中小企業経営強化税制のA類型・B類型|違いと選び方
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
設備投資で使える中小企業経営強化税制について、「A類型(生産性向上設備)とB類型(収益力強化設備)、結局どちらがお得なのか」という相談を受けることがあります。実は、即時償却や税額控除といった減税効果そのものは、A類型で申請してもB類型で申請しても同じです。
違うのは、対象設備であることをどう証明するかという入口の部分です。証明の取り方によって、関わる専門家も、申請にかかる期間も変わります。
さらに近年は、申請書類を誰が作成できるかという点にも変化が生じています。これまで税理士に計画書の作成を任せていた事業者も少なくありませんでしたが、令和8年1月の行政書士法改正を受けて、経済産業局の確認手続きでも取り扱いが厳格化されています。
FPとして税制優遇のシミュレーションに取り組んできた知識と、B類型の確認申請書類を実際に作成してきた実務経験をもとに、共通するメリットと、A類型・B類型で異なる部分、申請体制の整え方を整理します。
中小企業経営強化税制とは|経営力向上計画に基づく設備投資減税
中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて一定の設備を取得した場合に、法人税(個人事業主は所得税)について即時償却または税額控除を選択適用できる制度です。根拠となる条文は租税特別措置法第10条の5の3(所得税)・第42条の12の4(法人税)です(中小企業庁「支援措置活用の手引き(税制・金融支援)」による)。
具体的な措置の内容は以下のとおりです。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 即時償却 | 取得価額の全額を取得年度に損金算入 |
| 税額控除(資本金3,000万円以下) | 取得価額の10%を法人税額から控除 |
| 税額控除(資本金3,000万円超) | 取得価額の7%を法人税額から控除 |
税額控除額は、その事業年度の法人税額(所得税額)の20%が上限です。上限を超えた分は翌事業年度に繰り越せます。
制度の適用期間は平成29年4月1日から令和9年3月31日までです。適用を受けるには青色申告書を提出していることも前提になります。
税制の対象となる「中小企業者等」は経営力向上計画の認定要件より狭い
見落とされやすい点として、経営力向上計画そのものの認定を受けられる「中小企業者」の範囲と、税制の適用を受けられる「中小企業者等」の範囲は別の基準です。
経営力向上計画の認定は中小企業等経営強化法上の中小企業者(製造業なら資本金3億円以下または従業員300人以下等)が対象ですが、税制の適用を受けるには、これに加えて以下のいずれかを満たす必要があります(中小企業庁「支援措置活用の手引き(税制・金融支援)」による)。
- 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
- 資本・出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
- 協同組合等
さらに、大規模法人から一定割合以上の出資を受けている法人や、直近3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える法人は、資本金が1億円以下でも対象から外れます。計画の認定が受けられても、税制の要件は別途確認する必要があります。
A類型とB類型の対象設備と最低取得価額
A類型・B類型に共通する対象設備の種類と、1台(1基)当たりの最低取得価額は以下のとおりです(令和8年度税制改正対応版)。
| 設備の種類 | 用途・細目 | 最低取得価額(1台1基) | 販売開始時期 |
|---|---|---|---|
| 機械装置 | 全て | 160万円以上 | 10年以内 |
| 工具 | A類型は測定工具・検査工具のみ、B類型は全て | 40万円以上 | 5年以内 |
| 器具備品 | 全て | 40万円以上 | 6年以内 |
| 建物附属設備 | 全て | 60万円以上 | 14年以内 |
| ソフトウエア | 情報収集・分析・指示機能を有するもの | 70万円以上 | 5年以内 |
最低取得価額は「1台1基当たり」で判定します。複数台をまとめた合計額では判定しません。取得価額は自社の消費税経理方式(税抜・税込)に従って計算する点にも注意が必要です。
工具区分の対象範囲がA類型では測定・検査工具に限定されるのに対し、B類型では工具全般が対象になる点は、両類型を比較するときに見落とされやすい違いです。
A類型とB類型の違い|証明の取り方が根本的に異なる
A類型とB類型は、税制の内容自体は同じでも、「対象設備であることを誰がどう証明するか」がまったく異なります。この違いが、どちらを選ぶべきかの判断基準になります。
| 項目 | A類型(生産性向上設備) | B類型(収益力強化設備) |
|---|---|---|
| 要件 | 旧モデル比で生産性(単位時間当たり生産量・歩留まり率・投入コスト削減率のいずれか)が年平均1%以上向上 | 年平均の投資利益率が7%以上見込まれる |
| 証明・確認の担当 | 設備メーカーが工業会等から証明書を取得 | 公認会計士または税理士の事前確認+経済産業局の確認 |
| 確認書発行までの目安 | 工業会等の審査(設備メーカー経由のため個別に確認が必要) | 事前確認後、局への説明からおおむね1ヶ月 |
| 対象設備の性質 | 型番・モデルが特定でき、生産性向上をメーカーが証明できる汎用設備 | 工業会証明を取得しにくい設備(内装工事を含むパッケージ投資・複数メーカー混在の設備等) |
A類型(生産性向上設備)|工業会等の証明書で足りる設備

