高圧ガス製造許可の申請手順|第一種・第二種の区分から必要書類・完成検査まで
※本記事は執筆当時の情報に基づきます。法改正等により現在の内容と異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。
高圧ガスを製造する設備を導入する計画がある場合、まず確認しなければならないのが「許可が必要か、届出で済むか」という区分です。この判断を誤ると、設備を稼働できないだけでなく、無許可製造として行政処分等の対象となり得ます。
元化学メーカー研究員として高圧ガスを日常的に扱ってきた経験から、申請実務でよく見落とされるポイントを中心に解説します。

許可と届出、どちらが必要か

高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第5条は、製造規模によって「第一種製造者(許可)」と「第二種製造者(届出)」を区分しています。どちらに該当するかは、設備の1日あたり処理能力で決まります。
第一種製造者(都道府県知事の許可)
1日の処理能力が100N㎥以上(政令で定める第一種ガスは300N㎥以上)の設備を使用して製造する場合は、都道府県知事の許可が必要です(法第5条第1項第1号)。第一種ガスの対象範囲は高圧ガス保安法施行令で定められています。
冷凍設備については、1日の冷凍能力が20トン以上の場合に許可対象となります(法第5条第1項第2号)。ただし冷媒ガスの種類によって政令の規定により基準値が異なる場合があります。冷凍能力の算定は経済産業省令で定める基準に従います。
許可申請は事業所ごとに行い、製造開始前に許可を取得しなければなりません。完成検査に合格するまで設備を使用できない点が、届出と大きく異なります。
第二種製造者(都道府県知事への届出)
第一種製造者の規模に満たない製造者は、第二種製造者として事業開始の20日前までに都道府県知事へ届出が必要です(法第5条第2項第1号)。冷凍設備は1日の冷凍能力が3トン以上20トン未満が対象です(法第5条第2項第2号)。
届出は許可と異なり、申請書の提出前に行政庁による事前の審査は行われません。ただし、技術上の基準への適合義務は第二種製造者にも課されており、都道府県知事が技術基準不適合を認めた場合は是正命令を受けることがあります(法第12条第3項)。
「製造」の範囲に注意

高圧ガス保安法における「製造」は、合成や反応によるガス生成だけではありません。法第5条第1項は「製造(容器に充てんすることを含む。以下同じ。)」と規定しており、容器への充てんは製造に該当し得る行為として法律上示されています。また、コンプレッサーによる昇圧や液化・気化なども、設備構成や高圧ガスの状態変化の有無によっては「製造」に該当する場合があります。自社設備でガスボンベへの充てんを行う場合でも、処理能力によっては許可・届出が必要になる可能性があるため、設備導入前に必ず所轄窓口へ確認することを推奨します。
申請先と申請区分の整理

高圧ガス製造許可の申請先は、事業所が所在する都道府県知事です(権限移譲されている場合は指定都市等の市長)。コンビナート等保安規則が適用される大規模事業所であっても、製造許可の申請先は原則として都道府県知事となります。担当窓口は自治体によって異なるため、必ず所在地の自治体に確認してください。
第一種製造者が許可取得後に設備の位置・構造・設備を変更する工事を行う場合、または製造するガスの種類・製造方法を変更する場合は、改めて変更許可の申請が必要です(法第14条第1項)。軽微な変更は変更許可不要ですが、完成後遅滞なく届出が必要です(法第14条第2項)。
許可申請の必要書類

経済産業省の通知(2016年3月30日付 20160323商局第2号)に基づき、高圧ガス製造許可申請に添付すべき書類の記載事項が定められています。以下に主要なものを整理します。
記載すべき事項
申請書には、以下の事項を記載します。
- 製造の目的(製造するガスの種類と使用目的を具体的に)
- 処理設備の処理能力(ガス種類ごとの1日あたり処理能力の合計)
- 処理設備の性能(圧縮機・ポンプは性能曲線や実証データ、気化器は公称能力等)
- 法第8条第1号・第2号の技術上の基準に関する事項(施設の位置・構造・設備、製造の方法が基準に適合している旨の説明)
添付すべき図面・書面
以下の書面・図面の添付が求められます。
- 事業所全体平面図(境界線・警戒標の設置位置・保安距離を明記)
- 製造工程の概要を説明した書面および図面
- フローシートまたは配管図(常用温度・圧力、機器名称・番号、流体名等を記載)
- 高圧ガス製造施設配置図(防消火設備・ガス漏えい検知警報設備・設備間距離等を明記)
- 機器等一覧表(圧力容器・回転機器・弁類・配管類ごとに材質・設計圧力・内容積等を記載)
- 処理・貯蔵能力の計算書(ガス種類ごと)
- 高圧ガス設備の強度計算書(特定設備・指定設備・大臣認定品を除く)
- 耐震設計構造物に係る計算書
- 高圧ガス設備の基礎および支持構造物の構造を示した図面
必要に応じて求められる書類
- 法人登記簿謄本(個人の場合は住民票)
- 委任状(包括委任で対応可)
- 技術上の基準の確認に必要なその他の書面または図面
必要書類の詳細は、製造するガスの種類や施設規模によって異なります。必ず管轄の都道府県庁または経済産業局に事前相談の上、確認してください。
許可から製造開始までの流れ

