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著作権裁定制度|権利者不明・未管理著作物の申請手順

コンテンツビジネスの現場で「使いたい著作物の権利者が見つからない」という状況は珍しくありません。著作権者への無断利用は著作権侵害です。しかし、権利者が不明または連絡が取れない場合、著作権裁定制度を活用することで合法的に著作物を利用できます。

著作権法には2つの裁定制度が定められています。「著作権者不明等の場合の裁定制度」(著作権法第67条)は昭和47年から続く制度です。これに加え、令和5年の法改正により「未管理著作物裁定制度」(著作権法第67条の3)が新設され、令和8年4月から運用が始まりました。

2制度は対象となる状況・手続き・利用期間がそれぞれ異なります。どちらを選ぶかを含め、申請の流れを整理します。

著作権裁定制度の全体像

著作権裁定制度とは、権利者の許諾に代わり文化庁長官の裁定を受け、補償金を支払うことで著作物等を適法に利用できる制度の総称です。対象となる著作物等の範囲は広く、文章・写真・イラスト・音楽といった著作物のほか、実演・レコード・放送・有線放送も含まれます。

いずれの制度も、権利者等により公表されている「公表著作物等」であることが前提です(法第67条第1項柱書)。

著作権者不明等の場合の裁定制度

権利者が「不明」または「所在不明」な場合に利用する制度です(著作権法第67条)。昭和47年から運用されてきた実績のある制度で、法令が定める探索措置を尽くしたうえで文化庁に申請します。

裁定が下りれば利用期間の上限はなく、長期利用が可能です。権利者が後から名乗り出た場合でも、裁定は取り消されません。

未管理著作物裁定制度(令和8年4月〜)

権利者の連絡先は判明しているが連絡しても返信がなく「利用の可否に関する意思が不明」な場合に利用する制度です(著作権法第67条の3)。手続きが簡素で処理が迅速な点が特徴です。

申請窓口は文化庁ではなく、文化庁長官の登録を受けた「登録確認機関」となります。裁定を受けると最長3年間の利用が認められますが、権利者が名乗り出て取消を請求した場合、裁定が取り消されます。

2制度の比較と選び方

どちらを利用するかは、権利者の状況によって決まります。

比較項目権利者不明等の場合の裁定制度未管理著作物裁定制度
根拠条文著作権法第67条著作権法第67条の3
運用開始昭和47年〜令和8年4月〜
適用場面権利者が不明・所在不明連絡したが返信がない
申請先文化庁登録確認機関(CRIC)
申請手数料6,900円(1件)13,800円(1件)
処理期間約2ヶ月超約8営業日
利用期間上限なし(長期利用可)最長3年(更新可)
権利者が現れた場合裁定は取り消されない裁定が取り消される

なお、国外の連絡先しか見つからない場合は未管理著作物裁定制度の対象外です。この場合は著作権者不明等の場合の裁定制度を利用します。

また、いずれの制度においても、著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権等)を侵害する態様の利用はできません。裁定を受けた範囲内での利用に留める必要があります。

著作権者不明等の場合の裁定制度の手続き

文化庁への申請前に、法令が定める探索措置を尽くすことが必要です(法第67条第1項第1号、令和8年文化庁告示第2号)。

申請前に必要な探索措置

権利者情報を取得するための措置(ア・イ・ウ)をすべて実施し、それでも連絡できなかったことを申請書類で証明します。

  • ア:データベース等での探索(著作権情報センター等のデータベース検索、出版社・レコード会社等への問い合わせ)
  • イ:権利者への連絡試行(書留郵便・電子メール等で保有する連絡先への接触)
  • ウ:権利者探索の広報(文化庁が指定する方法による広報活動)

これらの記録が申請書類の根幹となります。どの措置をどの順で行い、なぜ連絡できなかったかを具体的に示す必要があります。

文化庁への申請と裁定

申請先は文化庁著作権課著作物流通推進室です。申請書様式は文化庁ウェブサイトからダウンロードできます。

著作権者不明等の場合の裁定制度 | 文化庁

裁定を受けるまでの標準処理期間は約2ヶ月超です。待機期間が長い場合は「申請中利用制度」を活用できます(法第67条の2)。担保金を指定補償金管理機関((公社)著作権情報センター)に支払えば、裁定決定前でも利用を開始できます。