A類型は、設備メーカーが工業会等に証明書(様式1)とチェックシート(様式2)を提出し、工業会等の確認を受けた証明書を発行してもらう流れです。事業者はその証明書を経営力向上計画に添付するだけで足り、税理士・公認会計士の関与は必須ではありません。
工業会等とは、設備の種類ごとに証明書の発行を担当する業界団体を指します。担当する工業会等は設備の種類によって異なるため、メーカーへ発行依頼をする前に確認が必要です。
B類型(収益力強化設備)|投資利益率7%以上を税理士等の確認で示す設備

B類型は、汎用品の組み合わせや内装工事のようにモデル・型番で証明できない設備が対象です。年平均の投資利益率(「営業利益+減価償却費」の増加額÷設備投資額で算出する指標)が7%以上見込まれることを、確認申請書(様式1)に添付資料とともに記載し、公認会計士または税理士の事前確認(様式2の発行)を受けたうえで、経済産業局に確認申請書を提出・説明します。
局はこの説明を受けてから、おおむね1ヶ月以内に確認書(様式3)を発行します(中小企業庁「支援措置活用の手引き(税制・金融支援)」による)。確認書を取得したのちに経営力向上計画へ記載し、主務大臣に計画申請するという流れは共通です。
どちらを選ぶか|判断基準

判断の起点は「対象設備について工業会等の証明書を取得できるか」です。
- 証明書を取得できる設備:A類型を選ぶのが基本です。税理士・公認会計士の関与が不要な分、確認のフローがシンプルになります
- 証明書を取得できない設備(内装・厨房機器・什器を組み合わせたパッケージ投資等):B類型を検討します。ただし税理士・公認会計士の事前確認という工程が増えるため、依頼先の確保も含めてスケジュールに余裕を持たせることを推奨します
設備の取得前に確認書・証明書を取得しておく必要がある点は、A類型・B類型で共通です。取得後に申請しても認められません。
経営力向上計画との関係|計画認定と税制適用は別の手続き
中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けたことを前提に、その計画に記載した設備へ適用される措置という位置づけです。したがって申請の順序は、①A類型なら工業会等の証明書、B類型なら経済産業局の確認書を取得し、②その証明書・確認書を添付して経営力向上計画を主務大臣に申請し認定を受け、③税務申告の際に証明書・確認書と計画認定書の写しを添付して税制の適用を受ける、という流れになります。
経営力向上計画の記載事項や電子申請の手順、認定後のフォローアップ報告など制度全体の解説は別記事にまとめています。