許可申請から実際に製造を開始できるまでには、複数のステップがあります。
事前相談
申請前に所轄の都道府県保安担当課へ相談することを強く推奨します。必要書類の解釈や技術基準の適用方法は自治体によって運用が異なる場合があります。また、図面類の作成に着手する前に相談することで、後から大幅な修正が必要になるリスクを減らせます。
許可申請・審査
申請書と添付書類を提出し、都道府県知事による審査を受けます。審査では法第8条の技術上の基準(施設の位置・構造・設備が基準適合であること、製造方法が基準に適合していること)への適合が確認されます。
審査の標準処理期間は都道府県によって異なります。数週間から数か月が目安ですが、大規模施設や複雑な設備では審査期間が長くなる傾向があります。計画の早い段階で申請スケジュールを確認してください。
工事・完成検査
許可取得後、施設の工事を行います。工事完了後は完成検査(法第20条第1項)を受け、合格するまで設備を使用することができません。完成検査は都道府県知事または法令が定める検査機関が行います(法第20条第1項・同条ただし書き)。適用される検査機関は施設の類型・規模によって異なるため、所轄窓口に確認してください。
保安検査・危害予防規程の義務
許可取得後も継続的な義務があります。危害予防規程の作成・届出(法第26条)、保安統括者等の選任(法第27条の2以下)、定期的な保安検査(法第35条:災害発生のおそれがある特定施設が対象)が第一種製造者に課される主な義務です。なお、保安統括者の選任義務は非冷凍設備の第一種製造者(法第5条第1項第1号)が主な対象です。冷凍設備の第一種製造者(法第5条第1項第2号)については、保安統括者ではなく冷凍保安責任者の選任が求められます(法第27条の4)。許可を取得すれば終わりではなく、継続的な保安管理が求められます。
よくある質問
Q. 実験目的の少量高圧ガス製造でも許可が必要ですか?
製造能力が第一種製造者の閾値を超えていれば、研究・実験目的でも許可が必要です。ただし試験研究機関が処理能力15N㎥以下の設備(毒性ガスおよび特殊高圧ガスを除く)で届出を行う場合は、一部添付書類を省略できる規定があります(経産省通知別表)。研究機関においても事前確認が必要です。
Q. 許可申請に行政書士は必要ですか?
法律上は本人申請も可能です。ただし、添付図面の作成・強度計算書の準備・保安距離の計算など、技術的専門知識が求められる書類が多数あります。
注意が必要なのは、施工業者や設備設計者が申請書類の作成・申請代行を業として行うことは、行政書士法違反となりうる点です(行政書士法第1条の2・第19条)。書類の技術的な内容を施工業者と確認しながら、申請手続きは行政書士が行う、という役割分担が法令上適切な対応です。

Q. 変更工事のたびに許可申請が必要ですか?
第一種製造者が設備の位置・構造・設備の変更工事を行う場合は変更許可(法第14条第1項)が必要です。ただし経済産業省令で定める軽微な変更は変更許可不要で、完成後に届出することで対応できます。何が「軽微」に当たるかは管轄窓口に確認することを推奨します。
当事務所の強み
当事務所は、元化学メーカー研究員として高圧ガスを日常的に扱った実務経験を持つ行政書士が対応します。申請書類の技術的な記載内容について設備設計者・施工業者と同じ目線で確認できます。
- 高圧ガス製造許可申請・変更許可申請のサポート
- 許可に付随する危害予防規程の作成・保安統括者選任届出の対応
- 危険物製造所・高圧ガス・化審法届出のセット対応(同一施設の複数法令に一括対応)
- 関西圏を中心に全国対応(オンライン相談・現地確認いずれも可)
書類が揃っていない状態でも現状を整理するところから対応できます。まずはご連絡ください。
