大気汚染防止法に基づく施設設置届出と事業者の義務

工場や事業場への新たな設備の導入、または既存設備の変更をご検討中の経営者様・設備担当者様へ。

ボイラーや乾燥炉、塗装施設など、大気中に排気を行う設備を導入する際、大気汚染防止法や各都道府県の条例に基づく「事前届出」が必要になるケースが多々あります。法令の対象となる場合、原則として届出受理から一定期間は工事に着手できない「実施の制限」が設けられているため、計画段階からスケジュールに余裕を持たせたコンプライアンス対応が不可欠です。

本記事では、大気汚染防止法の概要から、届出対象となる施設の種類、具体的な手続き、そして稼働後の事業者の義務について解説します。

大気汚染防止法の目的

大気汚染防止法(第1条)は、大きく分けて「国民の健康の保護と生活環境の保全」、そして「被害者の保護」の2つを目的に制定されています。

  1. 国民の健康保護と生活環境の保全: 工場や建築物の解体から発生するばい煙、揮発性有機化合物(VOC)、粉じん、水銀、自動車排出ガスなどの排出を発生源の段階で規制・管理します。
  2. 被害者の保護: 大気汚染によって人の健康被害が生じた場合の事業者の損害賠償責任を定め、被害者の救済を図ります。

このような目的を果たすため、汚染物質を発生させる特定の設備を分類し、その設置や変更にあたって事前の届出を義務付けています。

届出が必要な5つの施設分類

大気汚染防止法において、設置や構造変更の際に事前届出が義務付けられている主な施設は、以下の5つに分類されます。

  1. ばい煙発生施設: 燃料の燃焼に伴う硫黄酸化物・ばいじんや、有害物質(カドミウム、鉛、窒素酸化物など)を発生する施設。(例:一定規模のボイラー、加熱炉、金属溶解炉、乾燥炉、廃棄物焼却炉など)
  2. 揮発性有機化合物(VOC)排出施設: トルエンやキシレンなどのVOCを多量に排出する施設。(例:大規模な化学製品製造用・接着・印刷用の乾燥施設、吹付塗装施設、工業用洗浄施設など)
  3. 一般粉じん発生施設: 物の破砕や選別、堆積に伴って「一般粉じん」を発生・飛散させる施設。(例:コークス炉、一定規模以上のコンベア、破砕機、面積1,000㎡以上の鉱物堆積場など)
  4. 特定粉じん発生施設: 石綿(アスベスト)など、健康被害を生ずるおそれがある「特定粉じん」を発生・飛散させる施設。
  5. 水銀排出施設: 「水銀に関する水俣条約」に基づき、大気中に水銀等を排出する施設。

自治体条例の確認

国の法律の規模要件を満たさなくても安心はできません。例として、大阪府域に工場がある場合、「大阪府生活環境の保全等に関する条例」に基づく「有害物質に係る届出施設」に該当する可能性があります。

【主な届出対象施設(※定められた規模要件を満たすもの)】

  • 製品製造業の施設: 焙焼炉、電気炉、乾燥炉、溶融炉、電気めっき施設、洗浄施設など。
  • 廃棄物焼却炉: 用途を問わず一定規模以上のもの。
  • 医療業・消毒業の施設: 一定規模以上の滅菌・消毒施設。
  • 洗濯業の施設: 一定規模のドライクリーニング施設・乾燥施設など。
  • 塗装施設: 排風機の能力が100㎥/分以上の吹付塗装施設など。

※実験用、移動式、特定の物質のみを排出する施設など、一部例外規定があります。規模要件が非常に細かいため、事前の確認が推奨されます。

設置届出の手続きと工事着手制限

新たに施設を設置したり、構造を変更したりする際の届出手続きについて、大阪市を例に解説します。

大阪市:大気汚染、騒音・振動、悪臭などに関する規制と届出

  1. 届出時期と「実施の制限」 施設の種類によって、届出のタイミングと工事着手までの待機期間が異なります。
    • ばい煙・VOC施設: 設置工事着手予定日の60日前までに届出が必要です。法令により、原則として届出受理後60日間は工事に着手できません。ただし、事前の申請内容が適正と認められ「期間短縮願」が承認された場合は、この期間を短縮して早期に工事を開始することが可能です。
    • 一般粉じん発生施設: 設置工事の着手前までに届出が必要です。こちらには実施の制限(待機期間)はなく、期間短縮願の提出も不要です。
  2. 提出先と主な必要書類
    • 提出先: 事業場が所在する区を担当する環境保全監視グループ。
    • 提出部数: 2通(正本1通、写し1通)。
    • 主な必要書類: 届出書および別紙(構造、使用方法、処理方法などを記載)
      • 工場・事業場内の平面図
      • 施設の構造概要図(主要寸法入り)
      • 排出物の処理施設(煙突、集じん機など)の構造概要図
      • 代表者以外が手続きする場合は委任状
      • (ばい煙・VOC施設の場合)期間短縮願

届出後の事業者の義務

施設の設置後も、事業者には大気環境を守るための義務が課せられます。

  1. 基準の遵守: ばい煙・VOC施設は「排出基準(濃度など)」を、一般粉じん施設は「構造・使用・管理に関する基準(散水や防じんカバーなど)」を遵守しなければなりません。
  2. 測定と記録の保存: ばい煙やVOCを排出する施設では、定められた頻度で排出濃度を測定し、その記録を3年間保存する義務があります。
  3. 各種届出(変更・廃止・承継):
    • 事後届出(30日以内): 氏名・名称の変更、施設の使用廃止、譲受・相続等による承継があった場合。
    • 事前届出: 施設の構造、使用方法、処理方法等を変更しようとする場合は、事前に(ばい煙等は工事着手の60日前まで、一般粉じんは着手前まで)変更届の提出が必要です。
  4. 事故時の対応: 施設の破損等によりばい煙等が多量に排出された場合は、直ちに応急措置を講じ、速やかに都道府県知事(または市長)へ通報する義務があります。

当事務所の強みと専門的サポート

大気汚染防止法や条例に基づく届出で最もハードルが高いのは、単なる書類の記入ではなく「施設の構造概要図」や「工場内の平面図・排気系統」を正確に作成し、行政窓口の担当官へ技術的な説明を行うことです。

当事務所では、元・化学メーカー研究職の行政書士が、御社の製造工程や排気・集じん設備の仕様書を読み解き、行政が求める技術的書類の作成から窓口対応までをワンストップで支援いたします。

さらに、環境基準をクリアするための「新たな排ガス処理施設(集じん機や脱臭装置)の導入」や「最新型ボイラーへの更新」が必要な場合には、設備投資に活用できる各種補助金(省エネ補助金など)の選定から申請までをセットでご提案可能です。

「新しい乾燥炉を入れたい」「排気設備の更新に補助金を使いたい」「図面の書き方が分からず手続きが止まっている」とお悩みの経営者様・設備担当者様は、ぜひ当事務所へご相談ください。御社の設備投資プロジェクトを、法務・技術・財務のすべての面から伴走支援いたします。

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