申請書類の作成は行政書士の独占業務|令和8年1月の法改正で明確化

これまで、経営力向上計画の申請書類の作成を顧問税理士に依頼していた事業者も少なくありませんでした。しかし、この整理には注意が必要です。
行政書士法第1条の3は、官公署に提出する書類の作成を行政書士の業務と定めています。同法第19条第1項は、行政書士(または行政書士法人)でない者が、報酬を得て業として官公署提出書類の作成を行うことを禁じています。令和8年1月1日施行の改正では、この第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加され、名目を問わず対価を得て書類作成を代行する行為が業務制限の対象であることが条文上明確化されました。違反した場合の罰則は第21条の2に定められており、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。第23条の3の両罰規定により、法人としての業務中に行われた違反であれば法人にも罰金刑が科されます。
この改正を受けて、経済産業局の確認申請の運用も変わっています。関東経済産業局が配布する確認申請チェックリスト(令和8年2月版)には、「本申請書の記載(作成)は、すべて申請事業者自身もしくは行政書士で行ったか」という確認欄が新設されました。同チェックリストには「令和8年1月1日改正行政書士法施行に伴う厳格化」として、確認書の送付先をこれまで委任状で確認していたが令和8年1月より廃止し、事業者または行政書士のみに発送する扱いに変更した旨が明記されています。
ここで整理しておきたいのは、税理士・公認会計士の役割がなくなったわけではないという点です。B類型で必要な投資利益率の事前確認(様式2の発行)は、制度上税理士・公認会計士に割り当てられた役割であり、これは改正後も変わりません。一方で、確認申請書や経営力向上計画の申請書そのものの作成代行は、行政書士法上の官公署提出書類の作成にあたるため、行政書士(または行政書士法人)以外が報酬を得て行うことが制限される業務にあたります。
税理士に計画書の作成一式を依頼していた場合、事前確認の役割と申請書類作成の役割を切り分けて、後者を行政書士に依頼する体制に見直す必要が生じる可能性があります。
よくある質問
Q. A類型とB類型、どちらが早く進みますか?
A. 一般的な傾向として、A類型は工業会等の証明書取得が発行元であるメーカー主導のため見通しを立てやすく、B類型は税理士等の事前確認と経済産業局の確認という2段階を経るため、確認書発行までにおおむね1ヶ月程度を要します。設備の種類によって工業会証明の可否が異なるため、まずはA類型の対象になるかどうかを確認することを推奨します。
Q. 顧問税理士に作成を依頼していた申請書類は、そのまま使えますか?
A. B類型の投資利益率に関する事前確認(様式2)は税理士・公認会計士の役割として制度上残っています。一方、確認申請書や経営力向上計画の申請書そのものの作成は、行政書士法上の業務制限の対象になり得るため、提出前に行政書士が内容を確認・整備する形で対応できる場合があります。個別の状況によって対応が異なるため、進行中の案件であれば早めにご相談ください。
Q. A類型の対象にならない設備は、必ずB類型になりますか?
A. B類型を検討する余地はありますが、投資利益率7%以上の見込みを示せることが前提です。示せない場合は対象外になります。なお、事業承継等を伴う設備投資向けのD類型、大規模投資向けのE類型という区分もあります。該当しそうな場合は個別に確認することを推奨します。
当事務所の強み:類型判定から申請書類の作成まで一貫対応
当事務所では、複数店舗を展開する事業者のB類型(収益力強化設備)確認申請で、内装工事・厨房機器など複数の見積書が混在する設備投資の按分整理から、投資利益率の算定、経済産業局の確認書取得までサポートしています。
B類型は工業会等の証明書がない分、投資利益率の算定書自体を1から組み立てる作業が必要になりますが、この計算実務に対応できる点が特徴です。
- A類型・B類型どちらに該当するかの判定支援
- 確認申請書(様式1)・経営力向上計画申請書の作成代行
- B類型の投資利益率算定・設備投資の按分計算(複数メーカーの見積書が混在するパッケージ投資にも対応)
- B類型の税理士・公認会計士による事前確認の手配サポート
設備の見積書と概要がわかる資料があれば、A類型かB類型かの見通しを立てるところから着手できます。判断に迷う場合は、その時点でご連絡ください。


