高圧ガス保安法の許認可|しきい値の考え方、製造・貯蔵・販売から消費届まで解説

高圧ガス保安法は、高圧ガスによる災害を防止し、公共の安全を確保することを目的としています。

この目的を達成するために、以下の2つのアプローチをとっています。

  • 規制の実施:高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動、消費といった取り扱いの全般、ならびに高圧ガスを入れる容器の製造や取り扱いを規制します。
  • 自主保安の促進:民間事業者や高圧ガス保安協会による、高圧ガスの保安に関する自主的な活動を促進します。

高圧ガスは常に破裂や爆発の潜在的危険性があるため、特性を十分理解して取り扱う必要があります。本稿では、高圧ガスに関する許認可とその手続きについて、実務的な観点から概要をまとめました。

高圧ガスの定義・適用除外

法律上の「高圧ガス」かどうかの判定は、そのガスの「圧力」と「温度」の組み合わせで決まります。以下の表にある数値は、高圧ガス保安法が適用されるかどうかの重要な境界線(しきい値)です。

ガスの状態しきい値代表的なガス例
圧縮ガス常用の温度で1MPa以上、または35℃で1MPa以上水素、窒素、アルゴン等
圧縮アセチレン常用の温度で0.2MPa以上、または15℃で0.2MPa以上アセチレン(分解爆発性)
液化ガス常用の温度で0.2MPa以上、または圧力が0.2MPaとなる温度が35℃以下のもの酸素、窒素、LPG等
特殊液化ガス35℃で0Paを超える液化ガスのうち、政令で定めるもの液化シアン化水素、液化ブロムメチル等
高圧ガスの判定基準(第2条)

高圧ガスに該当していても、他の法律で同等以上の安全管理が行われている場合や、物理的にリスクが極めて低い以下の場合は、本法の適用が除外されます(第3条)。

  • 乗り物の装置内(他の輸送法規が優先)
    • 船舶(船舶安全法)、鉄道車両のエアコン、自動車の装置(道路運送車両法)、航空機など。
  • エネルギー・産業設備(他法で一元管理)
    • 高圧ボイラー内の蒸気、鉱山設備(鉱山保安法)、原子炉施設(炉規制法)、電気工作物(電気事業法)。二重規制による現場の混乱を防ぐ目的です。
  • 小規模・特殊な容器(※限定的な除外)
    • 内容積1デシリットル(100ml)以下の容器や、密閉せずに使用される容器。
    • この除外は「容器に関する規制(第40条〜)」等に限定されるものであり、法律全ての適用を免れるわけではありません。

「製造・貯蔵・販売」の各手続

高圧ガスを取り扱う行為は、その形態や量によって「製造」「貯蔵」「販売」などに分類され、原則として事業所を管轄する都道府県知事(または市町村長等)への事前手続きが必要です。

特に第一種は「許可」が必要であり、厳格な事前審査と「完成検査」に合格するまで設備を使用できません。一方、「第二種」は「届出」で済むため、審査のリードタイムを大幅に短縮できます。事業を加速させるために、あえて設備能力をしきい値(第二種)以下に設計するのも有効な経営戦略の一つとなります。

なお、第一種ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素、二酸化炭素、フルオロカーボン、空気)は比較的安全性が高い(不活性など)ガスであるため、他のガスに比べて規制の基準値が緩和されています。

各申請・届出においては、取り扱うガスの種類や施設規模に応じて、技術上の基準への適合を確認するために追加の書面や図面が必要になる場合があります。詳細な書類要件については管轄の行政機関に事前確認することが推奨されます。

製造に関する許認可

  • 第一種製造者(許可対象)
    • 処理能力が1日100N㎥以上(※第1種ガスは300N㎥以上)、または一定の冷凍能力以上の事業者。許可取得後も、完成検査、危害予防規程の作成、定期的な保安検査などが義務付けられます。
  • 第二種製造者(届出対象)
    • 第1種未満の規模の事業者。

コンプレッサーでの昇圧、減圧弁での降圧、液化や気化など「圧力や状態を変化させる行為」や「容器への充てん行為」も「製造」に該当します。

貯蔵に関する許認可

  • 第一種貯蔵所(許可対象): 1000m³以上(※第一種ガスのみは3000m³以上)貯蔵する場合。
  • 第二種貯蔵所(届出対象): 300m³以上1000m³未満(第1種ガスのみは3000m³未満)貯蔵する場合。

客先でガスを払い出した後のローリーも、圧力が残っているため「貯蔵」に該当します。長時間の駐車は届出をした貯蔵所で行う必要があり、トラック荷台でのボンベ放置による事故も多発しているため厳重な注意が必要です。

販売に関する許認可

販売所ごとに事業開始の20日前までに「届出」が必要です。現品の取扱いの有無に関わらず、その場所で取引(契約)をする場合は販売に該当します。

ユーザーも「特定高圧ガス消費届出」が必要

金属加工、食品工場、半導体製造などで、モノシラン等の特殊ガスや、一定数量以上の圧縮水素、液化酸素、液化石油ガス(LPG)などを消費する場合は、消費開始の20日前までに「特定高圧ガス消費者」としての届出義務が発生します(法第24条の2)。

特に注意すべきは、「バラのボンベ」から「バルク(固定貯槽)やカードル」へ供給形態を変更した時です。法的には「一時的な使用」から「継続的な消費施設」への変更とみなされ、設置時の届出だけでなく、設置後の「維持管理義務」が新たに発生します。

届出が必要となる主要なケースは以下の通りです。

  • 対象となる特殊ガス: 圧縮モノシラン、圧縮ジボラン、液化アルシン等(※これら7種の特殊高圧ガスは微量でも対象となります)
  • 一定数量以上の消費: 政令で定める数量以上の貯蔵設備を備えて消費する場合(例:液化石油ガス(LPG)、液化酸素、圧縮水素などが3,000kg(または3,000m³)以上)
  • パイプライン供給: 事業所以外から導管により供給を受けて消費する場合

当事務所の強みと専門的サポート

高圧ガス保安法は、現場の「技術的な用語」と、行政の「法規制の用語」が交差する特殊な領域です。元化学メーカー研究職という強みを持つ当事務所は、現場と行政を橋渡し、スムーズな申請・届出をサポートいたします。

事業の安全と成長を両立させるためのパートナーとして、設備投資の構想段階から、ぜひご相談ください。

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