裁定が下りた後は、通常の使用料相当額の補償金を(公社)著作権情報センターに支払うことで、申請した用途で著作物等を利用できます。

未管理著作物裁定制度の手続き

令和8年4月から運用が始まったこの制度は、処理の迅速さと手続きの簡素さが特徴です。

権利者への意思確認措置

申請前に、利用の可否について権利者に意思確認を行う必要があります。判明している連絡先に対して一定期間(原則14日間)の返答を求め、返答がなかった事実を記録します。この記録が申請時の要件証明として用いられます。

登録確認機関への申請と裁定

申請先は登録確認機関(公益社団法人著作権情報センター〔CRIC〕)です。CRICが申請受付・要件確認・使用料相当額の算出を担い、最終的に文化庁長官が裁定の可否を判断します。

未管理著作物裁定制度 | 文化庁

処理期間は約8営業日です。裁定後に補償金を支払うことで利用を開始でき、最長3年間の利用が認められます。利用期間終了後も、再度申請すれば継続利用が可能です。

行政書士による代理申請

裁定申請の書類作成・提出手続きは、行政書士が代理できます(行政書士法第1条の2第1項)。

著作権者不明等の場合の裁定制度では、申請前の探索措置をどの程度尽くしたかが審査の焦点になります。措置の記録が不十分な場合は申請が通らないため、書類の構成から文化庁との事前相談まで、申請代理人として一貫して対応します。

未管理著作物裁定制度においても、意思確認措置の手続きと記録の整備が重要です。登録確認機関への申請書類の作成を含めてサポートします。

よくある質問

Q. ブログや個人SNSに投稿された画像を利用したいのですが、裁定制度を使えますか?

A. 利用条件を満たせば対象になります。公表著作物等であることが前提で、権利者への連絡を試みたうえで連絡が取れない場合(または返答がない場合)に裁定制度の利用を検討できます。個人が投稿したコンテンツでも「公表」されていれば対象です。

Q. 権利者が後から名乗り出た場合、補償金は返還されますか?

A. 制度によって扱いが異なります。著作権者不明等の場合の裁定制度では、権利者が現れても裁定は取り消されないため、補償金の支払い義務は維持されます。権利者は補償金の交付を受ける権利を取得します。未管理著作物裁定制度では、裁定取消後、権利者は利用期間に対応する補償金(取消時補償金相当額)を指定補償金管理機関から受け取ります。申請者(利用者)は、支払済みの補償金のうちこの額を超える差額を同機関から取り戻すことができます。

Q. どちらの制度を使うか、相談できますか?

A. 相談できます。権利者の状況(不明か・連絡したが返信がないか)、利用したい期間、申請コストのバランスで選択が変わります。利用したい著作物の情報とこれまでの経緯をまとめてお知らせください。どちらの制度が適切かを整理してご説明します。

当事務所の強み:知財・コンテンツビジネスの実務経験を活かした申請支援

2級知的財産管理技能士として、著作権制度の体系的な知識を持ちます。加えて、WEBメディア事業会社の代表として自らサイト・SNSを運営し、コンテンツビジネスを経験してきました。バンドでの演奏活動などの経験から、著作権・著作隣接権の制度を実演家の立場としても理解しています。

  • 著作権者不明等の場合の裁定制度の探索措置記録の整備と申請書作成代行
  • 未管理著作物裁定制度の意思確認措置サポートと登録確認機関への申請
  • 制度選択の相談(どちらの制度が適切かの整理)
  • 著作物の利用に関連する契約書・利用規約の作成

利用したい著作物の情報と経緯についてお知らせいただければ、裁定制度の要件を満たすかどうか初期診断します。まずはお気軽にご相談ください。

高橋 光のイメージ
行政書士
高橋 光
技術がわかる理系の行政書士。化粧品・産廃・危険物などの許認可から、化審法・安衛法など化学物質規制対応、設備投資の補助金までワンストップ支援。
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