったり、GHS分類が「分類できない」で埋められている場合の補完方法まで、研究職時代に直面した現場経験を活かして対応します
- 化学物質管理のワンストップ支援:SDS作成を起点に、化学物質リスクアセスメントの実施支援・化管法(PRTR)の届出・新規化学物質の届出も一括してサポートします
報酬の目安とご依頼の流れは、次のページにまとめています。

ご相談の際に、対象の製品の数と今のSDSの状況を伺えれば、見直しの優先度の整理からお手伝いします。
